第3話 愛国者
黒と白の閃光が互いに直撃し合い巨大な雷光と轟音が空間と大地を揺らした。
「ルナ!」
「イフ!」
イフが咄嗟に周囲の素材を書き換えてシェルターを構築していた。
「ルナ、リミッターを一時解除した時は焦ったぜ。それ程か、あのドラゴンは……」
「うん、多分、愛国者並だと思うよ。あれは脅威だ。ライブラリに道理で信仰や伝承が残るわけだ。あれ程の存在が平行世界の向こう側に居るなんて脅威でしかないよ」
「今は良く生きた。それだけで今はいい。あのドラゴンは今の俺たちが死力を尽くしたところでどうにかなる相手じゃないと思うが」
「いや、なるね。あのドラゴンは脅威だけど、会話が出来る」
「会話だって? あのドラゴンが、脅威の塊みたいなのがか? さっきのやり取りを見て聞いていたがルナのことを羽虫程度しかアイツは気にしていなかったぞ」
「そう、そうそれだよ、イフ!」
「な、なんだってんだ急に」
「私たちは一心同体でしょ。なら、私の考えがわかるでしょ」
イフは困ったような顔のアイコンをしていた。
「いやいや、今の問題は生き残る方法を考えた方がいいと俺は思うぜ」
「イフは正しいよ。そう、生き残るという選択も出来る方法として考えるべきだ。だけど、今はあのドラゴンを躾けることが何よりも最優先されるべきだと私は思うよ」
「言わずもがな、あのドラゴンとやらがどんな存在であれ、多元嵐の中で自由に移動でき、そして放置すれば愛国者たちと並ぶ脅威にもなり得ると。そして、まだこの基底世界の理や法則を理解していないうちの今なら勝機があるという意味だろ?」
「そういうこと」
「――はぁ、たっくよぉ、たった数時間前に数十年ぶりに目覚めたばかりなのに、ルナは相変わらずだな。この感じは目覚める前へ完全に戻ったて感じだぜ」
「そういうこと。ライブラリのウェポンアクセス権を一部解除するね」
「了解、マム」
「よろしく、サー」
轟炎が漆黒染色で空間を染め上げる。中央に聳え立つは巨大な漆黒の龍。眼光は鋭く黄金の虹彩が鮮やかに鈍く光る。ドラゴン全体が重金属生命体ではないかと思う位には圧倒的な質量を色だけも肌で感じることが出来た。
そして、ドラゴンの呼吸の動きだけで感情を萎縮させる効果があるようで実際、あらゆるバイタル測量に影響が出ていたので、イフと連携しながら精神系へのデバフ効果へ適応し書き換え更新した。こういう新しい発見もある。
「グルゥゥゥゥ……」
ドラゴンが喉を鳴らす。ただの生理現象か、反響を狙った索敵か。私が先程放った銃弾はブレスと相殺してドラゴン本体へは全くダメージが通ってないようだ。想定はしていたが、あのブレスはそれ程の威力ということだ。私が放った銃弾は愛国者にも通じる攻撃の一つだ。
それを相殺するブレスとなると、あのドラゴン単体で愛国者が黙っているわけがない。もしかしたら、既に察知されている可能性はゼロではないが長引かせるのは最適ではない。可能な限り、短時間でドラゴン攻略が出来ればと思っている。
「小娘ぇ、どこだ!」
「ここだよ、おっきなトカゲさん」
声を掛けると同時に先程、重力体結晶をベースにした新型拳銃で光線を射出した。腹部を直撃し爆煌した。イフの威力測定結果が脳内と網膜処理で解析結果として威力の算定がされる。
直撃の度合いは高強度。超威力。超貫通に該当。爆炎を透過し目視にて網膜処理で直撃した腹部の損傷箇所の程度をさらに解析、結果は内臓までは届いてはいないものの外表皮の硬質を貫通したという成果を得た。これは更にこの拳銃を改良するためのデータとして材料化される。
「貴様ァ! 我に傷をも残すか」
「そうだよ、私はあなたに攻撃が通ると証明した。これは事実だ」
「たかだか、この程度の傷程度で我が弱るとでも? 否、かすり傷程度で我を倒すことは不可能だ」
『深淵の抱擁』
損傷した箇所が瞬時に完治した。イフが使用する治療と修復とは異なる系統だが、同程度もしくはそれ以上の回復速度かもしれない。全く異なる世界からこの基底世界に来たはずの存在なのに力が行使出来るということは、この世界の理を何かしらの力で理解し始めている。
「お前、何故、回復出来る!」
「小娘の羽虫如きに我が答えるとでも?」
不敵な笑みを浮かべると同時に予備動作無しで攻撃飛んで来た。大気の揺らぎを感知していたから避けられたが、その攻撃は大気の刃で大地に大きな裂け目を深く刻んでいた。
「あっぶね、おい黒トカゲ! 卑怯だぞ」
「ふむふむ、我に傷を与え、愚弄し、挑発をもする。そして、我の咆哮も裂創すらも回避するか。興味深いな小娘、名をなんて言う? 名を名乗るを許可しよう」
「名だ? いいよ。教えてあげる。私の名前はルナだよ。完全人にして愛国者を討たんとする存在」
「るな? ルナ、そうかルナというのか。我の名を知るが良い。我は理外世界から来た存在して龍帝を冠する龍帝オブリビオンであるぞ」
