33 調査
誠司と未玖に舞龍が接触したようだ! 誠司からは、直接話を訊いたが、未玖はスカイパークでの出来事を覚えていた。何故忘却剤が効いてないのか……
どうも舞龍は、二十一世紀の人達と接触しているようだ。誠司さんは、間違いなく舞龍が、未玖さんにもおそらく舞龍が接触していると思われる。しかし、接触して、未来の便利グッツを配って何をしたいんだか……
「響君、この件は私が調査するから」
来夢がそう言っているけど……
「どうやって調査するんですか?」
「そんなの簡単だよ! タイムマシンで時代を遡れば良いんだから」
「それなら僕も行きますよ」
「それは駄目!」
「何故ですか?」
「過去に戻れば、その時代の響君がいるから、鉢合わせしたらややこしくなるよ」
「でも、過去には何度か行ってますよね!」
「うん、まだ響君が存在していない時代にね」
まあ、確かに過去の自分に逢ったら面倒臭いのは解る。
「解りました」
「あら、やけに素直ね」
「僕も、別の時代の僕に逢うのはちょっと面倒に思えただけです」
すると来夢は優しく微笑んで僕を見た。
「まあ、こっちの方は私にまかせて! 君は郁子先生が早く未来に来るように説得してね」
説得ね…… 母さんも大学の爆発事件や警備部長との再会で様子が変なんだよな。
僕は母さんに電話をしてみることにした。
「響? どうしたの」
「母さん、ちょっと話があるんだけど……」
「なあに? あなたがそんな事を言うなんて珍しいわね」
「うん…… それで今からホテルに行っても良いかな?」
「ええ、それは構わないけど、何時くらいに来るの?」
「今からすぐに」
「ああ、あれを使うのね」
「うん」
母さんもあれの便利さがよく解ったようだ。
「解ったわ! じゃあ待ってるから」
僕は来夢のタイムマシンから母さんが泊まっているホテルの部屋へ壁を開いて移動した。
「響、いらっしゃい! コーヒーで良い」
「うん」
「ブラックよね」
「うん」
母さんは僕が来た事で何か警戒しているようだ。
「母さんは警備部長とは二十年前くらいに出会ったの?」
「えっ、ええ……」
「その時は未来人とは思って無かったんだ」
「どうしたの」
母さんは何かを隠していると思う……
「ねえ、研究の事なんだけど……」
「ちゃんとやるわよ! 変な子ね」
「うん…… それで僕もちょっと手伝いたいかなと思って」
母さんは僕の顔を見て、クスッと笑ったあと……
「もう、どうせ来夢に早く連れて来るように頼まれたんでしょう」
はあ…… その辺はやっぱり鋭いな!
「ねえ響、二十三世紀はガソリンとかの化石燃料は本当に使ってないの?」
「うん、母さんも警備局へ行く時に乗ったJD3Sだけど」
「JD3S? ああ、AIで動いている車ね」
「うん、あれは水素で動いている」
「燃料はいつ、何処で入れるの?」
「よく判らないけど、空き時間に自動で給油に行ってるようだよ!」
「燃料が水素なら給油はちょっと可笑しいんじゃない」
まあ、確かに表現としては可笑しかったか!
「じゃあなんて言うの?」
「そうね、液体水素のはずだから充填って言うのかな」
「充填ね……」
まあ、そんな事より訊きたい事がまだある。
「ねえ、父さんと一緒になったのはいつ頃なの」
「急にどうしたの?」
この質問に母さんはちょっと動揺してるかな……
「ちょっとね」
「あなたも希美さんのような素敵な人がいるから気になるのね」
「いや、希美さんとは、まだ付き合ってないから」
「まだね!」
母さんはニコッと笑って僕を見ている。いかん、いかん、母さんのペースに巻き込まれてしまった。
「響、来夢さんはやめときなさいよ!」
「当たり前だろう! 未来人を彼女に出来る訳ないだろう」
それに、来夢は希美さんより年上だと思うから……
『ピピピッ』
あっ、電話だ!
「もしもし」
『響君、未玖さんに接触した奴が解ったよ』
ハッ、来夢だった……
「だ、誰ですか?」
『山田颯太だよ!』
「えっ、何故あいつが」
『私が隠れて話を聞いていたんだけど、未玖は颯太のお婆ちゃんみたいだよ!』
えっ、お婆ちゃんって? 未玖さんはまだ、あんなに若いのに……
「あの、どういう事ですか?」
『だから、未玖さんの子孫が山田颯太なんだよ』
なんだよ、ややこしい言い方しやがって…… いや、まてよ、それじゃ……
「そ、それじゃ、舞龍は誠司さんの子孫って事ですか?」
『そこは判らないけど、舞龍が誠司君に接触していたのは間違いないみたい』
せ、誠司君……? 意外と来夢って馴れ馴れしいな…… いや、そうじゃなくて、まさかと思うけど、誠司さんと舞龍が繋がっているとは思えない。
「響、電話誰から?」
母さんは来夢からの電話だと解ったみたいだ。
「あっ、来夢さんだけど……」
「ちょっと変わってくれる?」
まあ、仕方がない母さんは言い出したら聞かない人だから……
「来夢さん、母さんが話があるみたいだから変わるから」
『えっ、うん』
僕はスマホを母さんに渡した。
「あっ、来夢! 明日未来へ行くから」
えっ、母さん明日行くのか……
「えっ! 隠しごとって何のこと?」
そう、母さんは何か僕達に隠している。何の事かは判らないけど、来夢も意外とストレートに訊くんだな。
「うん、私はそのつもりだけど」
来夢の奴、何を訊いているんだろう……
「えっ、響?」
えっ、僕?
