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15 白い光

私の指先が石版に触れた瞬間、白い石が輝きだした。

そこから放たれた強い光は殿下の力で放たれていたもともとの四色の光とともに、まっすぐに空へと伸びていく。

「……どうして」そう唖然と呟く殿下に、私は一族もこれと似た儀式を行っていたという話をした。


「以前殿下は、この石版は王族男子の血に宿る女神の御力『天力』を可視化するものだと教えて下さいました。火を司る赤の力、水を司る青の力、地を司る茶の力、風を司る緑の力、そして光を司る白の力。

……そして、一族が行っていたという儀式。ヴィルによれば、それは各属性の一番の使い手たちと族長によってなされていたということです。それならば、我々の場合も石版にあしらわれた五色の石は幻術の五属性を示すのだろうと思いました。

族長の血筋の者として、私は光属性を扱えます。光属性を扱える私なら、きっと白い光を放つことができるでしょう。そう思ってやってみたのですが……本当に光りましたね。まるで誂えたように殿下に足りないところを私がお支えできるなんて、嬉しい気持ちです」


たとえ一族の人間であっても、私が族長の娘でなかったら光属性を扱うことは出来なかった。

事実、あの優秀な幻術使いであるヴィルでさえ光属性は使えないのだ。

そう考えると、殿下と私が結び付けられた運命が、なんだか必然だったかのように思えてくる。


そんなふうに思索の海に浸っていると、急に殿下が思わずといった調子でふっと笑みをこぼした。


「いかがされました?」


「いや、昔とある人から言われた言葉の意味が、今ようやく理解できたなと思って……。かつて、俺はリラフィーナ――本物のリラフィーナに、一度だけ会ったことがあるんだ。その時、彼女はこう言った。

『リ(・)ラ(・)は運命になれないけれど、リ(・)ラ(・)があなたの運命になるの。女神は愛し子に等しく恩寵を与えたわ。どうか支え合って、国のために尽くしてくださいますように』と。

彼女はリラ(リラ・ブラン)が俺の妃になることを見通していたんだなと、そこまでは考えていた。しかし今、そこで思考が行き止まっていた自分はなんと浅慮なのだろうと思い至った。

『女神は愛し子に等しく恩寵を与えた』――それは王族と一族に与えられた稀有な力が、起源を同じくするものであると、女神から与えられたものであると、そう伝えるための言葉だったのではないか。

『支え合って尽くす』――まさに、その通りだ。俺に足りない力を、リラが持ってくれているのだから。

……ああ本当に、リラフィーナにはどこまで見えていたんだろうな」


本当にすごいひとだ、と殿下は心から感服したといったように呟いた。


「お会いしてみたかった……」


私も心からそう思って、亡き人に想いを馳せようと天を見上げた、その時。


「……あれ? 殿下、空が……!」


さきほどまで重く立ち込めていた暗雲が、五色の光によって、散らされるかのように薄まっている。

ああ、女神が私たちの思いに応えてくれたのだろうか。天を御することができたのだろうか。

横を向くと、殿下も空をじっと見上げている。


「とりあえずは、これで大丈夫だろう。しかし、すでに降った雨がなかったことになるわけではないからな。被災地へ行った兵たちには、何かあればすぐに報告を上げるように言ってあるが……」


言いながら殿下は石版を元の位置に戻し、羽織っていた薄布も手早く折りたたんで持った。

それでも一つの懸念が解消されて、二人ともほんの少し気が抜けたような感覚を抱いていたが……そういう時こそ、危機は身近に迫っているものであるらしい。


「至急お知らせしたいことがございます!」


屋上に続く扉の向こうから、大きな声が聞こえた。

それは待たせていたはずのヴィルのものであったが、平常のあの緩い喋り方ではない。

ただごとではないと感じたのだろう、殿下は足早に向かっていって扉を開く。

私も後を追い、ともにヴィルに向かい合う。

跪いた彼は、重い表情で静かに告げた。


「申し上げます。ただいま被災地より連絡があり、雨で地盤が緩んだことによる土砂崩れに兵たちが巻き込まれ、負傷者が多数出ているとのことです」

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