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BuzzばんでっどバイDEAD  作者: ゆず先輩
21/24

第3片 死人に口なし⑤―疑惑―


「この病室だな。」



俺と千尋とキョーコは瀬凪先輩が入院している病院へと足を運んでいた。


ニュースによれば、学校から瀬凪先輩とあきら先輩2人でタクシーに

乗り込んで事務所へと向かったそうだ。


そのタクシーが事故を起こして、乗り合わせていた2人が怪我をしたということらしい。

あきら先輩は奇跡的に無傷だったようで入院はしていないが、今日は学校を休んでいたようだ。


ニュースだけでは怪我の度合いが掴めなかったので、とても心配だ。



「失礼します。」



ガラガラッ



病室の扉を開けると、先約がいた。



「あ、お友達がお見舞いに来てくれたみたいだから、お姉さんは退散するねー。」



そこには最初の世界片でお世話になった、喫茶店で取り調べを受けた女刑事がいた。

たしか、麦倉さんだったかな?



「またお話聞かせてねー。」



麦倉さんは子供のような笑顔で軽く手を振って病室を出ていった。



「トベッちとちーちゃん。お見舞いに来てくれたんだ。」

「瀬凪先輩大丈夫ですか!?」



千尋はベットに走って駆け寄る。



「刑事と何か話してたんですか?」

「トベッち刑事さんだってよくわかったね。」



あ、やべ。

キョーコは俺に肘鉄を食らわせる。

前の世界片で出会ったなんて口が裂けても言えない。



「な、なんか刑事っぽかったから。」

「ふーん、まぁいいや。事故のことを聞かれてたんだ。

まぁ一瞬のことで何も覚えてないんだけどね。」



瀬凪先輩はにこやかに笑う。

怪我の具合もそこまで酷くなさそうだ。



「ニュースでバンド活動休止って出てたからすごく心配したんですよー。」

「あはは、全然大丈夫だよ。事務所も大袈裟だよね。」



それでもなんだか、少し無理をして笑っているようにも見えた。


俺たちに心配をかけないようにしてくれているんだろうが、

いつもの瀬凪先輩よりもテンションが変に高い。



「あきら先輩は無傷だったんですよね?」

「奇跡的にね。よく言うじゃない運転席の後ろが1番安全だって。」



ネットでは運転手だけが死亡し、2人は怪我ですんだことに対して少し話題になっていた。



「やっぱりスターは違うねー。」



まさに千尋のような反応だ。



「そうだ、あきらとの話し合いの件はもうちょっと落ち着いてからでもいいかな?」

「仕方ないな。」



キョーコは腕を組みながら呟いた。

このような事態になってしまったんだ。致し方あるまい。


またネットにはもう1つこの交通事故に対して話題になっていたことがある。

平日の夕方、まだ車通りもそこまで多くない時間にタクシー運転手が操作を誤るだろうか?


ましてや事務所が手配したタクシーで、酒気帯び運転なんてことは考えられない。

キョーコは魔獣が関係しているんじゃないかと疑っていた。



「瀬凪先輩。事故が起きた時、なにか変なことは起きませんでしたか?」

「なにトベッち。刑事さんごっこ?」

「そんな感じです。」



事故の翌日に被害者に聞くのははばかられるとは思ったが、

瀬凪先輩にはキョーコが見えないので俺が聞くしかない。



「さっきも言ったけど、一瞬の出来事で何も分からなかったなー。まぁ 事故 だしね。」

「そうですか……。」



瀬凪先輩は念を押すように最後に真剣な顔をした。



「まぁ明日には退院できるから、また楽しく部活しようよ。」

「そうですね!」



千尋はブンブンとしっぽを振っている。



「聞けることはなさそうだな。」



キョーコは俺にそう呟く。

あまり長居をしてもいけないので俺たちは帰ることにした。



「それじゃあ、また学校で。」

「うん。お見舞いありがとうね。」



ガラガラッ



「うぉ!?」



病室の扉を開けると、廊下にさっきの刑事がしゃがんで待っていた。



「お疲れ様。瀬凪ちゃんと事件のことなんかお話したー?」



麦倉さんはそういうと目の前で立ち上がる。

スラッとした長身で思わず立ちすくむ。


物腰や口調は柔らかかったが、言葉の奥に少しの狂気を感じたからだ。



「事件じゃなくて事故ですよ?」



千尋は物怖じせず刑事に話しかける。

意外と千尋はこういうところがある。

いや、鈍感なだけか?



「あはー。そうだったね!ごめんごめん!」



ゴソゴソッ



麦倉さんはそう言うとジャケットのポケットから飴を取り出した。

そして俺の制服のポケットに入れる動作をして近づき、俺にだけ聞こえる声で呟いた。



「瀬凪ちゃんなにか隠してるよ。何かあったら連絡して。」



な、なんなんだこの人は……?

前の世界片とはまるで別人だ。



「わー!ありがとうございます。」

「じゃあねー。」



千尋が飴に喜んでいる最中にポケットの中を確認すると、

そこには飴ではなく麦倉さんの名刺が入っていた。


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