45 告白
五年前の圭子の事故が気になる響は、柴咲らと一緒に調べるためタイムスリップするが……
今、僕は圭子の五年前の事故を調べるため、2231年に副部長と来夢の同行のもと希美さんと一緒に来ている。
亡くなった圭子の通夜は終わったけど、圭子の亡骸はそのまま斎場にある。
僕と希美さんは一緒にタイムマシンから見張っているが、希美さんは僕に寄りかかって眠ってしまったようだ……
「希美さん、風邪引きますよ」
そう声を掛けたけど反応はないです。
「響君、少し代わろうか」
副部長が交代で来てくれたのでお願いする事にして、僕は希美さんをソファーに寝かせました。
「響君、本当に圭子に何かがあると思うのか?」
「僕は、亡くなった圭子も高校生の圭子も同一人物だと思っています」
「何故そう思う?」
「僕は、亡くなった圭子にも逢っているし、高校生の圭子も見ています。性格こそ違うけど、同じ人物に間違いありません」
上手く言えないけど…… でも、どっちの圭子にも右目の目尻の所に小さい黒子があるのを確認している。でも、あれって、メークとかでもなんとかなるかな…… 今は言わないでおこう。
「まあ、それじゃ根拠としては薄いかな……」
まあ、そうだよな…… そんな話をしながら夜を明かしてしまった。ちょっと眠い……
しかし、そんな事も言ってられない。僕の行動には裏腹に、十時を過ぎたくらいから斎場の方では葬儀が始まりました。
「何も起こらないわね!」
来夢も、副部長も、僕に付き合ってくれているけど……
葬儀も終わり出棺です。まだ、圭子が入れ替わった様子はありません。やっぱり考え過ぎだったのか……
圭子は、そのまま霊柩車に乗せられ葬祭場まで行きます。
「こちら柴咲、霊柩車のルートを確認の上、圭子を守ってくれ!」
副部長から他の警備局員に指示が出た。
「すみません、僕の考え過ぎだったかも知れません」
「いや、まだ判らないさ」
副部長は僕の事を気遣っているのか、そう言ってくれます。でも、やっぱり僕の考え過ぎだったのか……
葬祭場に到着した圭子は、家族とのお別れをした後、何も起こらないまま火葬された……
「まあ、こんな事もあるさ!」
副部長にそう言われて調査は終わった。
「倉橋……」
希美さんが心配そうに、僕の側に来てくれたけど……
「上手く行かないですね……」
「大丈夫!」
そう言ってそっと僕を抱き寄せてくれた。その後僕は、現代の山中の森に戻った後、希美さんと一緒に僕の部屋へ帰って来た。
「やっぱり、圭子は二人いたのかな……」
「そうかな、亡くなった圭子も高校生の圭子にも右側の目尻に小さい黒子があったのよね」
えっ、希美さんもそこに気付いていたのか……
「もし、双子だったとしてもそこまで同じって事はないよね」
「うん……」
そう返事した後、僕は希美さんの右手を僕の左手で触れた後、手を握った。
「倉橋……!」
「希美さん、僕は……」
僕がそう言った時……
「倉橋、私は……」
希美さんは僕の事を見つめています。
「倉橋は…… 私の事、どう思っているの…… 好きなの……?」
僕は彼女の事をジッと見て……
「はい…… 好きです」
そう言って僕は、希美さんを抱きしめた。
「えっ! 倉橋、ずるいよ…… 私が言おうと思っていたのに……」
彼女は僕を見つめながら、そう言ったけど…… 僕は彼女の言うことを聞かずに、そのままキスをした。とは言っても彼女のちょっとふっくらした、ほのかに赤い唇にそっと触れただけなんだけど……
「倉橋…… 私も、大好きだよ!」
ちょっと困った希美さんの顔が真っ赤になっている。とっても可愛い僕の彼女です。
僕は彼女を抱きしめたままでいると、そんな彼女から……
「ねえ、夢じゃないよね! 明日の朝になったら何も無かった事になってないよね」
希美さんは不安そうに僕を見てます。
「大丈夫です。明日の朝、起きたらメールします」
「本当に!」
「はい」
「うん、私もメールする…… いや、声が聞きたいから、やっぱり電話する」
彼女がそう言った後、また二人で唇を重ねた。その後、希美さんは僕に見送られながら、壁を開いて部屋へ戻って行った。
昨夜の事を考えると私は顔が熱ってしまう。それにあまり眠れなかったかな…… でも、気分は晴れ晴れしている。
でも、全て夢だった…… とか無いよね。倉橋に電話を…… でも、もし、『なんの事ですか?』なんて言われたら、私、立ち直れないかも……
『ピン!』
あっ、メール! 倉橋だ。
『おはようございます。昨夜の事が夢みたいです。良かったら一緒に朝食食べませんか』
はあ、良かった。夢じゃない! 私は倉橋に電話をしました。早く声が聞きたいから……
『もしもし希美さん』
「倉橋、トーストとグレープフルーツジュースしかないんだけど良い?」
あんまり唐突過ぎたかな…… でも、ちょっと焦ってしまう。
『あっ、ジャムと牛乳だったらありますけど……』
「うん、食パンを焼きながら待ってるから」
朝から私の部屋に誘ってしまった。これって…… 健全だよね!
