第2片 強制シャットダウン⑤―策略―
授業中もなかなか集中できない。
千尋の背中を見ると、せっせとノートを取っているようだ。
この世界片にも魔獣が現れた。
【観測者】の俺は文字通り見ていることしか出来なかった。
もしあそこに千尋がいたら……。
早く【討伐者】を見つけないと前の世界片と同じようになってしまう。
放課後になり、俺は屋上へと足を運んだ。
「先輩、お疲れ様です。」
「お疲れ様。」
そこには既にキョーコと野々宮が集まっていた。
「私なりに魔獣のことを調べてみました。」
そう言って野々宮はタブレットを差し出す。
「おそらく奴はネット回線を移動することができるウィルスタイプだと思います。」
「ウィルス?」
「はい、コンピューターウィルスみたいなものです。それにもう世界中に手を伸ばしてます。
キョーコさん。昨日魔獣の反応がそこら中から感じましたよね?」
「ああ。奴が出てくる前、一瞬にして囲まれた感じがした。」
キョーコも真面目に野々宮の話を聞いている。
「奴はすでにスマホやタブレットに目を埋め込んでいます。」
野々宮はタブレットをいじって画面を見せてくる。
そこには昨日現れた狐の魔獣の片目が写っており、ギョロギョロとこちらを覗いていた。
「うぉ!?な、なんだこれ!?」
「大丈夫ですよ。目に脅威はありません。ただこちらを監視しているだけです。」
キョーコがこの目に反応したのであれば、俺のスマホにも埋め込まれているのか?
「それと、これを見てください。1週間前のホーム転落事故の映像です。」
そこには駅のホームで電車を待つ女子高生の動画が流れている。
角度からみて、ホームの監視カメラの映像か?
「夢衣、どうやってこれを入手したんだ?」
「ハッキングしました。【索敵者】の力でタブレットを使ったらなんか簡単に出来ちゃいました。」
【索敵者】の能力でそんなことまでできるのか?
「この部分です。女子高生がスマホを見て、カバンから何かを出そうとしてるんですが……。」
映像の女子高生はカバンを下ろして中から何かを探している。
すると、
「倒れた!?」
女子高生は昨日のファミレスの子と同じように気を失ったかのように勢いよく倒れ込んだ。
その反動でホームの下まで落ちてしまった。
「おそらく昨日のように魔獣に魂を食べられたんだと思います。注目して欲しいのはここです。」
野々宮はタブレットをピンチアウトし、映像をズームさせる。
「これは……?」
女子高生が倒れる前にカバンから取り出した物がホームに転がっている。
「モバイルバッテリーです。
この子はカバンからモバイルバッテリーを出そうとしてたんですよ。スマホの充電をする為に。」
「そうか!」
「はい。魔獣は端末の充電が切れるのを目を埋め込んで監視しているんです。
そして充電が切れると現れて魂を喰らう。」
だから昨日のファミレスであの子のスマホから現れたのか。
「理由は分かりませんが、充電が切れた端末からしか現れず、その対象しか襲えない様です。」
「す、すごいぞ野々宮!1日でここまで調べられるなんて!」
「えっへん!もっと褒めてもいいんですよ。」
野々宮は腰に手を当てて、これでもかとドヤ顔をする。
「じゃあ千尋にモバイルバッテリー渡してこないとな。」
「あ、それも朝渡しました。」
この女、できる……!!
今回ばかりは野々宮様と呼ぶ以外あるまい。
そんな時、スマホに一通のメールが届いた。
「ん?なんだ?全校生徒一斉メール?」
メールを開くと、全校生徒一斉に発信されている。
メーリングリストなんてあったか?
「大事なお知らせってファイルが添付されてるな。」
「先輩!開いちゃダメです!!」
野々宮は俺のスマホを奪う。
「な、なにすんだよ。」
「ちょっと待ってくださいよ……。やっぱり!!」
ファイルを解析した画面を俺の方へと向けてくる。
「このファイルを開いたら、
あらゆる通信が行われて充電があっという間に切れるようになってます!」
「なんだって!?」
そんなことが出来るのか!?
じゃあこのメールは魔獣の仕業か?
「千尋に連絡する。」
俺は慌てて千尋に電話をかける。
プルルルル、プルルル、
電話のコール音が受話器から鳴り続ける。
頼む。間に合ってくれ……!!




