40 圭子の秘密2
中学を卒業した時の圭子は、性格が良くとても可愛いらしい子だった…… これがどうやったら無表情で可愛いくない圭子になるのか……
僕達は今、2231年の来夢や舞龍達が中学校を卒業する年の橋本市に来ています。圭子が橋本市立和泉中学校を卒業する情報を元に、何故圭子の戸籍が無くなったのかを調べに来た。
『バタッ!』
「イテッ!」
「痛ーい」
僕は女子中学生とぶつかってしまった。
「あっ、大丈夫ですか」
「いえ、私の方こそよそ見をしていたので、ごめんなさい」
あれ、この娘は雰囲気こそ違うけど多分、圭子だ!
「お怪我は無いですか?」
「あっ、僕は大丈夫! 君の方こそ大丈夫」
僕がそう訊くと……
「あっ、私は大丈夫です」
彼女は笑顔でそう言うと学校の中へ走って行った。
「来夢さん、今のは……」
僕がそう言うと……
「なに、ニヤけているの?」
「えっ、別にニヤけてなんかいませんよ」
僕はそう言ったけど、隣にいる希美さんはジッと僕を見ている。
「いや、そうじゃなくて!」
「倉橋って、ああいう子が良いんだ」
僕は別に特別な感情はないです……
「まあ良いけど、今の子は圭子だね! ただ、笑顔が可愛い雰囲気の違う圭子だけど」
「どう言う事ですか?」
希美さんは来夢に訊きましたけど……
「知らなーい」
まあ、そうだろうけど、言い方……
「来夢さん、マーカーは?」
「大丈夫、それはちゃんと飛ばしたから、あとはタイムマシンで彼女の事を見守ろう」
「はい」
そういう事で、僕達はタイムマシンへ戻り、モニターで彼女の事を見ています。
「普通の卒業式ですよね……」
「うん、そうだね…… でも、何かあるとしたら式が終わって学校を出た後じゃ無いかな……」
僕達はタイムマシンの中で彼女の事を見守ります。
卒試式も終わり学校を出て街の方へ数人の女の子と歩いていますが、別に異常はないようだ。
「日にちを変えてみようか」
来夢さんがそう言うので、一週間後に移動した。でも、その間に何も無いといいけど……
「あれ、圭子の姿が見えないけど……」
僕はマーカーを動かしてみるけど……
「響君代わって!」
来夢がマーカーを操作して、部屋の中を転々と探すと……
「いた!」
はあ…… まだあの可愛い笑顔の圭子だ! 何事も無く無事で良かった。
「また、出掛けるみたいだね」
彼女は電車に乗るようです。この時代の電車ってどんなのだろう…… 僕がそう思っている時、電車は来ました。デザインが流線型でちょっとカッコいい系の電車かな、彼女はその電車に乗り城南市へ行きました。駅を出て街の方へ歩いて行くようだけど何処へ行くのか、あっ、お店に入って行きました。
「あれは、アパレルショップかな」
希美さんはちょっと興味有り気にそう言います。
「多分、高校の制服を取りに来たんじゃないかな」
来夢はそう言いながらマーカーを店内へ誘導します。すると店員さんが高校の制服を出して対応しています。
「来夢さんの言う通りでしたね」
僕達はホッとしました。
その後、彼女はショップを出た後、路地を渡り繁華街の方へ走って行きました。
「来夢さん、遅れてますよ!」
「解ってるよ!」
そう言っている時でした。マーカーが彼女に追い付いた時、彼女は繁華街の真ん中で倒れていました。
「えっ、これって…… どういう事?」
「何故、彼女が……」
彼女の周りには次第に人が集まり誰かが救急車と警察に連絡をしたようだ。彼女はうつ伏せに倒れ、耳から出血していました。
「彼女は、もう助からないね」
来夢が冷静にそう言っているが……
「まだ判らないでしょう!」
僕はそう言った! それに救急車だって来ている訳だから……
「響君、彼女は脳内出血を起こしてる。だから耳から出血してるの」
来夢はそう言って黙ってしまった。まあ、未来と言っても死んだ人を生き帰らす事は出来ないだろう。
希美さんも声を出す事も出来ずに両手で顔を覆っていた。
「でも、誰があんな短時間に……」
「そこからは、警備局の仕事だから……」
来夢はそう言って叔父さんに連絡していたようだ。
「あっ、叔父さん…… 圭子が何者かに殺された」
来夢の耳元で叔父さんの声が聞こえてはいるけど何を言っているかは判らない…… しかし、説教じみた事を言われているようだった。
「うん、マーカーは付けてたけど、急に走り出したからちょっと遅れてね、追い付いた時には、もう倒れてたよ」
これは、過去の資料だけでは判らないよな……
「うん、解った」
来夢は局長との話を終えた。
「それじゃ、2236年に帰るんですね」
来夢は少し考えて……
「まだよ!」
「えっ、でも、圭子は……」
希美さんは俯き気味にそう言います。
「希美、舞龍達は高校で圭子と出会っているんだよ!」
「うん、そうだけど……」
「それじゃ、四月の…… うん、確か…… 十日だったと思う。その日が入学式!」
僕達は来夢の言う通り入学式がある四月十日に飛んだ。
「来たのは良いけど、どうするんですか?」
僕の問いに来夢は……
「舞龍にマーカーを付ける」
「そうか! そしたら圭子が接触してくるところを抑えられるって事ですね」
希美さんはそう言うけど……
「本当に! 死んだはずの圭子が接触して来るんですか?」
僕は半信半疑だ!
