第15話 戦う証明
「イフ、周囲の探査機からの反応は?」
「いや、今んとこは反応無いぜ。ちょっと、探査機ら自身もこの魔力と呼ばれる数値に驚いてやがる。俺もだが」
「私もだよ。これでこの遺跡が別世界のものだったということは確定したね」
「ああ、そうだぜ。それでここにいた連中は魔力を大昔に研究してそれをどうしたのか?」
「我がいた世界のようなものを攻略するための研究施設という線も考えられるな」
「確かにその線はありそうだね」
「なんだ?」
「どうしたのイフ?」
「いや、何かを検知した」
「敵か? 我には何も感じぬぞ」
「私も」
「敵かどうかまではわからねぇが、俺の探査機が2つ同時に消失した」
イフの言葉からは緊張感が伝わってきた。龍帝も周囲を警戒を強めた。何かがこの都市にいる。または目覚めたか。
「イフ、探査機が消失した座標を私に共有して」
「あいよ」
座標の場所へと移動を開始した。龍帝は別行動。イフは中央から探査機の追加生産と警戒網を厳しく管理。私は先攻して敵の把握へ急いだ。
「探査機が消失したのはこの場所か」
探査機の残骸が道全体に散らばっていた。探査機自体はそんなに大きなものではない。3㎝ほどのボールサイズだ。一応、戦闘も出来るし、探査機とはいえ、イフが創造するものは基本的に頑丈に作られている。それらを同時に2つ消失し現在、目の前には残骸として破片が小さく散らばっている。解析と分析を進める。
「魔力を帯びている? 生命体がいるな」
検知感度の種類を魔力測定へ切り替えた。新しく実装した測定方法だ。現段階では改良中だ。魔力というそのものが未知で、龍帝の今までの状態や魔法の発動で得たデータを参照に開発し実装したものだ。
そして、今、この遺跡から出る魔力反応を学習し間もなく解析が終了する。
「終了。再度魔力探査」
遺跡全体を魔力を帯びたスキャンを実行。遺跡都市全域は上層部だけで広大なのに、下層にも広大に広がっているようだ。何者かは上層の地表付近に潜んでいるのを確認して座標を補足した。
「イフ、生命体反応の座標を捉えた! 確保に向かう」
「おう、気をつけてな!」
空間を歪ませて瞬時にその存在が逃げ切れられないように目の前に移動した。
「なんだ?」
なんか、ふかふかする。あたたかい。良い香りがする。
「むむッ! これは!」
「にゃめろー! 離せ〜!」
「いいや、離さないね。にゃんこはいたんだ。ぐふふ」
デカいにゃんこ、もといネコがいた。二足歩行でずんぐりむっくりとしたわがままボディな見た目をしている。ライブラリにアクセスして種族種類は該当しなかったので、基底世界の生き物ではないが、ライブラリのアーカイブから三毛猫と種類が似ていると一致した。
「なんだ? その毛玉は?」
「にゃにぃ〜! あたいを愚弄するかにゃ〜! ってか、ドラゴン!」
「ぐふふ、良い香り」
「小娘、そろそろ離れないか。攻撃がし難いであろうが」
「やっぱり、にゃんこはいたんだよ」
「まぁ……いい。お前は何だ毛玉?」
「あたいをまた毛玉呼ばわりしやにゃ〜! ドラゴンが相手とはいえ、許さないにゃ!」
「ほぅ、我と対峙するか。今なら……」
「おいおい、これはどういう状況なんだぜ?」
「イフか、良いところに来た。ルナが捕獲している間にあの毛玉を処理しようと思ってな」
「ありゃ、例のネコって呼ばれたものですかね」
「ああ、我の知っているネコとはサイズが大分大きいが魔獣の類いだろう。かなりの魔力を感じる。我が遺跡を目覚めさせたと同時にこの毛玉も起きたということだろう」
「龍帝の旦那、あれは旦那がいた世界の魔獣ではないという認識でいいのか?」
「ああ、間違いない。あのような毛玉は見たことがない」
「そうかい。とは言え、ルナのあれははたして捕獲しているって言えるのか? 満喫しているように見えるんだが?」
「………イフよ、小娘をどうにか出来ぬか」
「ありゃ、無理でしょう。とは、いえ、拘束していることも事実。さて、このネコをどうするかね」
「にゃに〜、お、おまえらあたいに危害を加えるつもりかぁ〜」
「ふむ、答えによる。我の問いに正直に答えよ。お前は何だ?」
「ドラゴンなのにあたいを知らなにゃいのかぁ! あたいは聖獣にゃるぞ」
「せいじゅう? お前は大人ではないのか?」
「ちがうにゃ! 聖なる獣と書いて聖獣だにゃ!」
「ほぅ。単なる毛玉ではなく、聖獣であったか。これは失礼。我の名は龍帝オブリビオンである。貴様の名を名乗れ」
「レディに向かって貴様とは何なんだにゃ! あたいの名は、にょにょいる・にょにょだにゃ!」
「にょにょだにゃ? なんだ? どこからが名だ?」
「うーんっもッ! あったま来たにゃー! あたいの名は聖獣のにょにょいる・にょにょ!」
「変わった名だな?」
「俺たちの世界とも龍帝の旦那がいた世界とも違う言語体系なのか? で、何故、ネコさんは俺たちの世界の言葉を話せる?」
「あたいは聖獣だにゃ! この世界に巻き込まれてから知らないことをたくさん習得したにゃ! 迷惑だにゃ!」
