38 繋がり
みんなと未来に来てしまった。来夢の話では警備局の許可は出ているようだけど……
二十三世紀に着いて僕達は警備局に連れて来られた。決して連行された訳ではない!
「ようこそ二十三世紀へ」
来夢の叔父さん冬野局長が迎えてくれた。
「皆さん早速で悪いんだけど、ちょっと整理をしたいからカンファレンスルームへお願いします」
そう局長に言われたので、みんなが従ってカンファレンスルームへ入った。
「なあ、カンファレンスルームってなんだ!」
龍己は、知らないなら黙っていれば良いものを……
「カンファレンスルームは簡単に言えば会議室だよ、龍己君!」
来夢がクスクス笑いながら龍己に教えてくれた。
「まったく、何も知らないのね…… 恥ずかしい」
神谷さんにそう言われると龍己は俯いて何も言い返せないようだ。全く容赦ないな…… そんな二人と一緒に僕が最後にカンファレンスルームに入った。
「えっと、今日皆さんに来てもらったのは……」
えっ、来てもらった? 僕は決してそのつもりはなかったと思うけど…… 僕達は呼ばれていたのか?
「君達と関わりのある未来の人物がいるみたいなので整理したいと思います」
あっ、そういう事か…… でも、みんなで来夢のタイムマシンへ行った時も、来夢の奴が『未来か過去に行って見る?』とか言って誘っていた…… これは、未来へ誘うための策略だったのか!
「それで、倉橋響君の来孫は倉橋来夢、伊丹龍己君の来孫は伊丹舞龍、山田未玖さんの来孫は山田颯太という事で間違いないかな」
まあ、今解っているのはそのくらいかな……
「叔父さんもう一人、響君の先輩の高山誠司君が……」
高山? いや、違う!
「来夢さん、高山じゃなくて鷹島です」
「えっ、響君そうなのか? 来夢、話が違うじゃないか!」
局長は、ちょっと頭を抱えて来夢に言った。
「えっと、響君が賢人の名字を訊いたんじゃなかった?」
いや、だから僕は訊いただけだから……
「あの…… その時、来夢さんが高山か鷹島かのどっちかだと思うって言ってたと思うんですけど」
希美さんが一言付け加えてくれたけど…… そう言えば、前に賢人の名字を訊いたんだった。
「鷹島賢人で間違いないんだな?」
局長は他の職員に訊いているようだ。
「はい、間違いありません」
「叔父さん、鷹島なの? 高山じゃないの?」
「うん、鷹島だよ! そう言えば来夢、中学の頃の同級生だろう」
「あっ、うん……」
同級生の名前を忘れるとは、なんだか来夢らしくないな…… どうかしたのか?
「叔父さん、それと圭子の事なんだけど…… 調べてもよく判らないんだよね」
「うーん、警備局の調べでは三嶋圭子じゃないかと……」
三嶋? 何処かで聞いたような……
「それって、ひょっとして水嶋…… 前に倉橋がよく間違えていたよね」
あっ、そうだ、水嶋だ! 希美さんに言われて思い出した。いや、でもこれって…… 希美さんの友達の水嶋さんの事なのか……
「智ちゃんの事だよね」
「いや希美さん、圭子の名字の話です」
希美さんもちょっと勘違いをしているようだ。やっぱり天然なのかな……
「あっ、そうそう、三嶋じゃなくて水嶋圭子だよ!」
水嶋圭子! それって希美さんの友達の水嶋さんと関係があるのか……
「ただ、水嶋圭子は中学を卒業した後の消息が判らないんだ。舞龍達と一緒の高校なら城北高校のはずなんだが」
局長がそう言う事は、信憑性に欠けるという事か……
「でも、舞龍の話では圭子とは高校で一緒だったらしいんだよね」
「しかし、当時の城北高校の生徒に水嶋圭子という人物はいないんだ」
それってどういう事だ! 水嶋圭子と水嶋智代は、偶々名字が一緒だったという事で無関係なのか……
「叔父さん、水嶋圭子は存在しないという事なの?」
「うん、当時の高校のデータもそうだが、中学卒業後の戸籍も無い」
戸籍が無い! 抹消されているのか…… そもそも、中学まではデータがある訳だけど……
「それって、亡くなっているという事ですか?」
「うーん、亡くなったのかデータの管理ミスなのかは判らないが中学卒業後のデータが無いんだよ」
全然判らない、しかも希美さんの友達の水嶋智代さんとは関係ないのか……
「希美さん、水嶋さんに舞龍達の接触はないんですよね!」
僕は水嶋さんの事が急に心配になった。
「うん…… たぶん」
希美さんは自信なさげに頷いた。
「智ちゃんにそんな事があったら、私や希美に相談して来るはずだよ!」
未玖さんは自信満々にそう言っているけど……
「うん、いつも何かあったら言って来るもんね!」
まあ、そうなんだろうけど……
「希美、一応確認してみて! 接触があるなら事情を訊かないとだから」
来夢さんが希美さんにそう言っている。なんだか話が大袈裟になって来た。
その後、希美さんが水嶋さんに連絡を取り確認したようだけど……
『希美、誰が私に声を掛けるの?』
