42 文化祭
圭子と智代の繋がりを調査するために、智代をタイムマシンへ呼び出した来夢だけど……
私達は、倉橋の部屋からファスナーを使って、直接来夢さんのタイムマシンの中へやって来ました。
「希美、その人がそうなの?」
「はい」
「えっと…… 胡桃さんですよね、確かイケメン君の従姉妹じゃなかった?」
あっ、そうでした! 確かに従姉妹の胡桃さんという設定だったよね……
「私は来夢、倉橋来夢よ」
「えっ、そうなの……」
困惑気味の智ちゃんを見て私は優しく声を掛けた。
「智ちゃん事情があってね、以前は本名を伏せていたの」
そう、ジュエリーショップ3℃の強盗事件の時、来夢さんが事件をおこしたとメールで拡散された事があったからだ。
「それで、私の子孫と言うのは……」
「水嶋圭子という女性よ」
「水嶋圭子…… 私と名字が一緒という事なんじゃ」
ここに来て智ちゃんは認めたく無いのかも知れない。
「まあ、そうなんだけど…… あなたの周りの友人にも今回関係ある子孫が多く見つかっているの」
来夢さんはそう言った後、来夢さんと倉橋の事、私と警備局局長の事、未玖と山田颯太の事を話した。
「それじゃ、イケメン君とあなたはやっぱり従姉妹?」
「従姉妹じゃなくて子孫だよ」
智ちゃんはまたもや困惑した顔で……
「ねえ、タイムマシンがあるんだよね! あるなら見せてよ」
えっ、いきなりその話? 智ちゃんは自分ではどうしようもない状態なんだろうな……
「あなたがいるここがタイムマシンの中なんだけど」
「えっ、ここ……」
「お望みなら一度降りて、タイムマシンを外から見てみる」
来夢さんはそう言った後、彼女の側へ行き、私と倉橋もろともオレンジ色の光に包まれた後タイムマシンを降りた。
「えっ、これ、どうなっているの! うっ、気持ち悪い……」
オレンジ色の光に包まれ宙に浮いた感じはなんとも言えないほど気持ち悪いものです。個人的に私は好きにはなれないかも……
「うっ……」
「智ちゃん大丈夫?」
智ちゃんは顔が青ざめていて気持ち悪そうです。
「うん、たぶん……」
「これがタイムマシンよ!」
来夢さんは気持ちが悪そうな智ちゃんに脇目も振らずにタイムマシンを自慢しています。
「えっ、これがタイムマシン?」
「そうよ! カッコイイでしょう」
来夢さんはこのタイムマシンの事をかなりお気に入りなんだろうな、でも智ちゃんは……
「これってUFOだよね!」
やっぱり、二十一世紀の人は私も含めてみんなそう言うよね…… だってバケットハットの形をしてるんだもん仕方ないよね……
「はあ…… あなたもそう言うのね」
来夢さん、珍しく反論しないのね…… もう、諦めたのかな。
「それで、私はどうすれば良いの? 水嶋圭子に会った方が良いの?」
いや、会ってもお互い知らない訳だし……
「いや、わざわざこっちから会いに行かなくても良いよ」
「ねえ智ちゃん、圭子とは本当に会った事無いんだよね」
私は智ちゃんにそう訊きますけど……
「会うも何も、顔も見た事ないのに判らないよ!」
「この子なんだけどね」
来夢さんは圭子の顔をスマホに映し出しました。
「へえー、結構可愛いじゃない。やっぱり私の子孫だけの事はあるわね」
まだ智ちゃんの子孫って決まった訳じゃ無いんだけど、智ちゃんってそんな性格だっけ……
「あっ、来夢さん」
あっ、そう言えば倉橋も一緒だったんだよね……
「どうしたの響君」
「いや、今日は何処にも行かないんだよね」
「うん、別に何処かに行くつもりもないけど……」
倉橋はどうしたんだろ? これから予定でもあるのかな……
「いや、僕はこれからバイトだから……」
「うん、響君は帰っていいよ」
来夢さんはあっさりとそう言うけど、あんな言われ方されると倉橋としてはやるせないんじゃないかな……
圭子絡みの件から何も起こらずに夏休みは終わった。しかし、うちの高校は二学期制なので八月二十一日から学校が始まり期末試験が二十三日からある。それが終わると九月五日から文化祭が始まる。大体夏休みが通常より十日も早く終わるのは納得がいかないのだが、九月二十一日から九月末まで秋休みがあるのでそこは仕方がないという事にしておこう。それが終わると十月一日から後期が始まる。
でも、まずは文化祭だ! うちのクラスはたこ焼きの販売をする事になっているのだが、僕は作った事がない。これは、やっぱり練習しとくべきなのだろうか…… そう思っている時だった。
「倉橋、たこ焼き焼かない? 私、得意なんだけど」
希美さんが僕の部屋の壁を開いて入って来た。手にはたこ焼き用の鉄板を持っている。
