39 圭子の秘密1
ここに来て、みんな何かしら繋がりがある事が判った。あとは圭子の事がよく判らない。
私達は今、二十三世紀に来ています。ここに来てはっきりしたことは、来夢さんと倉橋は繋がっていたという事です。
まあ、あの二人は羨ましいくらい息が合っていたので、なんとなく何かがあるのではと思っていましたけど……
「ねえ希美、来夢さんの叔父さんだけど」
未玖が私にそう話し掛けて来ました。
「うん、警備局の局長さんがどうかしたの?」
「その局長さんの名字が冬野って言ってなかった?」
えっ、それって……
「そ、そうだっけ……?」
「そうだよ! 自己紹介された時に冬野猛ですと言ってたじゃない」
う、嘘でしょう…… 未玖の聞き間違いじゃないのかな……
「ねえ、希美と局長って繋がってるんじゃない?」
「まさか!」
私は咄嗟に否定しましたけど…… もし、本当に繋がっていたら、私と倉橋も繋がっているという事だよね…… だって、叔父と姪の関係の来夢さんが倉橋の来孫だから、もし私の来孫が局長だったら……
「あーっ、もう訳が解らない!」
「何! いきなり叫んでどうしたの」
未玖から心配そうにそう訊かれました。
「だって、それって私と倉橋も繋がっているって事でしょう」
私は項垂れてしまった……
「まあ、私が勝手に言ってるだけで、はっきり決まった訳じゃないでしょう」
未玖は笑顔でそう言うけど、私はなんだか不安です。もし、本当に繋がっていたなら、私、立ち直れるかな……
「希美、解りやすいね! やっぱ響君のこと好きなんでしょう」
未玖は楽しそうにイジって来るけど…… 私の心は凄く乱れています。
「希美さん、ここにいたんですか」
僕は希美さんの姿が見えなかったので、ずっと探していた。
「倉橋……」
「私も一緒だったんだけどね」
「はい、未玖さんも一緒で良かったです」
「良くない!」
いきなり希美さんからそう言われました。何か怒ってるような、僕は何かやらかしたかな……
「あの、何が良くないんですか?」
「あっ、ごめん…… いや、何でもない」
そう言ってみんながいるカンファレンスルームに行ってしまった。
「未玖さん、なにかあったんですか?」
僕がそう訊くと彼女はニコニコして……
「別に、何もないよ」
そう言ってカンファレンスルームへ行ってしまった。一体なんだったんだ。
僕もカンファレンスルームへ戻ると、今度は神谷さんが冬野局長と何か話をしていた。
「神谷さん、どうかしたんですか?」
僕は、話をしてる神谷さんに声を掛けた。
「倉橋君……」
彼女はちょっと気不味そうだ。
「響君、実は彼女が神谷警備部長と繋がっているんじゃないかと言うんだが……」
「そうなんですか……」
僕がそう訊くと彼女は困った表情をした。
「あの、調べる事は出来るんですよね」
「うーん……」
局長は、ちょっと渋い顔をしているけど、調べられたら困る事でもあるんだろうか。
「叔父さん、この際はっきりした方が良いんじゃない」
いつの間にか来夢も話に加わって来た。
「ああ、解った…… 良いだろう」
局長は仕方なく許可を出したようだった。
「それと、希美の件もね!」
来夢はニコニコしながらそう言ってこの場を離れた。
「はあ、身内は来夢だけで充分なんだが……」
局長がそうぼやいていたけど、なんとなく僕も解るような気がする。希美さんが僕と繋がっていたら……
僕は気になったので来夢に相談しようと思ったんだが来夢の奴何処に行ったのか? さっきまで一緒にいたのに……
「おっ響君、どうかしたのか?」
あっ、警備部長! やっぱりこの人は緊張する。
「郁子さんは元気にしてるか!」
そうだこの間、母さんが未来でこの人に逢ってから可笑しくなったんだ……
「母は横浜へ戻りました」
「横浜?」
「はい、今は父と一緒に横浜の大学で色々と研究をしていますので」
「そうか…… ところで何処に行くのかな」
僕は来夢さんを探しに警備局の奥へ入って行くときに警備部長に捕まったのだが……
「あっ、来夢さんを探しに……」
「あっ、来夢さんね! それならこの奥の資料室にいると思うよ」
「あっ、ありがとうございます」
「そんな事はお安い御用だよ」
僕は警備部長の横を通り資料室へ向かった。はあ、緊張した…… やっぱりあの人はちょっと苦手だ。
ここが資料室か…… この中に来夢がいるんだろうか? ドアをノックして中へ入ってみた。
「誰!」
中から来夢の声がした。やっぱりいるのか……
「あっ、僕です」
「響君、ここは関係者以外立ち入り禁止だよ!」
えっ、それって来夢は関係者なのか……
「でも、警備部長さんに来夢さんがここにいるからと訊いて来たんですけど」
「もう…… それで用件は?」
「希美さんと局長は繋がっているんですか?」
僕は単刀直入に訊いた。すると来夢は憮然とした態度で答えた。
「そんなの当たり前でしょう! 何言ってるの」
来夢からは意外な答えが返って来たけど、何故当たり前なのか……
「でも、来夢さん……」
「それよりも圭子だよ!」
「えっ、圭子?」
どういう事? 何故圭子?