「来たよ!」
僕達は、隠れて舞龍達の様子を伺った。
「賢人、まだ落ち込んでんの」
「もう、ほっといてくれ! そう簡単には立ち直れない」
「賢人、何があったんだ」
そこにいるのは舞龍と賢人、それに筋肉男の鬼崎だろうか、まだ圭子とは接触してないようだ。
「また、来夢にフラれたのよ」
「またかよ! いい加減諦めた方が良いんじゃねのか」
「あたいも、そう言ったんだけどね」
来夢は賢人から言い寄られていたようだ……
「大体、あの女はいけ好かねぇんだよ!」
それを聞いた来夢は飛び出しそうになったので僕が必死に取り押えましたけど……
「あいつ、言いたい放題言って!」
「来夢さん抑えてください」
来夢は必死に気持ちを落ち着かせているようだけど……
「来夢さん、賢人の事を振ったんですか?」
「その話はいいでしょう! 昔の事よ」
来夢には賢人に対して言い分があるようだ。
「とにかく、マーカーを飛ばして戻りましょう。見つかると厄介だから……」
僕がそう言ったので、来夢は文句を言いたいのを我慢してマーカーを飛ばした後、タイムマシンへ戻った。
「まだ、山田とは付き合いが無かったんですね!」
「山田とは高校を卒業した後じゃないの」
来夢が気分悪そうにそう言った。まあ、何でもかんでも高校の時という訳ではなさそうだ。
舞龍達が学校の教室に入って三人で話をしている。これは普通の光景だと思う。その時だった……
「伊丹舞龍さんだよね」
そう声を掛けたのは無表情で可愛い気のない圭子だった。彼女は三人のことを見つめていた。これが圭子と舞龍の最初の出会いのようだが……
「あの、圭子なんでしょうか?」
「うん、私達が知っているあの圭子だね」
「どうして生きているんですか?」
僕達三人は訳が解らなかった。死んだはずの圭子が……
僕達は圭子の生存を確認した後、取り敢えず2236年に戻る事にした。
僕達が2236年の駐機場に戻って来た時、来夢の叔父さんである警備局の局長が仁王立で待っていた。
「はあ…… またこってり絞られそうね」
来夢はそう言って溜息を吐いている。
「ちゃんと局長の許可を取らないからですよ!」
僕がそう言うと、来夢からすかさず睨まれてしまった。
「希美さん、僕達は先に戻りましょう」
「そうですね!」
「ちょっと二人ともズルいわよ」
そう言ってタイムマシンのハッチを開けた途端、僕達三人は警備局員に包囲された。なんでこうなるの……
僕達三人は局長室でこってり怒られたけど、大半は圭子に関する事情聴取だった。
「それじゃ、水嶋圭子は二人いたのか?」
局長から耳を疑うような事を言われた。
「叔父さん違うよ! 中学校を卒業したばかりの圭子は笑顔の可愛い娘だったけど…… 高校入学後の圭子は無表情で可愛くない圭子だったの!」
「だから、可愛い圭子が死んで可愛くない圭子が生きているんだろう!」
いや、だけど…… 圭子が二人いたとは考えられない。
「水嶋圭子は双子だったんですか?」
希美さんがそう訊いたけど……
「いや、双子も何も、圭子の戸籍は無いんだからな……」
「いえ、ですから中学生の圭子は二人いたんですか?」
希美さんは言い直しながら訊いたけど……
「いや、そういう事実はない!」
だったら…… しかし、引っ掛かるな……
「取り敢えず、あとは警備局で調べるから、おまえはおとなしくしてろ」
局長にそう言われ、来夢は反抗的だったけど…… その後、僕達は解放された。
僕達は局長室を出て、みんなの元へ戻ろうとした時……
「おい来夢、いい加減にしろよ!」
「副部長!」
そこには機嫌の悪そうな柴咲副部長がいた。
「どうかしたの?」
「どうかしたのじゃねえーよ! おまえ達が勝手な行動をするから、見張り役の俺が怒られてんだよ!」
「あら、ごめんなさい! でも解らない事は調べないと気分が悪くてね」
「何が解ったんだ!」
来夢は、中学を卒業した時の圭子と高校に入学した後の圭子の性格の変わり方、それに春休み中に一度亡くなっている事を話した。
「それって、どういう事だ!」
「私が知りたいわよ!」
「局長は、圭子は二人居たのかって言ってたけど……」
「うん…… 確かに二人いたのなら解る気はする。しかし、違和感があるよな」
「まあ、そう言う事よ」
「まあ、どっちにしても勝手な行動はするなよ!」
まあ、しばらくは自粛しないとな……
可愛い圭子は中学を卒業した春休みに亡くなっていた…… しかし、舞龍達が通う高校に無表情で可愛くない圭子が現れた。これはどういう事なのか……




