↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪女の復讐に祝福はいらない  作者: ピケ
第一章 灰に帰す矜持

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
9/48

第九話 絶望の覚醒

まるで、ディエラ(私)の好みに合わせて品を選んだとでも言うような口ぶりだった。


背筋を冷たいものが伝う。


ディエラの表情から、一瞬些末な感情までもが消失した。


ディエラは怯えているのではない。自分しか触れていないはずの場所へ、知らぬ間に他人の手が入り込んでいた。その事象を目の当たりにした不快感と、それを許した自分への深い失望だった。


内に抱える憎悪を、人前でその欠片も出したことは無い。


癇癪も、悪態も、彼らの知るディエラの範囲に収めてきた。計画を紙へ残すこともせず、使用人の前では独り言さえ慎んでいた。


何も知らない、愚かな娘。


そう思わせたまま、全てを奪うはずだった。


それなのに。


「……どうして、」


ディエラの口から小さく声が零れ落ちた。


自分の口から発せられたものだと気づいても、もう遅い。


僅かに崩れたディエラの表情の機微を見逃さず、男の目が愉しげに細まった。


「”どうして”?」


ディエラの言葉を味わうように繰り返す。意図を探るわけでも理解が出来ないわけでもない。ディエラに聞かせるために繰り返し発された言葉だった。


「聞きたい?」


ディエラは答えなかった。


男は壁に肩を預け直し、わざとらしく顔を傾ける。


「君がどうしてもって言うなら、答えてあげなくもないけど」


ディエラは自分の胃の奥がゆっくりと冷えていくの感じた。


欲しいものがあるなら、相応の態度を見せろ。


直接そう言ったわけはない。

だが、答えをディエラの手が届かない範囲で自分の手元に置き、ディエラが求めるのを待つその顔とそれを指し示すように上がった眉は、ディエラの神経を逆撫でるのに十分すぎる材料だった。


この男に、願えと?

私の憎悪を許可なく除き、土足で踏み散らかした上に、その終わらせ方まで決めた相手に?


怒りは極限を超えると冷静さを帯びる。この現象を体験するのは二(・)度(・)目(・)だった。


ディエラは、ゆっくりと男に向き直った。




「冗談でしょう」


声は低く、静かに響いた。その瞳や口元には余裕も怒りも笑みも無い。


「誰が、何をするって?」



そこに在るのは純粋で明確な殺意と圧倒的な支配者による気迫だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。