「そう、中学生まで戸籍があるのに、何故その後の記録がないのかな……」
来夢はパソコンを使って色々と調べているようだけど、思うような結果が載っていないようだ。
「はあ…… 判らない、まったくどうなってんだろう」
「ここで警備部長と神谷さんの事も調べられるんですか」
「うん、でもそれはもう解った」
「それで」
「神谷さんと警備部長は繋がっているよ」
そうか…… えっ! それじゃ僕も繋がっている可能性がある?
「ひょっとしたら響君は神谷さんの来孫になるのかもね」
来夢はボソッとそんな事を言ったけど……
「いや、それは可笑しい! 僕と神谷さんは同級生なのに何故来孫なんですか?」
「まあ、可能性として神谷部長の子供なら神谷さんより五世代後の子という事でしょう!」
いや、可笑しいけど理屈としてはあっている。でも、これはやっぱり可笑しい。
「いや、それは……」
「ふふふ、馬鹿ね、可能性の話でしょう! それに戸籍上では、あなたと警備部長は繋がっていないんだから」
まあ、来夢の言う通りだけど、真相は判らない! でも戸籍上は他人な訳だから……
「響君、今から五年前に行くよ!」
えっ、ちょっといきなり過ぎない? でも……
「五年前? 何をするんですか」
「圭子が中学を卒業した後の事を調べる」
「解りました」
どうせ、何を言っても訊かないだろう、それに勝手なことをひとりでされても困るからな……
そして、資料室を出ようとした時でした。
「こんなところで二人で何してるんですか?」
資料室の前には希美さんが立っていた。ちょっと怒ってる?
「希美、あなたも一緒に来て!」
「えっ、私?」
来夢は、希美さんも一緒に誘ったけど……
「何処に行くんですか?」
「今から五年前の橋本市に行くの! 圭子が中学を卒業した後の事を調べに」
「うん…… 解った」
希美さんも了承して三人で警備局を出た。
「来夢さん、他の人達は……」
「そんな大人数で行けないでしょう! それにそんなに巻き込めないからね」
いや、もう充分巻き込まれていますけど…… 僕達はJD5Sでタイムマシンの駐機場へ向かっている時だった。
『プスン、プスン、ポト……』
あれ? 僕達が乗ったJD5Sがいきなり止まってしまった……
「うーん、急いでいる時に限って」
来夢はそう言って赤いボタンを押した。
『あっ、すみません不具合で止まったのをこちらでも確認しました。代わりのJD5Sをすぐに配車します』
車内のスピーカーからそう連絡がありました。これは……
「響君、後ろのJD5Sに乗り換えるよ」
来夢に言われて僕達は急いで乗り換え駐機場へ向かった。
「あの…… なんだったんですか?」
希美さんも理解出来てなかったようです。
「たまにあるのよ、不具合か、水素切れが……」
「それって料金はどうなるんですか?」
「最初の分は無料で、後からの分だけ払えば良いの」
なるほど、未来でもこんな事はあるんだ。
その後、僕達はタイムマシンへ乗り込んで出発準備をしたところで、来夢のスマホが鳴った。
これは多分、局長?
「もう、バレちゃった! 響君設定してるからスリップして」
僕は来夢さんに言われた通りスリップした。来夢は叔父さんに小言を言われているのか、スマホを耳から話している。
「良いんですか、そんな事して」
希美さんもちょっと心配してるのか、楽しんでいるのか判らないけど……
「良いのよ! どっちにしてももう時空空間なんだから」
しばらくして五年前の橋本市上空に着いた。
「はあ、懐かしいな」
「来夢さんは城南市の学校じゃなかったんですか?」
「まあ、そうだけど、よく遊びに来ていたんだよ」
「ひょっとして、舞龍達とですか……」
希美さんも、よくそういう事を訊けるな。
「そうだよ! それより和泉中学校の卒業式があるはずだから行ってみよう」
僕達が中学校の正門に近付いたそのときだった……
『バタッ!』
「イテっ!」
「あっ、痛ーい」
僕は誰かとぶつかってしまった…… と言うより女の子?
「あっ、ごめん! 大丈夫?」
「いえ、私の方こそよそ見をしていたのですみません」
その娘は、雰囲気こそは違うけど多分、圭子だ!
「お怪我は無いですか?」
「あっ、僕は大丈夫! 君の方こそ大丈夫?」
僕がそう訊くと……
「あっ、私は大丈夫です」
彼女は笑顔でそう言うと、学校の中へ走って行った。
「来夢さん」
「なに、ニヤけてるの」
「別に、ニヤけてなんか…… それより今のは圭子ですよね」
「うん…… たぶんね」
「あっ、マーカーは?」
「大丈夫、ちゃんと飛ばしたよ!」
雰囲気こそ全然違っていたけど、間違いないだろう。さて、この後、彼女に何が起こるのか……
資料室のサーバにパソコンを繋いで、圭子の事を調べても判らなかったので、結局圭子が中学を卒業する五年前に来てしまったが、今とは考えられない笑顔が可愛い圭子らしき人物に出会った。