「ふーん、それじゃ、改めましてオブリビオン。何の為にここへ来たのかのかを教えてもらえるかのかな?」
「理外世界から来たと言っておるだろ? この世界を侵略に来た」
「侵略? あの人間を三人を配下にして? あなただけで?」
ライブラリにアクセスして、会話と同時進行で状況を把握と単語登録に関連または該当箇所、文献、論文、口述、メモ等を検索。イフがバックアップで平行並列してウェポンリストライブラリにアクセスから当該、オブリビオンの攻略に最適な武器の選定を実行中。
「該当あり。龍帝オブリビオン、あなたを攻略します」
「何を言うかと思えば、世迷い言を。小娘、いや、不遜なルナよ。我の最初の塵にしてくれようぞ」
「よーい、ドン!」
両手に大型対愛国者用戦略兵器のバスターライフルを顕現させ、足全体に亜光速戦術兵装を纏い、ドラゴンの後頭部まで瞬時に移動し射撃、射撃、射撃。ドラゴンは目線で反応は追いつくも咄嗟の反応に一歩遅れたように見えた。
直撃し、空間を覆う爆炎と衝撃波が大地を波立たせ天地の建造物が崩れ衝撃波で同時に吹き飛ぶ。吹き抜けになった構造物の上にも更に構造物がセンサーで目視出来た。
「次弾装填」
「甘い!」
四方から黒色の発光体が迫った。全方位のセンサー、計測、温度、エネルギー反応にも変化はなかった。突如、何も無かった空間から閃光が放たれた。いや、これは咆哮だ。全て回避する。亜光速戦術兵装では駄目だ。光速戦術兵装へ同時変更。オブリビオンの速度も光並か。質量が光の速さで動くというだけで戦略兵器を超える。この区画が持たない。目視思考全域で飛翔体の確認の位置を確認しライフルを解除。
「オブリビオン、見つけた!」
右手で尻尾を掴む。握力で大きな分厚い重金属製のような鱗が歪み食い込む。ドラゴンが身体を大きく揺らす。そして、全身が強烈な衝撃に包まれた。大地または天井か壁の何かに着弾したのだ。意識はある。イフとも途切れてない。尻尾から引き離されたようだ。自分を良く見ると地面にめり込んでいた。
全体の損傷を起き上がりながら確認。軽微。確認した箇所から自動修復開始、完了。これまでの戦闘データから戦術兵装を変更と更新。武装も対愛国者専用では不適合と判断。対龍帝専用へと新たに武装を構築開始、完了。
「ルナ、大丈夫か!」
「あいよ、大丈夫。リハビリには丁度良い眠気覚ましになったよ。イフはそのまま周囲の観測と私のバックアップをお願いね」
「無理すんなよ」
「大丈夫。あの龍帝とか言う存在は私を格下だと、自分がいた世界の存在と同列視している。だから、油断している。だから、攻略出来る。その理由に私をさっきの一撃で倒したと思っている。追撃して来ないのはそのためだ」
「ルナも油断するなよ」
「ああ、私は最初から油断なんてしていない」
景色が変わる。龍帝の顔面が眼の前にある。龍帝は言った。自分は理外世界から来たと。理の外の世界から来た。つまり、この世界の理についても理の外にいると思い込んでいる。この龍帝は強い。異なる意味で愛国者と同列の列強へ属する存在へと届くのかもしれない。それは可能性での話であり確定した今ではない。異界にはこういう存在が多くいるのだろうか。私や龍帝もこの世界にとっても単なる揺りかごの小さな世界での話なのかもしれない。だが、今は関係無い。この龍帝を一撃で攻略する。
『リミッターを一時全解除:龍帝戦略兵器兵装・雷鎚』
「ッ!」
右手で龍帝の顔面を殴り付けた。直撃し分厚い顔面を覆う鱗は波打つ衝撃波で龍帝の上半身全ての鱗を吹き飛ばし、そのまま大地へ粉塵を撒き散らしながら激突した。
『リミッターを再制限・完了』
「ふぅー、どうだ。龍帝。私の拳の味は美味いか」
「はッ……はは……これ程か、これ程の力か。我の居た退屈した世界とはまた異なる理か」
「何を言っているか、私にはよくわからいな。さて、回復したらもう一戦やるか?」
「トドメを刺さないのか? 我を哀れむのか? 奢りか?」
「どれも違うね。お前は私たちの世界へ土足で入り込み侵略という言葉を発言した。この基底世界では過去にいくらでも異界から来た存在はいた。そして、それが原因で大厄災が発生し今日に至るんだ。お前みたいなのが、また大厄災の発生を起こす可能性があること自体がもうこの基底世界にとって邪魔なんだよ。お前がやる気なら私はお前が尽きるまで戦う。負けない」
「フフッ、気丈な小娘よ! 我をその大厄災とやらと同列とするか。我以外にも次元を跳躍出来る存在がいようとはな」
「ほら、もう怪我が全快しているぞ。お前の時間稼ぎには付き合った。これであいこだ」
「いいだろう。どちらか一方が果てるまで……」
空気が変わった。なんだ?
「ルナ! 来た!」
「何が?!」
「愛国者だ」




