41 圭子と智代
圭子の事を無断で調査した来夢と響は、ひどく局長に怒られた。しかし、無理して調べたにも関わらず、余計に判らなくなってしまった。
柴咲副部長との話も終わり、僕達が皆んなの所に戻った時だった。
「倉橋君、何処に行ってたの?」
第一声は神谷さんだった。
「響、探してたんだぞ!」
続いて龍己からも言われた。
「うん、ちょっとな……」
「ちょっとって、希美と良い事でもしてたの?」
そんな事を言うのは勿論未玖さんだ! それを訊いた神谷さんは頬を赤くして僕の事を獣物でも見るような目で見ている。
「そんな事はしていないですよ」
「あら、そんな事ってどんな事?」
しまった! やられた…… これを聞いた龍己も……
「おまえ、なにをしたんだよ!」
顔を真っ赤にして興味深々に訊いて来た。
まったく未玖さんは何をしたいのか……
「未玖、倉橋を揶揄わないでね!」
希美さんがこっちに来て状況は収拾した。
「倉橋君、何をしてるのかは知らないけど、あなた、受験は大丈夫なの?」
そう神谷さんに訊かれたけど、受験は大丈夫だ! しかし、舞龍達のことは放っておく事は出来ない。それに圭子の事も……
「大丈夫だよ! それに、後は警備局がやってくれるみたいだから」
「そう、そうね、部長がやってくれるなら大丈夫ね! それならそろそろ帰りましょう」
「うん、そうだな」
今の神谷さんの言葉は……
「しかし、警備部長が神谷の子孫とはな」
えっ、それって……
「部長がそう言ったんですか?」
「うん、私も最初は信じられなかったんだけど…… って何故伊丹君が言うのよ!」
「えっ、別に良いだろう」
「もう、人の事は良いからあなたは舞龍の心配でもしてたら」
いや、それはどうでも良いけど、という事は、僕との事も…… いや、戸籍上の繋がりは無いはずだ! うん、問題無い…… 僕は自分に言い聞かせた。
神谷さんと龍己の言い争いも終わったようなので僕達がJD3Wで駐機場へ帰ろうとした時、希美さんと僕は局長に呼ばれた。
「じゃあ、先に行ってるからね」
未玖さんには、そう言われたけど……
「倉橋、行こう……」
希美さんはそう言って僕と手を繋ぎその手を引って行くんだけど、何故僕まで……
「ほら、そこのお二人さん早く行くよ」
来夢にそう言われた。こいつも一緒なのか……
僕達三人は局長室へ来た。
「局長さん、どうかしたんですか?」
まず希美さんが訊きました。
「うん、解っているとは思うんだが……」
「はあ……」
多分、希美さんは何故呼ばれたのか解って無いようだ。
「実は、私は君の子孫だ!」
局長がそう言ったのを訊いて希美さんは驚いている。
「えっ…… 未玖が言ってた事は本当だったの?」
「えっ、何の事だ!」
局長も驚いている?
「あっ、いえ…… 私と局長さんの名字が一緒だったので、ひょっとして繋がっているんじゃって……」
「そうか…… 私も最初は疑ったんだけど…… そういう事だから響君もそのつもりで頼む。君も関係ない訳ではないから」
いや、その言葉が一番気になる。それって僕も関係者? それって、僕と希美さんの恋は成就出来ないって事なのか……
「本当、複雑だね……」
来夢はお気楽で良いな……
その後、僕と希美さん、それと来夢の三人で駐機場へ急いだ。先に行っている三人がタイムマシンの中に入らずに待っているはずだから……
僕達が駐機場へ着いた時、三人から案の定愚痴られた。
「どうして、入口とハッチが繋がっていないの?」
神谷さんだ! 結構鋭いな…… 圭子達の事を調べに行ったとき、面倒だったからハッチを使わずにオレンジ色の光を使った簡易的な方法でタイムマシンに乗降したのだ。
「今開けるからちょっと待って!」
来夢はそう言ってハッチを開いた。
「ねえ倉橋君、二十一世紀には何時頃着くの?」
そう訊かれたけど、何か用事でもあるんだろうか?
「時間は好きな時間に設定出来るけど、何処かへ行くの?」
来夢が神谷さんにそう説明して訊いた。
「それって大丈夫? 私達が戻った所に別の時代の私達がいるとか無いよね」
なるほど…… 神谷さんはやっぱりSF映画の見過ぎのようだ。
「神谷さん、それは大丈夫よ! そういう事は無いから! まあ、近未来や数年前の過去に行った時、もう一人のあなた達に逢う事はあるかもだけど」
「はあ、そうなんですね…… それじゃ、スーパーにお買い物を頼まれていたから二時くらいに戻りたいんだけど……」
「解ったわ! 響君、到着時間を二時ちょっと前に合わせて!」
「あっ、はい」
そういう事で、僕達は現代の一時五十分くらいに戻って来た。
「いや、ちょっと疲れたかな」
龍己はそう言っているけど……
「どうだった、初めてのタイムトリップは?」
来夢がみんなに訊いている。
「何だか、あまり変わらないかな」
「いや、未玖、かなり技術が進んでいて、車とかも自動運転だったでしょう」
「まあ、そうだけど、違った意味で……」
未玖さんは、たまに意味不明な事を言うんだよな。
「俺はいろんな乗り物がすべてAIで動いているのを見て未来に来たんだと思ったかな」
流石は龍己だ!