私は、食パンを焼きながら倉橋が来るのを待ってます。
すると壁が開いて倉橋が入って来ました。
「おはようございます」
「おはよう、倉橋」
私はそう言って抱きつきます。
「希美さん、牛乳とジャムがあるから……」
倉橋はそれをテーブルに置いて、私を抱きしめてくれました。毎朝、こんな甘い生活になるのかな……?
でも、私は大学へ行かないと…… 倉橋は、まだ秋休みだよね!
私は、彼と一緒に朝食を食べた後、彼に見送られて大学へ行きました。
「希美、朝っぱらから何ニヤケてるの?」
智ちゃんに言われてしまった。
「べ、別にニヤけてなんてないよ」
「何か良い事でもあったのかな……」
うーん、ちょっと勿体ぶってしまった。
「うん、実はね……」
「希美、やっと告ったのね!」
もう、私はまだ何も言って無いのに、すべて未玖が良いところを持って行ってしまった。私、また顔が赤いかも……
「そうか、やっと思い切ったのね!」
未玖は自分の事のように…… いや、他人事みたいに喜んでいる。
「まあ、なるようになったって事だね!」
もう、なんなのよこの人達は……
「私はそんなにガツガツしていませんよ!」
「そうね、希美はずっと待ってたくらいだから」
「じゃあ、なんなのよ」
「イケメン君は、最初から狙ってたと思うよ!」
「倉橋が……」
「だって希美の前では結構クールだったよね」
「そうかな…… クールかな、倉橋って」
それを聞いた智ちゃんに言われてしまった……
「あんたさ、まだ倉橋とか呼んでるの? 彼氏なんでしょう」
「えっ、じゃあ、なんて言うのよ」
「あるじゃない、例えば響とか」
「いきなり呼び捨て……?」
「だって、元々倉橋って呼んでるでしょう! 呼び捨てじゃん」
「うーん、そうだけど……」
私は、ちょっと困ってしまいました。そうか、彼女なんだから彼の呼び方も変わるのか……
「じゃあ、響君は?」
いや、それじゃ来夢さんと同じだし……
「うーん、考えとく! 倉橋の意見もあるだろうから」
倉橋はなんて呼んで欲しいのかな…… あっ、でも、私の事を希美とか呼んでくれるのかな…… そんな事を考えると、また顔が緩んで赤くなってしまう。
「何を妄想してるの? 顔が赤いよ!」
智ちゃんにそう言われ、私は黙り込んでしまった…… はあ、恥ずかしい。
「でも、これで希美も私と同じ仲間だね!」
「えっ、なにが?」
未玖と仲間って、どういう事?
「あなたもこれで彼氏持ちって事よ!」
「あっ、そうだよね…… 仲間内じゃ私だけがおひとり様か…… 希美、未玖、合コン付き合って!」
「行けるわけないでしょう!」
「倉橋に嫌われたらどうするのよ」
「あんた達って白状だよね!」
「紹介ならしてあげるよ」
「私も倉橋に訊いてみようか?」
「うーん、希美の方はいいよ! 高校生はちょっと無理かも」
なによ、人には散々言いたい放題に言ってたくせに……
あっ、今日の夜はどうしようか…… 倉橋は何か食べたい物とかあるかな? あっ、でも今日は家庭教師の日じゃなかったかな……
でも、食事は家で食べるよね…… 私は今夜倉橋と逢えるのが楽しみです。
僕は希美さんを大学へ見送った後、自室へ戻って来た。
あっ、そう言えば今日は、明奈ちゃんの家庭教師の日だった。夏休み明けに模試があってるはずだからちょっと見せてもらないと…… その結果を復習すればレベルアップ出来るだろうから。
夕方、鷹島先輩の家にやって来た。そう言えば、前にベルを鳴らした後抱きつかれた事があったよな……
「よお、響! 家庭教師か」
「うわっ!」
背後から話しかけられてちょっとびっくりした。
「そんなにびっくりしなくても良いじゃないか」
「先輩、びっくりさせないでくださいよ」
「いや、悪い。明奈はまだ帰ってないから俺の部屋に来いよ」
「あっ、はい」
先輩に鍵を開けてもらい中へ入った。
「ところで、あのおばさんとはどうなったんですか?」
「おばさん?」
なんだよ、もう忘れたのか……
「先輩にガラクタを渡し、子孫だと言って近付いて来た……」
「あっ、あの人とはそれっきり逢ってないよ」
ホッ、そうか、良かった。
「そうですか……」
「おまえさ、何か隠してるだろう!」
「えっ、何をですか?」
先輩にそう訊かれた。ひょっとして舞龍の事バレてるのか…… 僕の表情はちょっと硬いかも……
「おまえ、冬野に告ったんだって! 山田が水嶋と騒いでいたけど」
あっ、そっちだった……
「あっ、いや、それは……」
「まあ、良いけどさ! おまえ達似合ってるよ。でも、高校生が大学生に告るとはな……」
先輩にはそう言われた。それにしても、あの二人はお喋りだな…… お陰で先輩に話す手間が省けたけど……
圭子の事でちょっと落ち込んでいた響を希美が心配した事から二人はお互い好きだったことを告白したけど……




