44 五年前の事故?
智代や未玖に言われ、希美は倉橋に告白しようと想いを寄せるが……
文化祭も終わり、今週倉橋は秋休みのはずです。今日は私とバイトが一緒の日でした。
「希美さん、夜ご飯一緒にどうですか?」
倉橋に誘われちゃったけど、この間、智ちゃんと未玖に言われた事がプレッシャーになっててとても意識してしまいます。
「えっ、うん…… 今月はちょっとピンチだから自炊しないと……」
「それじゃ、うちで一緒にどうですか? カレーなんですけど」
「うん……」
こう言われると、断ったら余計に変だよね……
「どうかしたんですか?」
倉橋に訊かれてしまった。やっぱり、私の行動は変かな……
「ううん、なんでもないよ!」
やっぱり、自然と意識してしまう。
バイトも終わり、倉橋のアパートへ行く事になったけど……
「あっ、雨……」
「雨が降るなんて思わなかったな」
倉橋がそう言うという事は傘は持ってないよね! 私は確か傘を持ってたと思う。そう思ってバッグの中を見ていると…… あった! 折りたたみ式の傘。
「倉橋、一緒に帰ろう!」
私は傘を振りながら彼に言った。ちょっと恥ずかしいけど相合傘です。
倉橋はちょっと恥ずかしそうだけど……
「倉橋、濡れちゃうよ」
もう、もっと近づいてよ…… でも、ちょっと照れるかな……
私は、彼の肩が濡れていたのに気付き彼の方へ傘を傾けます。
「希美さん、濡れますよ! 僕は大丈夫だから……」
「ダメ! 風邪引いちゃうよ!」
「希美さんこそ!」
お互いにそう言い合いながら倉橋のアパートに到着です。
「あっ、やっぱり濡れちゃったね」
「えっと、タオルが……」
彼がタオルを探していたので、私はファスナーを使って壁を開き自室へ戻り、バスタオルを二枚持って戻って来ました。こういう時、ファスナーって便利ですよね!
倉橋の頭にバスタオルを掛けると……
「えっ、何?」
「早く拭かないと本当に風邪引くよ」
でも、濡れた倉橋も格好良いかな……
「はあ…… こんな事なら壁を開いて帰って来れば良かったですね」
倉橋にそう言われ、私も今になって気付いた。本当、何やってんだろう……
「それじゃ、カレーを作るからリビングでゆっくりしてて下さい」
倉橋にそう言われたけど、それって逆じゃない? ここは私が作るとこでしょう。
「私が作るから倉橋こそ、ゆっくりしてて」
私がそう言うと、二人して笑ってしまった。
「じゃあ、二人で作りましょう」
そう言って倉橋がジャガイモの皮を剥き出したので、私は玉ねぎを切った。
「あっ、玉ねぎは僕が…… 目が染みますから」
「ありがとう、でも大丈夫! 玉ねぎを切っても涙は出ないから」
私、玉ねぎを切って涙が出た事がありません。別に涙が枯れてる訳じゃないでしょうけど……
その後、私が調理して美味しいカレーを作りました。
「良い香りがして美味しそうです」
「美味しそうじゃなくて美味しいんだよ!」
そんな事を言いながら二人で食事を楽しみました。
「ご馳走様、じゃあね、倉橋!」
そう言って、私は壁を開いて自室に戻って来ました。
あっ、そうじゃない…… 倉橋に告白するつもりだったのに…… これじゃ、あの二人になんて言われるか…… 何やってんだろう私……
最近、なんだか希美さんの様子が変だ。妙に余所余所しい感じがするんだけど、気の所為かな…… そんな時だった。
「響君いる?」
来夢が壁を開いて僕の部屋に入って来た。
「何かあったんですか?」
「舞龍に動きがあったよ!」
「今度は何をしたんですか?」
僕はちょっと面倒臭そうに訊いてみた。
「うーん、それなんだけど…… 二十三世紀にいるみたいなんだよ」
えっ、二十三世紀に……
「それってどういう事ですか」
「実は警備局で五年前に亡くなった圭子の事を調べているんだよ」
五年前の、あの事故か……
「五年前、警備局はどういう対応をしたんですか?」
「五年前は警察と消防で調査をして事故として処理していたみたい。だから警備局はノータッチなんだよ」
なるほど、それで再捜査をしてる訳か……
「警備局は、まだ圭子が二人いると思っているんですか?」
「うん、死亡した圭子と高校生の圭子は別人だろうって!」
でも、五年前の圭子を調べている事で、何故舞龍が動くのか?
