37 みんなで未来へ
響や希美の周りにも未来人と繋がりがあるものが出て来た。そうなると未来に興味がいってしまうのは仕方がない事なのかも知れない。
未玖さんと山田の事は希美さんがきちんと確認して話をしてくれた。山田がどこで未玖さんとの繋がりを知ったのかは判らないが、大学が夏休みになった頃、山田は未玖さんに接触したようだった。
「でも未玖、見ず知らずの人から貰ったガムをよく食べたね」
そこは、希美さんの言う通り不用心だと思う。
「だって、開封されていないし、普段からよくガムは噛んでるもん! むしろラッキーでしょう」
いや、そうかも知れないけど…… 迂闊だな。
「ねえイケメン君!」
僕は、希美さんの友達からはよくそう呼ばれる。
「あの…… 響です」
「えっ、ああ、そうなんだ! じゃあ響君」
「なんですか?」
「希美とはどこまで行ったの?」
えっ、どこまでって? 未来や過去には行った事があるけど、未玖さんはそれを知っているのか…… いや、そんな事はないだろう……
「えっと、スカイパークには一緒に行きましたよね」
「…… はあ、そんな事を訊いているんじゃないんだけどね」
未玖さんは眉を顰めてそう言っているけど、未来や過去に行った事を知っているのか……?
「え、えっと……」
「もう未玖! 変な事言ってるんじゃないでしょうね」
希美さんが慌ててそう言ったので、僕もようやく気付いた。はあ、そういう事か……
「えっ、でも良い雰囲気だから、てっきりそう思ったんだけど」
「それは…… 未玖には関係ない!」
「えーっ、話してくれても良いのに……」
まあ、でも付き合っている訳じゃないし、もちろん恋人同士とは、ちょっと違う…… まあ、そうなれば良いなと僕は希美さんに見惚れながらそう思った。
「ふーん、そうなんだ、二人はまだそういう関係じゃなかったんだ!」
そう言われるとなんだか腹が立つ! けど事実だ。
「それで、今日はみんなで私のタイムマシンに何をするために来たの? ひょっとして今から未来か過去にでも行ってみたいとか思ってるの?」
僕と未玖さんの話をつまらなそうに訊いていた来夢がとんでもない事を言い出した。
「えっ、未来にいけるんですか!」
最初に飛びついたのが龍己だった。こいつはそのつもりで来ていたのか……
大体、今日来夢のタイムマシンへ行こうと言い出したのは未玖さんだ! 僕達三人が夏期講習からの帰り道に未玖さんと希美さんに偶々出会ったのがきっかけなんだが……
「でも、私達が未来に行く事で過去や未来が変わったりしないの? それこそ時空の歪みが出来て大変な事になるとか……」
神谷さんはそういうSF物の映画とか好きだよね……
「その考え方は個人的に私は好きだけど、SF映画の見過ぎだね! 大体、未来に行ったからといって時空が歪むってどういう事よ!」
まあ、そこは来夢の言う通りかな。
「でも、そんなに簡単に行けるの?」
神谷さんは結構疑い深いです。
「全然問題ないわ!」
「それじゃ、来夢さんが住んでいる街に行きたいです」
龍己は舞龍から来夢に鞍替えしたのか、やけに張り切っている。
「判ったわ! それじゃ響君、操作をお願い」
「えっ、僕がやるんですか?」
ちょっと不満そうに言ってみたら、来夢にジッと睨まれた。
「えっ! 倉橋君操縦出来るの?」
神谷さんが驚いたように僕を見てそう言っている。そう、何を隠そう僕は、来夢のタイムマシンの所有者の一人なのだ!
