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デッドデッドデウス・エクス・マキナ・インダストリー  作者: 竜蔵寺 佑


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第6話 試練開始

「我の背中に乗れ」


「へ? 乗せてくれるの? やったぁー!」


「そのバイクとやでは我との移動では遅すぎる。案内はイフに任せる」


「あいよ、龍帝の旦那」


「振り落とされるなよ」


 突如、速度が上がった。上がる、上がる。体感では亜光速戦術兵装より早い。いや、もっとだ。光速よりも早い。次元を走っているんだ。


「おいおいおい、こりゃ凄ぇぜ! ルナ、次元を俺たちゃ移動しているぜ。計器計測の類いが今まで測定したことがない数値で一杯だぜ。本当に凄ぇぜ」


「うんうん、これが次元の中の景色なんだね。光の渦が沢山ある。風も強いね」


「その風はただの風では無い。時間が気体化したものだ。我から離れるとバラバラになるから注意せよ」


「はーい!」


 イフは興奮しながら測定を開始している。私もそうだ。眼では追い切れない程の綺麗な色彩豊かな景色が見られてテンションが上がる。上がらない人間なんていなんじゃないだろうか。それにしても、時間って気体になるんだね。不思議な感覚だ。風に質量がある感じ。


「むッ! 何か来るぞ」


「チッ、勘付いたか」


「右側面から、巨大な手が出現!!」


 禍々しい虹色の光を纏った右手らしきものが次元を突き抜けてきた。


「ルナ、反撃よろしくだぜ!」


「まっかせなさい!」


「小娘、我から離れるとバラバラになる。注意せよ」


「もっろもろ、まっかせなさい!」


 龍帝が深くため息をついた後に速度を上げた。虹彩を放つ右手はピッタリと右側面へ位置を離れずにいる。どういう理屈でこの次元移動に介入しているのかは正直さっぱりだけど、相手は敵というのはヒシヒシと伝わってくる。だって、この右手からは悪意しか感じられないからだ。


「ライブラリにアクセス、ウェポンストラテジーへアクセス許可申請」



『受理:対次元戦闘態勢へ移行。位相貫通弾《フェイズ・スルー・バレット》』



「撃て!!」


 連続して対次元用に特化した射撃攻撃を放つ。着弾、着弾、着弾。次元を移動中にライブラリにアクセスして学習させたから、次元移動中は常に改良が進む。この攻撃する瞬間でさえもだ。最初の一撃は軽く感じたのかもしれない。だが、2弾、3弾と着弾すればする程、ダメージは極大化する。巨大な右手が怯むような動きをした。


「良し! 効いている! 次だ!」



『次元断裂矢《ディメンション・スラッシャー》』



 次元が炸裂した。先程の上位互換の学習した応用戦略兵器。学習が加速し実戦データを得て更に加速して学習し応用に転じる。


「攻撃は最大の防御ってね、お前の攻撃することは私が許さない。この移動が完了する迄に片付けてやる!」


「次弾、装填完了。次!」



『受理:全ての並行世界で同時に着弾する因果収束弾《マルチバース・ロック》:移行完了』



「放てェ!!」


 標的が当たる未来を現在移動している次元から得られた全次元座標を逆算して未来を確定予知応用し平行世界を介して敵へ全弾直撃に成功した。攻撃と合わせて分析をしている。イフにバックアップで解析を進める。


「おう! ルナ、コイツの正体が分かったぜ! 天使だ」


「天使?! こんな形態の奴を見たことが無いぞ」


「ああ、ライブラリには少なくとも該当する存在は記録されていないが、敵さんの攻撃パターンとエネルギーパターンの波長から天使と同類と認識。識別クラスはレベル1だぜ」


「レベル1にしては、タフ過ぎないか?」


「ああ、これは俺の推測だが敵さんは次元で防御膜を張っているようで効きづらいという効果があるみたいだぜ」


「反則だな」


「ああ、反則級で間違いないぜ! これまでこの世界へ介入または侵入を図ろうとした存在をコイツらが迎撃していたんだろうなと邪推するぜ」


 なるほど、確かに言われてみればそうだ。この世界へ介入してくる存在が龍帝以外にもいた可能性は充分にある。しかも、愛国者たちがどういう理由で他の世界へ侵入を試みようとしたのかの意図はわからないが、この世界へ恨みを持っている存在は多いだろう。何故、今まで攻めて来なかったのか。


 それは攻める前に迎撃されていたという可能性が高いと判断した。私の推測もイフの推測も恐らく間違っていない。今回、龍帝が次元の中を移動して攻めて来られたのは、龍帝が強い存在であったということと、現在、右手しか敵は姿を見せてはいないがその理由にも恐らく龍帝の能力が関連している可能性が高い。