「希美さん、これはどうするんですか?」
折角なので訊いてみた。
「私が使っているのはガスコンロ用の鉄板なんだけど作ってみない、たこ焼き」
そう言いながら希美さんは小麦粉を溶いて、タコと野菜を細かく切り始めた。
「あの、早速なんですね……」
「うん!」
希美さんは笑顔でそう頷いた。でも、このたこ焼き用の鉄板ってたくさんの窪みがある…… これに材料を入れて焼くんだろうけど……
「希美さん、この先の尖った工具みたいな物は何ですか?」
僕は本当に作った事が無かったので見る物すべてが新鮮だ。
「あっ、それで引っ掛けてたこ焼きをクルクルと回しながら焼いていくの!」
なるほど、僕はちょっとだけ興味を持ちました。
すると希美さんはテキパキと準備をしたかと思ったら、早速焼き始めた。
希美さんは手際良く先の尖った工具のような物を使ってたこ焼きをクルクルとひっくり返して焼いていきます。
「ねえ、倉橋もやってみる?」
そう言われたので僕も挑戦してみたけど……
「あっ、それはまだ焼けてないよ!」
そう言われたけど、僕はひっくり返してしまったので半熟の小麦粉がはみ出し破けてしまった。その所為で歪な形のたこ焼きになってしまった。
「倉橋はやった事が無かったんだね」
「はい、そうですね……」
僕は初体験だった。でも、希美さんが優しく教えてくれたから少しは上手く出来るようになったと思う。こんな事を言うと勘違いされそうだけど……
「沢山出来たね」
「はい、でも売ってあるのとは形が違うんですね」
「うん、たこ焼きを焼く鉄板によって違うの、特にお店で作っているものとはね」
そんな事で、僕と希美さんは沢山のたこ焼きを食べる事に……
『バタッ!』
いきなり壁を叩くような音がしたと思ったら、来夢が壁を開いて部屋に入って来た。
「うわっ、何それ? 丸くて可愛いね」
未来人は、たこ焼きとか食べた事無いのかな……
「たこ焼きなんですけど、食べませんか?」
「たこ焼き? 美味しいの?」
「はい」
そういう事で、文化祭前のひと時でした。
今日から城南高校の文化祭が二日間あります。希美さんには文化祭の事を伝えてあるので来てくれると思います。
そう言えば、この間希美さんと練習のつもりで作ったたこ焼きを来夢も一緒に食べたな…… それに希美さんが文化祭がある事を言っていたから来夢も来るかも知れない。でも、この時代のお金は持って無いはず……
「いらっしゃいませ!」
意外とうちの店は好評のようだ。開店当初から沢山の人が来ている。
「倉橋君、ストックが少なくなって来たからジャンジャン焼いてね!」
「えっ、うん……」
龍己も一緒に焼いてるはずだけど……
「龍己は?」
「うん、焼いてるけど……」
どうかしたのかな……
「神谷、すまない! 今戻ったから」
「龍己、どっか行ってたのか?」
「うん、ちょっとトイレに……」
「伊丹君は、ちょっと調子が悪いんだよね……」
「いや、もう大丈夫! スッキリしたから」
こいつ、大丈夫だろうな…… ちゃんと手を洗ったよね……
そんな話をしてる時だった。
「倉橋君!」
同じクラスの女子に声を掛けられた。
「あっ、もう残り少ないんだよね」
僕がそう言うと……
「ううん、そうじゃなくてお客さんなんだけど……」
そう言われ、外を覗くと、そこには笑顔の希美さんが僕に手を振っていた。それを見ていた同じクラスの男子が、僕と希美さんを交互に見ていた。
「あっ、ごめん! 忙しかったよね」
そう言って外へ行ってしまった。
「倉橋君!」
そう言って神谷さんが僕の方を見て頷いた。僕はそれを見て頷いた後、希美さんを追って出て行った。
こっちの方へ来たと思うんだけど…… 居た! 彼女は窓の外を眺めていた。
「希美さん!」
彼女は僕を見て言った。
「お店の方は大丈夫?」
「うん、少しくらいなら」
すると彼女は僕のそばへ来て僕を抱き寄せた。
「ごめんね……」
彼女がそう言ったけど……
「大丈夫ですよ!」
そう言って僕も希美さんの事を抱きしめた。そのまま、長い時間そうしていたような感じだったけど、彼女とこうしていた事でそう長く感じた。
「倉橋はいつも優しいんだね! 他の女の子にも優しいの?」
そんな事を訊かないでほしいと思ったけど……
「希美さんだけですよ!」
そう一言だけ言った。でも、そう言った瞬間、僕はとても恥ずかしくなった。僕は何を言っているんだろう。
「倉橋、私…… もう少ししてからまた来るね」
そう言って、希美さんは僕から離れて行ってしまった。
いや、もう少しそのまま抱き合っていたかったな……
希美との距離が少しずつ近くなっていく響だけど……




