32 接触
お待たせしました第32話を更新しました。
響の母はその昔、来夢と神谷警備部長の二人と逢った事があるようだった。
僕達は、来夢のタイムマシンで二十一世紀のいつもの山中に戻って来た。
「じゃあな、来夢さん」
「あっ、響君……」
来夢に呼び止められ、振り返り来夢を見たが……
「あっ、ううん、やっぱりいいわ」
えっ、いいわ、って来夢が声を掛けたんじゃ…… でも、来夢は珍しく下向き加減でしおらしくしている。こういうのを見ると可愛いと思えるんだけど。
「えっと……?」
「ううん、ごめんね」
そう言われ不本意ではあるが、僕は部屋へ戻って来た。
「倉橋、私も帰るね!」
何だか希美さんも余所余所しい感じがするんだけど……
「希美さん、送りますよ」
僕はそう言ったけど、彼女は指で摘んだファスナーを揺らしながら……
「大丈夫! ありがとう」
そう言って、僕を見て微笑んだ後、壁を開いて戻って行った。僕の思い違いだったかな。
「ねえ響、それって何処へでも行けるの?」
母さんはファスナーの事は知らなかったのか……
「母さんは来夢さんからもらってないの?」
「もらってないよ! ねえ、それって何処で買えるの?」
いや、多分市販はされてないんじゃないかな……
「今度来夢に訊いたら」
「うん…… ねえ、それ貸してくれない」
「良いけど、どうするの?」
「ホテルに戻るのよ!」
ああ、なるほどね…… 僕は母さんにファスナーをひとつだけ手渡した。
「母さん、使う時は気をつけてね!」
「えっ、どうして?」
母さんは、そう訊きながら壁を開いていた。開いた壁の先にはホテルのフロントが見えて、何人かの人がこっちを見て驚いていた。
「ちょっと何してんだよ!」
僕は急いで壁を閉じた。
「いきなり壁が開いて人が出て来たら知らない人はびっくりするだろう! それに宇宙人とか地球外生命体とか勘違いされたら大問題になるから」
「じゃあ、どうしたら良いの?」
「部屋があるだろう」
「まあ、そうだけど…… フロントにも寄りたいから」
「フロントには一度部屋に行ってからにしてください」
母さんは研究者なんだからそれくらい解る筈なのに……
「響、警備部長さんとは何か話した事はある?」
「えっ、まあ、未来の街のこととか世間話程度なら」
「そう……」
「母さん、警備部長とも前に逢った事あるんだよね」
「えっ、うん…… まあね!」
やっぱり、何処となく可笑しいよな……
「じゃあね!」
そう言って母さんは壁を開いてホテルの自室へ戻って行った。
私、冬野希美は部屋に戻って来ました。倉橋のお母さんは警備部長さんと逢った後、ちょっと様子が変わった気がしました。来夢さんだけでなく警備部長さんにも逢った事があったみたいでしたけど、でもその時は未来の人とは思って無かったようでしたけど……
あっ、未玖からメールが入っていた。
『希美、大学の爆発騒ぎはスカイパークのUFOと何か関係があるの?』
驚きのメッセージが入っていた。えっと、スカイパークのUFO! あれは忘却剤を使って記憶を消した事に…… 私は未玖に電話をした。
『もしもし希美、どうしたの?』
「未玖、メールに書いていたUFOってなに?」
私は様子を見ようと、そう訊いてみた。
『UFOだよ! スカイパークで見たでしょう』
忘却剤が効いてないのか、ひょっとして胡桃さんのガムが間違って渡されていた……
「未玖、何言ってるの? UFOとか見てないよ! スカイパークにいる時に未玖は見かけたの?」
私は知らない振りをしながら未玖に訊いた。
『そんなに焦らないでよ、そうか、希美は知らないんだね! それなら別に良いんだけど、あまり関わらない方が良いよ』
うーん、知らない振りはしたけど、あんなに低空でUFOが飛んでいて判らないは可笑しいかな……
「だから、何のこと?」
『ううん、知らないなら良いの! じゃあね』
私は怖くなりました。知らないはずの私の友達が、こんな事を言うなんて…… この後私は、胡桃さんに連絡しました。
『希美、どうかしたの?』
「胡桃さん、私の友達、未玖がUFOを知ってるの!」
『希美、どういう事?』
「スカイパークのUFO騒動、忘却剤を散布したんですよね!」
『うん』
「あの時、私達以外にガムを渡したでしょう」
『落ち着いて、忘却防止のガムは希美と響君の分の二つしか無かったんだから』
それじゃ未玖は、他の誰かからガムをもらっていた?