でも、あとの事が面倒くさいので、この事は内緒だ。
「タイムマシンの操縦って言ってもスマホで設定するだけなんだけど」
「設定って何を設定するんだよ」
龍己と神谷さんが疑問に思う中、僕は自分のスマホを出してTMのアプリをタップした。
「えっ、響君のスマホを使うの?」
「うん、まあね」
僕はそう話ながら西暦2236年と入力した。
「来夢さん、2236年で良いんですよね」
「ええ、時間は今の時間でね」
はいはい、解りましたよ。
「それじゃ、動きますよ!」
「ちょ、ちょっと待って! シートベルトは?」
僕と同じような事を言っている。神谷さんは心配性で解りやすい。
「えっと、神谷さんだっけ」
神谷さんは来夢に呼ばれて、不思議そうに来夢を見ていた。
「はい」
「大した揺れは無いから大丈夫よ」
来夢がそう言ったので、希美さん以外は半信半疑ではあるが安心したようだ。僕と希美さんは何度も経験してるから問題ない。
僕は、その後スリップボタンをタップした。タイムマシンは『キュイーン』と音をたてて垂直に上昇した。
「うわっ、動いた!」
未玖さんもかなりオーバーアクションだな。それに比べて神谷さんはとても静かだ。龍己は落ち着かないというかキョロキョロと挙動不審な動きをしている。この後もう一度『キュイーン』という音とともに横に動いてタイムマシンは時空空間へ飛び込んだ。
「来夢さん、未来へ行っても降りる事は出来ないですよね」
そう、観光だと上空から街の様子を見るだけしか出来ないはずだが……
「あっ、その事なら叔父さんに許可をもらっているから大丈夫だから。着いたらいつもの駐機場に降ろしてね」
許可が出てるんだ…… 来夢は一体何者なのか、局長が叔父だからと言ってなんでもかんでも許可が出るのは考えられないけど……
「ねえ倉橋君、今って何処を飛んでるの?」
ちょっと不安気に神谷さんが訊いている。
「えっと、今は……」
「今は時空空間を飛んでるの、もうすぐ着くわ」
来夢が代わりに答えてくれた。時空を通る時は結構静かだから不安なんだよね。
『キュイーン』
どうやら2236年に到着したようだ。
「着いたよ!」
来夢の掛け声でみんな外を見るけど……
「ねえ響君、何も見えないけど……」
それを聞いた来夢が望遠カメラの映像をモニターに映してくれた。
「これが二十三世紀だよ!」
来夢は優しくそう言った。
「えっ、車がタイヤで走っているぞ!」
もう、お約束のようなコメントを龍己がしてくれた。まあ、僕も最初に来た時はそう言ったけど……
「龍己君、車なんだからタイヤで走るのは当たり前でしょう」
来夢が少し冷たそうに話すけど……
「えっ、まあ…… そうなんですけど」
「龍己、あの車は凄く乗り心地が良いぞ!」
龍己にコソッとそう言ったら……
「響、おまえは乗ったのか!」
そう訊かれてしまった。さっきまではタイヤで走っているとか言っていたのに……
「まあこの後、乗る事になると思うから」
「そうなのか!」
いや、龍己にここまで喜んでもらえるとは思わなかった。
「響君、サーチしてランディング!」
「はい、はい」
僕がサーチをした駐機場のひとつに警備部長がいた。
「来夢さん、神谷部長がいます」
「あっ、本当だ! 部長が迎えに来るとは思わなかった」
僕は、神谷部長がいる駐機場に着陸した。
「さあ、着いたよ!」
ハッチを開け降りて来たところに警備部長が待っていた。僕は、なんとなく緊張した。この人が父親かも知れない…… まあ、公になっている訳じゃないから問題ないと思うが……
「やあ、響君!」
声を掛けられるだけで、心臓がドキドキする。
「あっ、こんにちは」
まあ取り敢えず、挨拶くらいはしておこう。
「あれ、叔父さんは?」
「あっ、局長は今、遅めのお昼を食べてるよ!」
「何かあったの?」
「うーん、詳しくは判らないけどな…… 代わりに迎えにという事だった」
来夢の叔父さんも結構忙しそうだ。
「あ、あの、あなたも神谷って言うんですか?」
神谷さんが突然、部長に話し掛けて来た。
「君は?」
「私は神谷冬美です」
彼女の名前を聞いた部長が一瞬だけ表情を変えたのが解った。
「そうか…… よろしくね」
「あの、あなたは私の来孫なんですか?」
えっ、本当にそうなのか……
「さあ、どうかな…… 同じ名字の人って結構多いよ」
確かに、部長の言う通りかも知れない。しかし、本当に単なる偶然なのか……
「さあ、迎えの車が来た」
そこには以前乗ったJD3Wよりもちょっと大きめの車が来た。
「なあ響、これがさっき言っていた未来の車なんだよな」
「ああ、このタイプはJD3Wという車だ。僕達の時代でいうワゴン車だな」
「運転手はいないんだな」
「ああ、AIによる自動運転だよ」
「えっ! それって大丈夫なのか」
いや、龍己のリアクションは面白い。
「龍己君、タクシーがAIになってから事故は一度も起きてないよ」
来夢は自慢気にそう言っている。
「えっ、そうなんですか?」
「だって、この街を走っている車は、すべて同じAIで管理されてるから」
来夢の話を訊きながら、僕達はJD3Wに乗って警備局へ向かった。
「へえ、凄え! 響の言う通り乗り心地が良いな。流れるようにスーッと走るって感じだな!」
龍己はテンションマックスだな、解るけど……
「来夢さん、この街の車や工事車輌も全部AIなの?」
神谷さんもそう来夢に訊いている。
「そうよ! 工事車輌についてもみんなAIだよ。だから二十四時間工事も行われている」
なるほど、そうする事で工期とかも短くする事が出来るのかな、それに工事にしても運転にしてもAIだから我先にというのが無いから事故も起きないんだろう。
「さあ、着いたよ!」
僕達は警備局の中へ入って行くと、来夢の叔父さん冬野猛局長が出迎えてくれた。
「叔父さん連れて来たよ」
「皆さん、ようこそ二十三世紀へ」
叔父さんはそう言って挨拶したけどみんなは、物珍しい事があってそっちに興味がいってしまったようだ……
響の友達、希美の友達も一緒に二十三世紀に来てしまった。みんな観光気分なんだけど……