「私は、私の子孫と出会えて不思議な感覚だったけど、ちょっと嬉しかったかな」
神谷さんはそこが一番気になるとこだったんたな……
「倉橋君、それじゃまたね! 伊丹君行くよ」
そう言って神谷さんと龍己は帰って行った。あの二人は側から見れば仲が良いんだけどな……
今日は、大学でゼミが行われます。多分、智ちゃんと未玖も来ると思うけど…… 智ちゃんには、圭子の事は言わない方が良いよね。
「おはよう希美」
あれ、未玖だけなの……
「おはよう! あれ、智ちゃんは?」
「あっ、あそこにいるけど……」
智ちゃんはブツブツ言いながら校門の所にいた。
「おはよう智ちゃん!」
「あっ、希美! あんたも知ってたの?」
えっ、何の事? 何を言ってるの? 私は目を白黒させていた。
「えっと、何の事?」
「私の子孫の事、知ってるの?」
私はそれを訊いて、未玖を見た。
「希美、いずれは判る事だし……」
確かにいずれは判る事だけど…… まだ、はっきりと智ちゃんの子孫なのかは判らないわけだから……
「ねえ、どういう事?」
「智ちゃん、誰だって子孫はいるんだから…… 遠い未来に」
「えっ、ああ、そういう事?」
「うん、うん」
私は笑顔で頷いた。
「でも、未玖の話では私の子孫が良からぬ事をしてるって話だけど……」
もう、未玖は何故そういう余計な事を言うかな……
「それは、まだ判らないから! ひょっとしたら智ちゃんとは関係無いかもだし……」
そう言いながら、私は未玖を睨んだ。まったく後先考えずに喋るんだから……
「ねえ希美、あなたは何を知ってるの? 判らないとか、関係無いとか言ってるけど……」
しまった! 迂闊だった…… 私も喋り過ぎてしまった。
「ねえ、知ってる事があるなら教えてよ!」
そう言われても今からは……
「智ちゃん、ゼミが終わってからにしようよ」
私はそう言いました。取り敢えず、ゼミが終わってから来夢さんに相談しよう。
午前中でゼミは終わり、今日は解散となりました。しかしながら、こんな時のテーマが環境問題とは……
「ねえ希美、私の子孫の事は?」
智ちゃんは本当に知りたいのかな……
「智ちゃん、ちょっと待ってね」
私は急いで来夢さんに連絡を取りました。
『希美、どうかした?』
「来夢さん、圭子と繋がりがあるかも知れない人の事でちょっと……」
『解ったわ、取り敢えずタイムマシンへ連れて来て!』
「えっ、連れて来るの!」
連れて来るって、まだUFO型のタイムマシンや未来の事とか全然話して無いんだけど……
『希美、まずは連れて来て状況を話さないと駄目でしょう』
えっと、確かにそうだけど…… 大丈夫なのかな……
「解りました……」
とは、言ったけど……
「ねえ希美、どうなの?」
智ちゃんは一度興味を持つと突っ走ってしまう。
「智ちゃん、それじゃ説明してくれる人の所へ行こうか」
「うん! 何処に行くの?」
えっと……
「まずは倉橋のアパートね」
「えっ、倉橋って…… あっ、イケメン君ね」
「う、うん……」
大丈夫かな……
「ねえ智ちゃん、未玖からは何か訊いた?」
「えっ、タイムマシンで未来へ行ったとか、何処へでも行ける便利な道具があるとかは聞いたけど」
意外と色々話は訊きているんだ…… でも智ちゃんはどこまで信じているのかな……
「ねえ希美、イケメン君が教えてくれるの?」
「あっ、そうじゃ無くて……」
うーん、説明が難しいんだよね…… こんな感じで智ちゃんと話しながら倉橋のアパートに着きました。
『ピンポーン』
私が倉橋の部屋のチャイムを鳴らすのは久々です。だっていつもは……
『ガッチャ』
「あっ、希美さん」
「あの、来夢さんの所に……」
「珍しいですね、いつもは壁を開いて来るのに」
倉橋がそんな事を言うから……
「壁を開くの? あなた達はどういう付き合いをしてるの?」
「えっ、水嶋さんも一緒…… どうぞ」
私達は倉橋の部屋へ入りました。
「あの、コーヒーでも飲みますか?」
「ううん、すぐに来夢さんの所へ行くから」
そう言って私はファスナーを使って壁を開きました。
「希美、こんな事して大丈夫なの? イケメン君、これどうするの?」
倉橋が困った顔をしてるから余計に誤解されてしまう……
「智ちゃん良いから行くよ!」
「うん……」
「あっ、僕も行きます」
私達は三人で来夢さんのタイムマシンへ行きました。
響達の友人関係の繋がりがある程度は解った。しかし、圭子と智代の繋がりが判らない。この二人は本当に繋がっているのか……