「命拾いしたな、不遜なルナよ」


「はんッ! レベル1程度の天使如き私の敵ではないわ」


「ルナ、まだ敵さん存命だぞ」


「しぶといな」


「ライブラリに申請」



『受理:次元世界の学習完了。世界法則《ワールドルール》の修正攻撃へ換装完了:概念剥離弾《コード・イレイザー》へ移行します』



「勝った」


 周囲の次元を書き換えて光の文字列へと収束させ発射したと同時に右手が吹き飛び、次元の道に大穴が空いた。その先に巨大な顔が見え貫通し損傷した天使がいた。なんて言う巨大さだ。


 天使の全身を含めると区画クラス規模の巨躯ということは見て取れた。私が放った砲撃で次元に大きな乱れが生じているため正確な巨躯の大きさまでは計測不可能だった。だが、敵が光の粒子になるのを確認し右手が追ってくることはなかったので消失を確認した。


「ルナ、よくやったな!」


「うん、次元移動での戦闘は初めてだったけど、これで今後はもっと戦いやすくなると思う」


「不遜なルナ、お前の強さは底が知れぬな」


「ふふ、伊達に愛国者と何十世紀も戦争していませんから」


「ふふ、掴まれ。次元空間を出るぞ」


 一瞬眩い白い光に包まれた後、一面に巨大な別の空間が見えた。先程いた空間とは違う。イフが周囲の索敵を開始。私も警戒を全方位で展開する。龍帝の目線の先に巨大な建造物が見えた。広大な闇と無音の空間に白く聳える巨塔が遙か天井まで届かんとしていた。この塔はきっと天井まで届いているのだろう。


「どうやら、敵さんはいないようだぜ」


「どうだ、我の次元移動の方が早かったであろう?」


「そうだね、確かにそうだね」


 私の移動では何年か、何十年掛かったかも知れないのをたった短い時間で移動することが出来た。もしかしたら、龍帝と一緒に移動していたら私たちの旅はもっと短縮されるのかもしれない。


 だが、次元移動には天使がいるということもわかった。今回はレベル1だが、レベル2以上の存在になると先程までのような戦闘は比較にはならないだろう。私も強くなる必要がある。


「塔が見えたぜ。敵の影は無い。だが、変だな」


「何が変なのだ、イフよ?」


「いやぁ、こういう神殿や巨塔には愛国者の門番がいるんだぜ。それがいないというのがちと気に掛かるってところか」


「門番とやらは先程の次元回廊での遭遇した奴ではないのか?」


「んにゃ、全くの別モノだぜ。龍帝さんの言う次元回廊で遭遇した存在というのは、攻勢防壁のようなある種の抗体反応だ。神殿の門番というのは、抗体反応というよりかは試練の類いに近いかもな」


「試練? 我の世界でもダンジョンという存在がいてな、モンスター等を討伐して試練をクリアするという仕組みがあった」


「へぇ、面白そうなところだね。だんじょんって」


「ダンジョンだ。小娘では我の知るダンジョンではちとどこまで通用するのかは見てみたいものだな」


「いつか全部終わったら連れて行ってよ! ダンジョンってところ」


「いいだろう。我の知る最高難易度のところへ連れて行ってやろう」


「やったぁー!」


「おいおい、龍帝さんそんな約束したら、お前さんのところの神が怒ったりしないのかい?」


「まぁ、怒るだろうな。だが、全て終わればそれくらいのことは大目に見てくれるだろう」


「そういうもんかい」


「そういうものだよ。さて、ここが神殿か。我が改めて索敵しよう」


「一応、私が索敵したけど門番らしきものはいなかったよ」


「そうかもしれない。だが、万全は期すべきだ」



『|呼吸の届くすべてを統べる龍帝の神気圏《ドラゴニック・オーラ・ドメイン》』



 龍帝がふぅと小さく息を吹くと白い息吹が広大な塔の空間を多い、恐らくだが塔全体を覆ったように見えた。これは私の知る索敵ではない。イフもわからないという。ライブラリによれば、異世界の魔法の一種の可能性が極めて高いと判断している。


「これが、魔法」


 キラキラした白い結晶が空間を舞っていた。


「うむ、敵が数体いるな」


「敵がいるってどういうこと?! 私の索敵には検知出来なかった」


「俺もだぜ、一体、何が起きているんだ。俺たちの索敵に問題があるってことか?!」


「いいや、貴様らの索敵は実に見事である。この世界の理であれば検知出来たであろう。我の息吹に反応したということは、この世界の理外から来ている存在ということになる。しかも、我と似た世界かまたは……」


 龍帝の言葉が少し濁った言い方になった。


「龍帝?」


「小娘、来るぞ。敵だ」


「索敵反応なんて無いぜ! どこから、いや、このエネルギーパターンは……」


「これが、この巨塔の試練か」


 索敵視野で補足した。数は2つ。人型と大型の四足歩行の獣型。生物らしい見た目をしているが、私が知っている生態系の生物とは一致しない。


 つまり、この巨塔内での独自に進化した生態系の可能性は秘めている。それだけの年月と歳月が経てばどの区画にも独自の文化や生態系はこれまでも幾度も見てきた。この巨塔も例外ではないということだ。

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