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時間犯罪者、時野美月の共犯者リスト  作者: 末井翔
第二章 明日を祈る少女
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第20話 代償



 「おや、起きたんですね。調子はどうですか、共(・)犯(・)者(・)さん?」



 不意に、美月(みつき)さんの声が聞こえた。

 その声にわたしは、ビクッと肩を震わせてしまう。声の方を見ると、美月さんは部屋の出入り口の扉の枠に背中を預けて、腕を組んでいて、そしてわたしをからかうように微笑んでいた。


 「話は廊下で聞いてました。いけませんね。嘘をつくなんて」


 「それは、その……ごめんなさい」


 警戒したからとはいえ嘘をついたのは事実だし、多少罪悪感もあったのでわたしは謝る。美月さんは、わたしの謝罪を聞いて満足そうに近づいてきた。美月さんの格好はバスでみた見た黒のセーラー服に上から白衣を着ていて、眼鏡をかけていて、その姿は様になっていてかっこいい。

 腕を組んでいたので気づかなかったが、手には水の入った水とシート状のアルミに包まれた錠剤を持っていた。


 「まぁ別に大したことではないのでいいんですけどね。こちら解熱剤です。楽になるから飲んでおいて、だそうです」


 「ありがとうございます」


 美月さんから受け取った薬は、よく見る形の錠剤だった。何個か使った形跡があって、残りが二錠なので多分一回二錠と書いてある。多分、市販薬だ。


 「えっと、この薬は西野博士…………先生からですか?」


 西野さんを博士と呼んでいいのか分からない。わたしはその道に詳しくないので、彼がもしかしたら「博士」よりも上の人なのかもしれない。彼がそう言う事にこだわる人だとは思わないけど、とりあえず「先生」と呼んでおく。

 西野先生は、美月さんと入れ替わりで入ってきたので、多分、別の人からだと思う。美月さんは、先程西野先生が座っていた回転式の椅子をベッドの横に持ってきて、座りながら答える。


 「彼の娘さんからです。同い年らしいので、元気があるなら後で会ってみてはどうですか?」


 「わかりました。後で会ってみます」


 「ええ、それが良いでしょう。それで、今夜はここに泊めてもらいますか?私は、ここに泊めてもらうのですが」


 そう言って、美月さんは壁に掛かっている時計の方に目を向ける。わたしも目を向けると、時計の針は19時を示していた。

 いつも帰るのと同じくらいの時間なのでまだ大丈夫だろうが、何も連絡をしないままだとおかあさんを心配をさせてしまうだろう。


 「その制服の学校、先程調べましたがここからだと少し遠いんですよ。なので、私的には泊まることをお勧めします」


 「じゃあ……そうさせてもらおうかな」


 美月さんは、少し食い気味にそう言う。確かに、少し遅くなると連絡すれば、大なり小なり心配を掛けてしまうだろう。それならば、友達の家に泊まることにした方がいいと思う。それに、美月さんに聞きたい事もあるし。


 「決まりですね。なら今夜はパジャマパーティー、ですね。パジャマを貰ってきます」


 そう言って、美月さんは嬉しそうに言って入口の方に歩いていく。その顔が、演技なのか、本当にうれしいだけなのか、わたしには分からない。

 このまま、彼女を行かせてもいいのだけど、一つ、どうしても聞いておきたいことがあった。


 「あのっ」


 わたしの声に、美月さんは入り口で止まってこちらに振り向く。勢いよくこちらに体を向けたので美月さんが来ている白衣が翻った。


 「どうかしましたか?」



 「変なこと聞くんですけど、美月さんは過去を変えれるんですか?」



 そう聞くと、美月さんは驚いたような顔をした後、一瞬悲しそうな顔をした。傷つけてしまっただろうか、そんなことを思っていると、


 「えぇ、変えれますよ。といっても、私がするのは、そのお手伝いですが」


 「じゃあ――」




 「わたしも過去を変えたい、ですか?」




 美月さんは、わたしが言う事を分かっていたかのようにそう言った。多分だけど、私みたいな人ははほかにもたくさんいたんだろう。


 「良いですよ。ただし、過去を変えるのにも相応の代償が伴います」


 「代償?」


 あっさりと承諾されて少し驚く。だからこそ、代償という言葉に嫌な予感がした。たくさんの人の命を生贄に、なんてと言われたら、流石にできない。それに、西野先生がわたしに掛けてくれた「頑張れ」という言葉も気になる。


 「はい。それは――」



 「それはあなたの命です」



 「わたしの……命?」


 わたしの命。それは、わたしが想像した代償の中で、最も価値の低いものであり、わたしがためらわずに差し出せる、唯一の物だった。過去を変える。それだけの事をわ(・)た(・)し(・)程(・)度(・)の(・)命(・)を払うだけで、変えられる。

 わたしと出会ったせいで不幸になった。あるいは、これから不幸になる人達との出会いをなかったことにできる。



 ――わたしの大切な人達が、わたしの棺桶の前で泣くことはなくなる



 「過去を変えると言う事は、今のあなたがいるこの現在を変えると言う事。つまり、あなたは死にます。」




 「ですが、もしその代償を払っても良いというのなら、あ(・)な(・)た(・)を最高の結末(ハッピーエンド)まで届けると約束しましょう」




 そしてわたしは、西野先生の言うところの、「共犯者」となった。


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