第63話 リーラとの修行、獣人族の流儀
翌朝。
俺は紅蓮の翼の調理法を、さらに深めるため、リーラさんに修行を願い出ていた。
共用の調理場には、すでに彼女が立っていた。
長い黒髪を後ろで縛り、白いエプロン姿。
料理人としての本気の佇まい。
「田中殿、おはようございます」
「リーラさん、おはようございます」
「今日も、紅蓮の翼の研究ですか」
「はい、でもその前に——獣人族の料理を、もっと深く学びたい」
「と、言いますと?」
俺は深く頷いた。
「紅蓮の翼だけを引き出すのでは足りない」
「ええ」
「獣人族の料理文化、全体を知る必要がある」
「素晴らしいお考えですわ」
リーラさんがにっこり微笑んだ。
「では、今日は獣人族の伝統料理を一から教えますね」
「お願いします」
俺は深く頭を下げた。
料理人として、もう一段深く潜る修行が始まる。
最終料理に向けて、本当に必要な準備だった。
リーラさんが最初に出してくれた素材は——獣人族特有の香草だった。
「これ、『紅蓮の葉』」
「紅蓮の翼と、関係が?」
「ええ、紅蓮の平原で、鳳凰のお膝元で育つ」
「すごい素材ですね」
「鳳凰のわずかな炎の気を、葉が吸う」
「炎の気」
「焼いた紅蓮の翼と合わせると——味が一段深まる」
リーラさんが深く頷いた。
俺は【鑑定】で、紅蓮の葉を確認した。
【紅蓮の葉】
備考:紅蓮の平原で、鳳凰の気を吸って、育つ香草。
紅蓮の翼との、相性が極めて、良い。
ペアで使うと、滋養効果が、1.5倍に。
……1.5倍。
料理人として、最高の組み合わせ。
俺は深く頷いた。
「リーラさん、これは——料理大会の最終料理に使えますね」
「ええ、ぜひ」
「ありがとうございます」
「獣人族として、田中殿に協力したい」
リーラさんが優雅に頷いた。
彼女の本気が、伝わってきた。
俺たちは、紅蓮の葉と紅蓮の翼を使った新しい料理を試した。
まず、紅蓮の翼を中火で炙る。
昨日習得した、最適な火加減。
次に、紅蓮の葉を細かく刻む。
鼻に抜ける、清涼感のある香り。
地球のシソに似た、爽やかさだった。
二つを大鍋に入れて、ル・オニオンと一緒に煮込んだ。
……すごい。
香りが一段深くなった。
料理人として、新しい発見の連続。
リーラさんが楽しそうに笑った。
「田中殿、目が輝いていますわ」
「リーラさんも、ですよ」
「あら、本当?」
「料理人のいい顔をしています」
「うふふ」
リーラさんが優雅に微笑んだ。
料理人同士、お互いの本気を理解できる瞬間。
最高の修行だった。
俺たちは、紅蓮の葉と紅蓮の翼を使った新しい料理を試した。
まず、紅蓮の翼を中火で炙る。
昨日習得した、最適な火加減。
次に、紅蓮の葉を細かく刻む。
鼻に抜ける、清涼感のある香り。
地球のシソに似た、爽やかさだった。
二つを大鍋に入れて、ル・オニオンと一緒に煮込んだ。
……すごい。
香りが一段深くなった。
料理人として、新しい発見の連続。
リーラさんが楽しそうに笑った。
「田中殿、目が輝いていますわ」
「リーラさんも、ですよ」
「あら、本当?」
「料理人のいい顔をしています」
「うふふ」
リーラさんが優雅に微笑んだ。
料理人同士、お互いの本気を理解できる瞬間。
最高の修行だった。
昼食後。
リーラさんが俺に切り出した。
「田中殿」
「はい」
「一つ、お話があります」
「どうぞ」
「私、ベラ亭で修行する、と決まりましたが——」
「ええ」
「その前に、一つだけ確認したいことがあります」
リーラさんが深く息を吸った。
「私、獣人族の代表としてベラ亭に行きます」