『希美の友達なんだよね』
「うん」
『解った、様子を見ていて!』
「うん、解った……」
とは言ったものの……
僕は明奈ちゃんの家庭教師に来ている。
「倉橋さん、お兄ちゃんが変な女の人と付き合っているみたいなんだけど…… 知ってる?」
「明奈ちゃん、今はテスト中です」
「はーい……」
とは言ったものの、変な女の人って…… まあ、今はテスト中だから終わった後に話を訊こう。どうせ、明奈ちゃんから話してくれるとは思うけど。
数分後!
「倉橋さん、終わりました」
えっ、もう終わったの?
「明奈ちゃん、あまりにも早かったと思うんだけど」
「大丈夫! 採点してみて」
僕は、速やかに採点をしたけど……
「全問正解!」
「やった! 倉橋さんのおかげだね」
いや、これは僕のおかげではない。これは、彼女の実力だと思う。
「明奈ちゃん、このまま行けば悠秀館高校にいけるんじゃないかな」
僕がそう言ったけど……
「でも、あそこは全寮制の学校でしょう! そんな窮屈なところは嫌です」
まあ、確かに、僕も母さんに言われた時は、あんな刑務所みたいなところは嫌だと似たような事を言ったかな。
「まあ、そうだけどあそこに行けば、いろんな大学へ行けるかも知れないよ」
「別に北山大学で充分ですよ! だって倉橋さんが四年の時、私が入学出来るから一緒にキャンパスを歩けますよね」
やっぱり、そういう企みがあったか……
「あっ、それとお兄ちゃんが付き合っているおばさんの事なんだけど!」
「誰が付き合っているって!」
あっ、誠司さんが怖い顔をして明奈ちゃんの部屋へ来ました。
「もう、お兄ちゃん勝手に入って来ないで!」
「勝手な事を言ってて何言ってるんだ!」
まあ、お互いの言い分は解るけど……
「誠司さん、何かあったんですか?」
「うん、知らないおばさんから声を掛けられてな……」
知らないおばさん?
「どんな人なんですか?」
「濁声のおばさんだ、俺は全然知らないんだが、おばさんは知ってるような口振りなんだよ」
濁声のおばさん! まさか、舞龍?
「その人は、誠司さんに何かしたんですか?」
僕がそう訊いたら誠司さんはびっくりしたように……
「いや、何もされてないよ。ただ、この箱をもらったんだが……」
箱? どういう事なんだろう…… 僕は、誠司さんから箱を受け取り開いて見た。
「何だこりゃ…… チャックのつまみか? それにメガネ? これって伊達だな。こっちはガムかな…… ゴミ箱だな」
まあ、知らない人からすればゴミだけど、僕にしては宝箱だ!
「誠司さん、これうちのゴミと一緒に捨てときますよ!」
つい、言ってしまったけど…… 変に思われてないかな。
「悪いけど頼む」
「はい」
そう言って、その箱を受け取りました。
「でも、なんでそのおばさんはゴミをくれたんだろう? しかも箱に入れて」
さっきからおばさんと連呼してるけど、来夢と同じ歳だから誠司さんと同じかひとつ上くらいなんだけどな……
「捨てるのが面倒だったんだろう」
「誠司さん、僕はこれで帰ります」
「ああ、気をつけて帰れよ」
「倉橋さんまたね!」
鷹島兄妹に見送られ僕は家の外に出た。まずはこれを来夢のところに持って行かないとだな。
『響君、それって舞龍からなの?』
えっ、来夢?
「来夢、いるのか?」
『それ、アパートへ持って来て』
「あっ、うん…… どうして声が」
『良いから早く戻って来て!」
僕はどうなっているのか…… とにかく近くの塀にファスナーを取り付け壁を開いてアパートへ戻った。
そこには来夢と希美さんがいた。
「これは、どういう事?」
「響君、さっきの箱を見せて」
僕は、誠司さんからもらった箱を見せた。
「中に入っているのはファスナーと忘却防止ガム、それと催眠メガネだよな」
「うん、これ誰からもらったって?」
「濁声のおばさんって言ってたから、舞龍だと思う」
「それじゃ、未玖も舞龍からもらったのかな?」
希美さんがそんな事を…… ん! 未玖? 未玖って希美さんの友達のあの人……
「その可能性は高いけど、何故そんな事をしたのか、だよね」
「あの、何があったんですか?」
どうも、よくわからない。未玖さんに何かあったのか?
「響君、あなたの先輩に舞龍が接触したようだけど、希美の友達の美玖にも接触したようなんだよ!」
えっ、どうしてそんな事を…… 一体、あいつらは何を考えているのか、どういうつもりなのか?
希美の友達未玖と響の先輩誠司、この二人も舞龍と接触があったようだったのだが……




