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来孫  作者: 赤坂秀一
第三章 秘密
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31 再び未来へ

お待たせしました第31話を更新しました。


その昔、来夢と響の母郁子は友人だったようだ。

 母さんと来夢(らいむ)は久々の再会となった。


「あれから25年経っているのに来夢は若いままなのね! 何か良い美容化粧品とかあるの?」


郁子(いくこ)先生、私は四、五年振りなんだけど」


 郁子先生って母さんの事、名前で呼んでいたのか…… しかし、まあそういう事だよね…… 僕も来夢に言われるまでは解らなかったから。


「えっ、どういう事?」


「四、五年前に私は二十世紀にタイムトリップして、その時に郁子先生と逢ったの! 先生はそれから二十五年歳を重ねたと思うけど、私は二十年時を超えた(・・・)という事なんだけどね!」


 まあ、なんともややこしい話だ。


「あら、そうだったのね、なんだか羨ましい話ね! それで未来にはいつまでも若くて綺麗になる美容化粧品はあるの?」


 いや、そこまで都合の良いのは無いと僕は思う。


「えっと、無い事はないけど、未来に来て試してもらった方が良いかもね」


 あるのか……


「あっ、それだったら私も欲しいです」


 希美(のぞみ)さんまで…… いつの時代も女性は若くて綺麗でありたいようです。というか、本題はそこじゃない!


「母さん、研究を未来でやろうという話なんだけど」


「あっ、そうだったわね!」


「郁子先生、もう研究は辞めちゃうの?」


「ううん、辞めないよ! でも、一度横浜に帰って仕切り直そうと思って……」


「じゃあ、何故ここに来たの?」


「だって来夢が呼んだんでしょう! それに未来には興味があってね、それに未来のCO2の量とか主要エネルギーとかも見てみたいから」


 母さんは二十三世紀に行ってみたいという好奇心はあるようだ。やっぱりそこは研究者だな。


「解ったわ! 先生、一応警備局長には許可をもらっているからいつでも行けるわよ」


「それじゃ今からでも行ける?」


 えっ、今から行くの?


「はい、そう言うと思ってました」


 来夢は母さんの思っている事が手に取るようにわかるようだ。


 そういう事で、僕達は母さんの希望で二十三世紀へタイムトリップする事になった。


 タイムマシンは来夢の操縦でゆっくり上昇した後に右から左へゆっくり横に揺れたかと思ったらいつの間にか時空空間へ入っていた。


「意外と揺れないのね」


「郁子先生、二世記先の未来の乗り物ですよ! 事故とかない限り揺れません」


「事故とかあるの?」


「可能性の問題ね」


 母さんは本当に初めてなんだろうか、凄く楽しんでいるようなんだけど……


 暫くすると、一度軽く左右に揺れて機体は止まった。


「郁子先生、着いたよ」


 そう言うと来夢は、近くの駐機場を探して着陸した。そこには、僕のお気に入りのJD3Sと呼ばれる未来の車が停まっており、その側には来夢の叔父さん警備局長が迎えに来ていた。来夢はそこにタイムマシンを駐機した。


倉橋(くらはし)先生、初めまして時空管理警備局局長の冬野猛(ふゆのたける)です。来夢がお世話になってます」


「いえ、こちらこそお世話になります」


 お互い堅苦しい挨拶です。


「未来ではUFOのようなタイムマシンが結構飛んでいるのね」


「はい、二十一世紀でいうところの飛行機みたいなものです。


 飛行機ね…… 確かにあれだと国内や海外、それに未来や過去にも行ける訳だから便利だと思う。


「先生、警備局へご案内します」


「ありがとうございます」


 僕達はJD3Sに乗り警備局へ行きます。


「響、この車、誰が運転してるの?」


「母さん、これはAIで動いているんだよ」


「うふふ」


 来夢に鼻で笑われてしまった。僕も初めて来たときは来夢にそう教えてもらったから。希美さんは来夢の横で借りて来た猫みたいにおとなしいです。


「AI? 自動運転なの?」


「そうだよ」


 母さんのこの反応は面白かった。何でも科学的に物事を考える人なので、この状況が受け入れられないのだろうと思う。


「先生、自動運転なんて珍しくないでしょう。二十一世紀でもどこかの車メーカーが作っていたでしょう」


 確かにそうだけど、あれとは全然別物だ!


