第六話 彼女の好み
「まず優先的に確保するのはヘルメット型の髪型をした十代の少年だ」
大きな雄体型の山賊が、ぶっとい切り株に座りながら百人近い部下たちにそう宣言した。
「金銀財宝その他はお前らにくれてやる、だがヘルメット型の髪形をした十代の少年だけは生かして連れてこい」
その山賊の言葉を周りの傭兵達は真剣に聞いていた。無駄口一つない完全統制された集団がそこにあった。
その集団とは別の場所でアイテム越しにその光景の音と場面を見ているテオは、サイレントに色々と聞きたいことがあった。
「サイレントさんこれは……」
「音だけでは寂しいと思い、映像も付け加えておきました。このように空中にディスプレイとして絵を映し出せるんですよ、凄いと思いませんか?」
凄いことは凄いのだが、んな事より、そこに映る巨大な山賊の言葉にテオは気が気じゃない。自身の頭に手を当てて髪型について様々な事を思い浮かべる。
「今の俺は極上のヘルメット型の少年が欲しい。町を焼き払ってでもそいつを見つけたら連れてこい」
「「「わかりました!!」」」
そいつの部下達が直立姿勢でそう返事をした。そこいらの軍隊でもなかなか見られない統率された動きに、サイレントも感嘆する。
「素晴らしい傭兵達ですね。間違いなく一級の強者達です。街の自警団なんぞは時間稼ぎすらできないでしょうね」
「時間稼げないんすか?」
「無理でしょうね、彼らであれば培った武力で必ず目的を達成できると思います。あ、宝玉を落としましたよ。大事に持っていてください」
「うん」
髪型に手を当てた時に宝玉を落としてしまったらしい。ちなみに現在、テオの防衛本能に反応してか先ほどまでとは違い宝玉が強く輝き始めていた。状況が変わったらしい。
「サイレントさん、なんでこいつ十代の少年に固執してるんすか? こうもっと魅力的な女性に対して積極的になっていいと思うんすよね」
「彼女も年頃ですし、そろそろ結婚したいのでしょう」
「女性なんですか?」
「どこからどう見ても女性じゃないですか」
テオの見る限り、それは眉毛の無いスキンヘッドの巨漢だった。街中で会えば半径三メートル以内から即座に離れるようなそんな巨漢だ。性別というより人相に多大な問題があり、言動からも人相と性格がぴったり一致している。
「ああ女性の方だったんですか。でも別にヘルメット型の髪形に固執しなくても良いと思うんですよ。男が欲しいのならイケメン公務員とかどうでしょうかね、お勧めできる人間を僕は知っているんですが」
「男は顔ではないと思っているようです。ほらその証拠に見てください」
サイレントから追加の最速を受けてよく注意すると、画面い動きがあった。
「以上で話は終わりだ、よし今日はお前とお前だ」
ボスであるところの彼女がそういうと、二人の部下が指さされた。別に顔は良くない、体型はしっかりしているが、ただそれだけだ。
「……うっす」
「わかりました……」
この世の終わりみたいな面をした部下二人が、ボスに連れられて野営用のテントの中に入っていった。テントの中から男達の悲鳴が次第に聞こえてきたが、周りは慣れたもので顔色一つ変えやしない。
「と、このように顔以外で男を選ぶ器量の持ち主です。貞操観念に少々の問題はありますが小さなことでしょう」
「他の問題が大きすぎて小さく見えると言うのならそうかもしれないね」
「はい、それと宝玉の方にも充分な殺意がたまったみたいです」
サイレントがそういうと、テオの手の中の宝玉が強く輝いていた。テオの中にある敵対者を絶対に許さぬと言う真摯な気持ちが込められていた。
「ところでもし仮にだけどこの映像と音声が嘘で、僕が謀られているという可能性はないかな。実はあの山賊は絶世の美少女で、ヘルメット型の髪型をした少年を求めてやまない華奢な女の子とか言う可能性はない?」
「ありますよ、確認してみますか」
と言ったところで、テオ達に気が付いた傭兵の一人が声を上げた。
「お前らそこで何をしている!!」
その声にテオ達だけではなくて、他の傭兵達も気が付いた。そりゃあ闇夜の中で光り輝く宝玉なんぞ持っていたら流石に気が付く。
やばい、そう思ってテオがそちらを見ると、むしろテオを見つけた当の傭兵達の方が驚いていた。
「ヘルメット型の……少年?」
「なんだとお!!!」
とんでもねえ野太い叫び声が聞こえてきた。
と同時に、傭兵の駐屯地にあるとある一つのテントが空中に吹き飛ばされた。先ほどボスが部下二人を連れてこの世の地獄を作り上げていた例のテントだ。
地面が揺れるような錯覚を覚えさせる重量音を出しながら、ついにテオは彼女と出会ってしまった。
お楽しみの最中だったようで衣服の類を跡わない彼女を一目見ると、なんとびっくり先ほどの映像の容貌とぴったり一致。サイレントが全く一つも嘘を言ってなかった事に、一つぐらいで良いから嘘も混ぜろやと言う強い思いがテオの中を駆け巡る。
「ほう!!!」
そう言ってテオを確認したボスの目がクワっと見開いたところで、テオの中にある宝玉が今日最大に輝いた。
「はい、これだけあれば十分です。ダンジョンを形成します」