「解った! 訊いてみるね」
そう、話が終わった後、母さんは、僕のスマホを返してくれた。
「母さん、隠し事ってなに?」
僕がそう訊いたら……
「隠し事なんてしてないわよ!」
そう言って母さんは、微笑んだ。
「本当、来夢もあなたも変な子ね」
結局、この日も母さんから聞き出す事は出来なかった。
翌日、僕の部屋に来夢が壁を開いてやって来た。
「おはよう、響君!」
もう、この不思議な光景は日常になってしまった。
「どうしたんですか?」
「ねえ、今から二十年前に行ってみない?」
二十年前…… 母さんが警備部長と逢った頃だ。
「うん…… でも、今日は母さんが未来へ行く日じゃ」
「うん、だから郁子先生を未来へ連れて行った後、迎えに来るから」
「うん……」
僕は嫌な気がした。
「来夢さん、知らない方が良い事もあるんじゃないかな……」
「響君らしくないね、気にならないの?」
それは気になる…… しかし、母さんが話したく無い事を無理に調べなくても……
「別に僕はいいです」
「本当に? 先生は、絶対何か隠しているよ! 私や響君に関係がある事を」
来夢や僕に関係がある事……
「それって何ですか?」
「だから調べに行くんじゃない!」
うーん、本当に調べて良いのか……
『ジジジー……』
なんだ、この音は?
「響、これってちょっと可笑しくない?」
母さんはファスナーを少し開け頭だけ出して話し掛けて来た。壁に母さんの頭だけが生えたような、凄く滑稽だ!
「母さん、何やってるの?」
「いや、これ以上開かないのよ」
「先生、これファスナーが噛んでるよ!」
えっと、これって何に噛むんだろうか? 普通のファスナーだったら服の生地に噛んで動きが悪くなる事はあるけど……
「先生、一度顔を引っ込めて」
来夢にそう言われて母さんは一度、ホテル側へ引っ込み、来夢が力技でファスナーの噛んだ部分を引っ張ってはずしている。これもまた微妙な光景だ! こんなとこを人に見られたら……
『ジジジッバッ!』
「はあ、外れた!」
来夢は再び動くようになったファスナーを開けたり閉めたりしてからもう一度大きく開いた。
「先生、治ったよ!」
「あっ、ありがとう……」
そう言って、母さんが僕の部屋へ入って来た。
「先生、それじゃタイムマシンへ行くよ!」
「はい、はい、響も来るんでしょう」
「あっ、僕は塾に行かないと……」
「えっ、塾に行くの?」
「いや、体験で教え方の上手い先生が来るらしいから、ちょっとね……」
「あら珍しい、あなたが塾なんて!」
「まあ、一応受験生だから」
と嘘をついた。
「まあ、いいわ。それじゃ行ってきます」
「うん」
僕は、母さんと来夢を見送った。
いや、本当にこれで良かったのか……
その数分後、また壁が開いた。
「倉橋、朝ごはん食べた?」
希美さんが入って来た。
「どうしたんですか」
「うん、朝ごはんまだなら一緒にどうかなと思って……」
そう言いながら皿にサンドイッチをラップで包んで持って来ていた。
「あっ、はい」
僕がそう返事をすると、希美さんは僕を見ながら微笑んでくれた。
はあ、女神様の微笑み……
僕は希美さんとちょっと遅めの朝食を食べる。希美さんのサンドイッチと僕が淹れたコーヒーだ。
「美味しいですね。シャキシャキのレタスとベーコンは良いです」
「ハムとタルタルもあるからね!」
「はい」
うん、やっぱり希美さんと一緒にいると楽しい。
その時、また壁が開いた!
「響君、迎えに来たよ!」
来夢がそう言いながら入って来たけど、彼女の顔が曇った。
「あっ希美、来てたんだ!」
「何処かに行くの?」
まあ、そうなるよな……
「えっと……」
「希美さんも一緒に行きませんか?」
「ちょっと響君!」
「別に良いだろう」
「うん……」
「それで何処に行くんですか」
「二十年前の城南市なんだけど」
来夢が簡単に説明をした。
「それって、響君のお母さんを調べに行くの」
そうか、希美さんも気付いていたんだ……
「うん……」
「私も行きたい!」
希美さん…… 僕は…… つい希美さんを見つめてしまった。
「もう、解ったわよ!」
僕達三人は来夢のタイムマシンで二十年前の城南市へ向かった。
響の母を調査するため二十年前の城南市へ向かった三人だが……