「あら、そうなの? 響、知ってる?」


「知ってるけど、全然別物だよ」


 まあ、あれから自動運転技術が始まり、二十三世紀に至っているんだろうけど。


「着きました。どうぞ」


 僕と希美さんが、ここへ来たのは三度目だ。


「母さん、何してるの?」


「えっ、CO2の濃度を測ってるの」


 母さんはバッグの中から検知器を出してスイッチをONにしていた。


「先生、これで常に検知出来ますよ!」


 来夢のスマホは常に測定していた。


「あれ、私の測定器は壊れているのかしら数値が上がらないんだけど」


「私のスマホでは294ppmです」


 来夢がそう言ったのを聞いて母さんは驚いていた。


「二十一世紀では410ppmあるのに、未来ではそんなに少ないの?」


 母さんの測定器の数値が上がらない訳だ。しかし、現代と未来でこんなに違うのか、いかに温室効果ガスが現代で排出されているかということなのだが……


「私、前から思っていたんですけど、こっちの方が空気が美味しい気がしたんですよね」


 希美さんにそう言われて確かに前からそんな気はしていた。


「さあ、中へどうぞ」


 僕達は警備局の中へ入った。


「それにしても何故CO2の濃度が少ないの?」


 僕も最初にここへ来た時にJD5Sの燃料について疑問に思った。


「だって、ガソリンとかの化石燃料を使ってないから」


「えっ、それじゃここの主要エネルギーは何なの?」


 まあ、そうなるよね……


「それは水素です」


 来夢が自慢気にそう言っている。


「えっ、水素?」


「二十一世紀にも水素自動車はあったと思うけど」


 来夢ってそういう事は詳しいんだよな、二十一世紀マニアなのかな……


「確かにあるけど、水素で発電させた電気でモーターを回していたと思うけど」


「母さん、T社に水素エンジンの車があったと思う。市販化はされてないかも知れないけど」


 確か、レース用の車じゃなかったかな。


「郁子先生、車だけじゃないよ、農産物の生産や魚介の養殖に畜産業にも水素は使われているんだよ」


「合成燃料は使われていないの?」


「合成燃料は、今は無いんじゃないかな! 業務用とか工場はHHPを使うことが多いから」


「HHP? 何それ?」


 そう言えば、前に来夢が言ってたと思うけど、何だっけ?


「先生、水素ヒートポンプです。状況にもよるけど五馬力から十馬力くらいの水素エンジンを回して空調とかに利用するんです。二十一世紀にもGHPとかKHPとかあったと思いますけど」


 二十一世紀にもそんなのがあったんだ。


「それじゃ、私が研究している合成燃料は役に立って無いじゃない!」


「先生、それは2100年くらいまで利用されていたんです」


「どういう事?」


「2050年までにカーボンニュートラルを実現するために合成燃料は必要だったんです」


 来夢が言うには、カーボンニュートラルつまり、排出したCO2は吸収または除去しなければならない。だからCO2と水素を使って合成燃料を作り、ガソリンエンジンなどの代替え燃料として使っていた。


 しかし、どうしても生産効率や生産コストが悪いため徐々に無くなって行ったらしい。


 しかも、燃料に水素を使えば温室効果ガスは実質ゼロなので2100年くらいで合成燃料の生産は無くなったようだ。


「先生の研究で生産コストを一時的に抑える事が出来たから2100年くらいまで化石燃料から水素燃料へ変わるまで多くの人達に利用されたの」


「それはどうやってコストを抑えたの?」


 いや、それは母さんが研究したんじゃ?


「そこまでは、私は知らないわよ!」


 まあ、そういう事なんだろうけどね……


「あっ、お客さんでしたか」


「神谷部長! 病院にいなくて大丈夫なんですか」


「うん、かなり良くなったよ。あっ、こちらの方は?」


「こちらは響君のお母さんです」


 来夢がそう紹介してくれたけど……


「私は時空管理警備局警備部長の神谷秀信(かみやひでのぶ)です。あっ、あなたはもしかして、倉橋郁子(くらはしいくこ)さんですか?」


 えっ、警備部長と母さんが知り合い?


「えっ、あの…… はい」


「やっぱり、20年くらい前に二十一世紀でお逢いした」


「あっ、はい…… ご無沙汰しています」


 母さんは、警備部長とも逢った事があったのか……


「未来の方だったんですね」


「はい……」


 でも、この二人なんだか余所余所しいけど。


「郁子先生、発電所かどこか見学してみる?」


「うーん、でもホテルに戻らないと論文も書かないといけないし」


 母さんは相変わらず忙しそうだ。


「来夢さん、僕も帰るよ! 明日はバイトもあるから」


「希美は?」


 来夢がそう訊いてるけど……


「倉橋が帰るなら私も帰るよ」


 まあ、一人残るという選択肢はないだろう。


「折角来たんだから今後の研究材料を見ていけば良いのに」


 まあ、想定外の出来事がありすぎて何をして良いのか母さんも解らないんだろうと思う。


「じゃあ仕方がないわね…… 叔父さん、私も二十一世紀に戻るね!」


 まあ、そういう事になるかな…… 来夢のタイムマシンを使う訳だから、僕達だけで戻る訳にもいかない。たとえ、僕や希美さんが来夢のタイムマシンを操作出来るとしても、それは無理な話だ。


 僕達は来夢のタイムマシンへ戻って来た。


「郁子先生、本当に良いの? 化粧品は?」


「また今度にするわ! ごめんね来夢」


 母さん、警備部長と逢ってからちょっと可笑しいんだよな……


「響君、私疲れたから操作よろしくね!」


「はい、はい」


 まったく…… そんな事だろうと思った。母さんが戻ると言った時から来夢の気分がすぐれないのが解ったから。


「響、あなた操作出来るの?」


「うん、簡単だよ! 設定さえすればあとはAIによる自動運転だから」


「へえ、未来って退屈になるくらい便利なのね」


 まあ母さんにしたらそうだろうね、車の運転だって横に乗るより運転するのが好きな人だから……

未来で今後の研究をという事だったが、警備部長と逢った郁子は何処となく様子が可笑しい、彼とも以前に逢った事がありそうなのだが……

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