「いや、だから知らない人……」
『ううん、そんな事は無いけど、希美は誰からか声を掛けられたの?』
「うん、えっと…… 変な奴が最近、街にいるらしいのよ」
どうやら、水嶋さんに舞龍達の接触は無いようだ。
「取り敢えず一安心だね!」
「うん」
「ところで希美、二十三世紀から二十一世紀に電話出来るって希美のスマホはどうなっているの?」
「それ、私も思いました。私のスマホはこっちに来てからずっと圏外なのに」
未玖さんの疑問に隣にいた神谷さんも乗っかって来た。
「ひょっとして倉橋君のスマホも繋がっているの?」
「あっ、えっと……」
僕も希美さんも、その事についてはなんとも言えなかった。
「あっ、それね、時空ネットワークサービスだよ!」
「時空ネットワークサービス?」
「うん、スマホの電波を時空空間の中を通して繋げてるの!」
そんな未来の都合を僕達に話しても……
「それ、どういう仕組みなの!」
「知らない! だって私、時空ネットワークサービスの人じゃないもん」
まあ、そうだね……
「そんな事よりよ、未来ではJDなんちゃらっていう車をみんな持っているのか?」
龍己は未来人との繋がりより未来の車の方に興味があるようだ。まあ、気持ちは解るけど……
「あっ、あれは個人所有の車じゃ無いよ! ほとんどの車はJDコーポレーション所有になっているから」
「JDコーポレーション?」
「そうだよ、JDコーポレーションのキャブ、二十一世紀でいうところのタクシーを普通の人は使っているの。JDバスとかもあるけど山間の町へ行っているのがほとんどかな」
「トラックとかは?」
神谷さんも話に乗っかって来た。
「もちろんあるよ! AIがターミナルで荷物を積んで、AIがトラックを動かして目的地のターミナルまでね」
「ほとんど人がやってないんですね」
「うん、危ない事や大変な仕事はね、機械は文句を言わずに的確にやってくれる。それに人件費も掛からないから」
「来夢、新庁舎の工事現場を皆さんに見学させてもらったらどうかな」
「あっ、そうだね、あそこも沢山のAIロボットがあるから」
「私の方から現場の所長に話しとくから」
新庁舎って、時空管理警備局は新しい庁舎を建てているのか。
僕達は、来夢に連れられて工事現場へやって来た。とは言っても興味があるのは僕と龍己の二人だけで、あとは仕方なく着いて来たという状態だった。まあ、女子三人がAIの工事現場に興味を持たないよな……
「皆さん、こちらからご覧ください」
ここは現場の中枢であるAI管理室だ。そこには現場を一望出来るガラス張りの展望室といくつかのモニターがある。
「ここの管理室で、現場の工事車輌に搭載されているAIに指示をして作業をしてるんだ」
「あのクレーンもAIですか?」
「うん、そうだね。手元の玉掛けは人がやっているけど、その他はAIだよ」
残土の排出をしているパワーショベルやダンプにも人は乗っていないので、あれもAIなんだろう。
「現場作業員はクレーンの側にいる人だけですか?」
「まあ、そうだね! あと、材料の搬入があった時に二人くらいで簡単な作業があるけどね」
これだけ見ても二十一世紀の工事現場からすれば作業はかなり楽だろうと思う。AIのお陰で工期も現代と比べてかなり短いようだ。まあ、未来ではこれが普通なんだろうけど……
「あの、あれは何をしているんですか?」
神谷さんが指を差したところにはタンクローリー車が来ていた。
「あっ、あれは燃料を入れているんだよ」
「えっ、燃料? 電気で動いているんじゃ無いんですか?」
神谷さんは未来の車はすべて電気自動車だと思っていたようだ。
「電気自動車は馬力がないからね、だから水素エンジンを使っているんだ。一日に一回タンクローリー車で水素の充填に来るんだけどね」
神谷さんも未玖さんも納得はしていたけど、よく解らないようだ。
「ねえ、未来じゃガソリンとかは使わないの?」
「えっ、ガソリン? そんなのは使わないよ! それに世界でもガソリンに頼っている国はそうはないと思うけど」
現場の責任者の人が僕達の事を変な目で見るので来夢が説明をしていたようだ。まあ、二十一世紀ではガソリンは普通に使われているからな……
「ねえ来夢さん、どこかこの辺で食事出来るとこある?」
神谷さんが訊いて来た。彼女の横で未玖さんがツンツンと叩いているのが解るので、多分未玖さんが言わせているんだろう。
「すぐそこに美味しいレストランがあるけど」
いや、でも僕達は未来のお金は持っていないんだけど……
「来夢さん!」
僕が来夢さんに声を掛けたとき、彼女は僕の事を察したように……
「大丈夫よ、叔父さんから食事代を預かっているから」
どうやら今回も局長に気を遣ってもらったようだ。
未来人と繋がりがあるのは、響と龍己と未玖、それに鷹島の四人なんだけど、圭子の中学卒業後の戸籍が無いのは気になる……