「我の名は知らぬということは、別世界の存在で間違いないな。さて、鑑定させてもらうぞ」
「鑑定だとぉ?! 個人情報漏洩は違法なんだにゃ! 乙女をのぞき見るのは犯罪なんだにゃ!」
『天啓の天秤』
「このドラゴン、あたいを鑑定しやがったにゃ〜!!」
「ほぅ、興味深いな。にょにょ」
「あたいの完全妨害魔法を貫通してのぞき見したにゃ〜! 変態の所業だにゃ!」
「へ、変態だと?! 我が?!」
「へんたいだにゃ!」
「龍帝の旦那、このにょにょという聖獣とやらはどんな存在なんですかい?」
「こいつは、ただの聖獣ではない。原初の神獣だ。位列は我と同格だ」
「龍帝の旦那の同格の存在ですかい。それは驚いた。つまり、別世界の神と同格ってことで?」
「その通りだ。見た目はちんちくりんだが、実力は折紙付きの化け物だ」
「あたいをちんちくりんだの化け物呼ばわりだの、変態だにゃ! この娘を離すんだにゃ! あたいがたたきのめしてやるにゃー!」
「ぐふふ、もふもふネコを離すものか。ぐふふ」
「ありゃ、ルナの奴、完全にぞっこんだな。龍帝の旦那、どうしますかい?」
「我とは別世界の存在とは言え、愛国者に対抗するための戦力は必要なところ。こやつを同行させよう。どうせ、この場所で放逐したところで魔力枯渇は必須。我がこの場所の魔力回路を復活させてはいるが、永久ではない。この魔力回路が破損または機能不全になったらまた枯渇する未来は見えておる」
ジタバタとネコはルナを引き離そうとしてバタバタしている。
「おい、にょにょと言ったか。我らと共に来い」
「嫌だにゃ! 乙女心をのぞき見る変態と誰が一緒に行くもんかにゃ!」
「また我を変態呼ばわりするか」
「実際にあたいを無断で鑑定したからにゃ! ストーカーだにゃ! 不純異性交遊だにゃ!」
「ッ……何を訳わからんことを!」
龍帝の旦那がブチ切れそうだ。
「にょにょさんや、俺の声は聞こえているか?」
「にゃんだ? 精霊の類いかだにゃ? 聞こえているにゃ」
「提案なんですが、俺たちは、にょにょさんのような被害者なんですぜ。それで、今はその元凶を倒しに行く道中の最中なんです。敵は愛国者と呼ばれているんですが聞いたことはないですかい?」
「愛国者かにゃ? あたいの世界に無断で干渉してきた侵略者の名だにゃ! きぃー! ぶっ殺してやるにゃー! そいつらはどこにいるにゃ!」
「この遺跡に見覚えは?」
「ここはあたいが最後にいた世界の断片だにゃ。そうか、あたいが復活したのはこの魔力経路の回復が起きて封印が解けたのかにゃ? きっかけはそこの変態ドラゴンの所業だにゃ! 犯人は貴様だにゃ!」
「にょにょさんや、落ち着いて。俺たちは何もあんたに危害を加えに来たわけじゃない。ここにネコがいるっていう記録と座標を見てここに来たんだ。この遺跡を復活させたのはそのついでだ。そしたら、あんたの反応が見てそのにょにょさんの腹部にしがみついている人が俺たちの仲間だ」
「この娘が仲間にゃ? 本当かにゃ?」
「そうだろ? ルナ」
「にょにょ、そうだよ。私はルナ。イフと龍帝と愛国者を討つために長い旅をしているの。貴女も一緒に来て欲しい!」
「この娘は人かにゃ?」
「いいや、人間が進化した果ての姿さ」
「そう、私は完全人という人なの。もうずっと同じ人種に出会っていないけれど、きっとどこかで愛国者たちと戦って生き延びているはず」
にょにょは頭をポリポリしながら答えた。
「この世界について、あたいは無知だにゃ。そこにいるドラゴンも、ここの世界の住人なんかにゃ?」
「我の話を聞いておらんかったのか? 我も別世界から来た存在。お前と位列は同格である」
「お前がにゃ? あたいと同格? お前がいた世界はどうなったんだにゃ?」
「世界の半分が消し飛んだ。我は神に頼まれてここの世界へ仕返しに来た。敵は愛国者という名称のようだ。お前は愛国者についてどこまで認識している?」
にょにょが不思議そうな顔をした。
「アイツらは、あたいの世界ごとを崩壊させることが出来る化け物だにゃ! その敵を見てはいるけれど認識阻害されて何者かを正しく認識出来ていないにゃ」
「にょにょも、見えていないかったんだ」
「そうだにゃ、見えないというより見えているけれど見られないという感覚だにゃ。あれらは何なんだにゃ?」
「それなら、私たちと一緒に来て欲しい。貴女の知恵と力が必要だから」
にょにょは少し考えるような態勢をとった。何かを考えて選択をしているような感じだ。
「条件があるにゃ」
「何?」
「あたいと戦闘して欲しいにゃ。あんたたちが本当にアイツらと闘えるのか戦闘で足手まといにならないか確認が必要なんだにゃ」
「いいよ! それじゃ、私が相手をするよ」
「娘がにゃ? そこの変態ドラゴンではなくて良いのかだにゃ?」
龍帝の額には怒りの血管が浮き出ている。多分、龍帝をにょにょと打つけたら殺し合いになるのは避けられない。
「そう、私がルナが代表して、にょにょと戦い、証明してみせる!」