「はい」
「でもベラ亭には、すでに優れた料理人がたくさんいる」
「ええ」
「私の役割は、何でしょうか?」
彼女の目には、料理人としての真摯な問いが宿っていた。
俺は深く頷いた。
「リーラさん」
「はい」
「ベラ亭はいま、種族の壁を越えた料理人が集まる場所です」
「ええ」
「あなたの役割は——獣人族の料理をベラ亭に伝えること」
「……」
「そして、ベラ亭の料理を獣人族に伝えていくこと」
「橋渡し、ですか」
「その通りです」
「料理を通じて、種族を繋ぐ橋」
「ええ」
「あなたは、その第一人者になります」
俺はまっすぐ、リーラさんを見た。
「料理大会だけで終わらない、長い役割です」
「……」
「獣人族の料理文化を、世界に広める」
リーラさんの目に、深い感動が宿った。
「田中殿」
「はい」
「私、その役割お引き受けします」
「ありがとうございます」
「光栄ですわ」
彼女が優雅に頭を下げた。
料理人として、最高の信頼関係を築けた瞬間。
俺は深く頷いた。
午後の修行は、より深く進んだ。
リーラさんが獣人族の秘伝料理を、いくつか教えてくれた。
戦士の傷を癒す『力の煮込み』。
子供の成長を促す『成長スープ』。
長老の長寿を祝う『千年の薬膳』。
全部、獣人族の生活に根付いた料理。
料理人として、本当に学びの多い時間だった。
俺もベラ亭の料理を、リーラさんに教えた。
ル・オニオンの煮込み方。
肉の柔らかさを引き出す技法。
お客様を温かく迎える、料理の心。
リーラさんが真剣な目で、学んでくれた。
お互いに料理を教え合う時間。
料理人として、これ以上の幸せはなかった。
夕方。
修行を終えて、俺は集落の外を一人で歩いていた。
紅蓮の平原に、夕日が沈んでいた。
赤茶色の大地が、金色に染まる光景。
……綺麗だ。
料理人として、こういう瞬間が心を満たしてくれる。
俺はその夕日を、しばらく眺めていた。
その時——後ろからレイナの足音が聞こえてきた。
「一郎」
「レイナさん」
「お疲れ様」
「ありがとうございます」
彼女が隣に立った。
「修行、どう?」
「楽しいです」
「リーラさん、いい料理人ね」
「ええ」
「あなたと本気で向き合ってる」
「ありがたいです」
レイナがにっこり微笑んだ。
「ねえ、一郎」
「はい」
「料理大会まで、あと一年と少しよね」
「ええ」
「準備、順調」
「皆のおかげです」
「でも——」
彼女の声が、少し低くなった。
「ザガン公の動き、間に合うかしら」
「……」
「カインさん、まだ連絡がない」
「ええ」
「不安よ」
俺はレイナの肩に、手を置いた。
「大丈夫です、レイナさん」
「うん」
「カインさん、必ず戻ります」
「信じてる」
「料理大会も、必ず成功させます」
「うん」
彼女が俺に身を寄せてきた。
夕日が二人を、優しく照らしていた。
料理人としての日々と、世界の動きと。
その両方を、俺は背負っていく。
でも、一人じゃない。
レイナがいる。仲間がいる。ベラ亭の家族がいる。
料理人として、最高の人生だった。
その夜。
俺は心羽を、もう一度見つめていた。
虹色に輝く特別な羽根。
鳳凰が自らの意志でくれた、奇跡の素材。
料理大会の最終料理の、核心。
俺は深く息を吸った。
明日からも、修行を続ける。
獣人族での滞在は、あと数日。
その間に、できる限りのものを学ぶ。
そして——ベラ亭に戻ったら、本格的に料理大会の準備に入る。
料理人として、夢に向かって一歩ずつ前に進む。
俺は深く頷いた。
最高の未来が、確実に近づいていた。