「五年前の圭子の件は舞龍達が関わっているんですか?」
「うーん、そこなんだけどね…… 良く解らないんだよ!」
「舞龍達が仕組んだ事なら、それを隠して判らないようにすれば良いんだけど…… 舞龍も何かを探っているみたいでさ!」
「それってどういう事ですか?」
「知らなーい! でも、これだけは言える。舞龍は響君と希美の命を狙ってる」
僕と希美さんを狙ってる……
「どういう事ですか?」
「要するに私や局長が舞龍達の邪魔をしてるから響君や希美を消せば、子孫の私達はいなくなるって事みたい」
「でも、今は二十三世紀にいるんですよね!」
「うん」
不味いな、僕が未来へ行くという事は、みすみす狙われに行ってるみたいじゃ……
「でも、柴咲副部長が守ってくれるから」
うーん、確かに二十三世紀なら柴咲副部長も守り易いとは思うけど、あまり表立っては動けないだろうな……
「来夢さん、僕ももう一度五年前の事故の事を調べたいんですけど」
来夢は珍しく難しい顔をしている。
「うん…… 副部長に訊いてみるよ」
来夢はそう言ったけど難しいだろうな…… 狙われている奴をわざわざ危ない所には行かせないだろうから。
「倉橋、ちょっと良い?」
今度は希美さんが僕の部屋の壁を開いて入って来た。
「どうかしたんですか?」
「あっ、来夢さんも居たんですね……」
来夢は顔を顰めながら……
「お邪魔なら帰るけど」
「ううん、そんなつもりで言ったんじゃ無いんだけど」
来夢と希美さんは喧嘩でもしたのかな……
「それで、どうしたんですか?」
僕はもう一度訊いてみた。
「あっ、うん、圭子が亡くなって、その後どうなったのかなって……」
来夢も首を傾げているけど…… 普通は家族の元へ返されて葬儀とか火葬!
「亡くなった後、圭子の亡骸が盗まれたとか、すり替えられたとか無いですか!」
希美さんがそう言ったその時、また僕の部屋の壁が開いた!
「それは無理だろう! 盗まれたり、すり替えられたりしたら家族が気付くだろう」
柴咲副部長がそう言いながら入って来た。
「それに死体を盗んだとしても生き返らせる事など不可能だ! 黒魔術でも使うのか?」
まあ、確かにそうだ…… しかし、調べてみる価値はあると思う。
「副部長、僕もそこは気になっていたんです。調べてさせて下さい」
僕は頭を下げて副部長にお願いした。
副部長は苦笑しながら……
「判った、判った! 良いだろう。ただし俺と来夢も同行する」
いや、副部長はともかく来夢には同行してもらわないと何も出来ないから……
「はい、お願いします」
そう言って希美さんも頭を下げた。
早速僕達は、来夢のタイムマシンに乗り、圭子が亡くなった2231年に来た。
「まず、俺が現場に行って来るから三人はここで待機してくれ」
まず副部長が一番手として口火を切って現場へ行ってくれた。
「やっぱり副部長は頼りになるね!」
来夢がそう言いながら機内モニターのスイッチを入れた。僕には来夢のその言葉はちょっと引っ掛かったけど無視することにした。
しばらくするとモニターに圭子が映し出された。副部長がマーカーを飛ばしたんだと思う。
「どうだ、映ったか!」
「オッケーだよ!」
副部長の言葉に、来夢が答えた。これでもし、圭子の死体を誰かが盗むようなら判るはずだ! 僕達は交代で見張る事になった。
「どうだ、何かあったか?」
見張をしている僕の所に副部長が来た。
「いいえ、今は通夜があっています」
「予定では、明日が葬儀と火葬だよな」
「はい」
まあ、人が多い時間に何かが起こるとは思えないけど……
「響君、代わろうか?」
来夢が来てくれた。
「警備局はいるんですか?」
「うん、向こうも数人体制で待機してるよ」
こうなったのは数時間前、柴咲副部長が局長に見張りの連絡をしていた。
何か起これば、警備局が出て来て取り押さえる事が出来るが…… もし、何も起こらながったらと思うと気が重いです。
僕は来夢に代わってもらい、しばらく休憩です。
「倉橋、コーヒー」
希美さんがコーヒーを淹れてくれた。
「ありがとう……」
「ねえ、本当に何かが起こるの?」
亡くなった圭子と高校生の圭子が同一人物なら、今日の通夜か明日の葬儀で、何かが起こるはずだけど……
「僕は圭子が二人いるとは考えられないんです」
「倉橋は、圭子の亡骸を誰かが盗みに来ると思っているんでしょう」
「はい…… ただ、副部長も言っていたけど、その後どうやって生き返らせたのか……」
「うーん、そうだね…… 流石に黒魔術はないとは思うけど……」
「未来だとそういう技術があるのかと思ったんですけど…… やっぱりSF小説の読み過ぎですね」
「倉橋も小説とか読むんだ!」
「はい、好きなジャンルだけですけど……」
「あの娘もだよね……」
希美さんが言っているあの娘は神谷さんの事だろう。
「はい、僕が持ってのを貸したりしてたから……」
「ふーん、そうか…… 私はあまり小説読まないもんな」
「希美さん、見張に戻ります」
「それじゃ私も!」
そういう事で、今晩は希美さんと一緒にいる事になりそうです。
五年前の事故が気になる響が、もう一度柴咲らと一緒に調査をするが、本当に死体が盗まれるのか? 中学生の圭子と高校生の圭子は同一人物なのだろうか?




