第2片 強制シャットダウン②―癒し―
「にゃあ~~!」
ケモ耳をつけた野々宮は同じ耳をつけた獣たちと戯れている。
気づけば俺にも同じようなカチューシャが装着されており、
ここに入場するための通過儀礼のようなものらしい。
「先輩どうですか?最高でしょ!?」
「お、おう。」
ここは都内某所の猫カフェ。
野々宮はストレス発散の場所として俺を連れてきてくれた。
そこら中に猫たちが点在し、お客さんはその子たちと戯れる。
カフェスペースもあり、猫耳をつけた客達が猫を眺めながら談笑している。
猫カフェは聞いたことはあったが、来るのは初めてた。
「にゃにゃ~?」
野々宮は猫になりきり、自分も仲間に入ろうと積極的に行動している。
その甲斐あってか、野々宮の周りにはたくさんの猫が集まっている。
「猫に好かれてるんだな。」
「そうなんですよ!猫になりきる事がコツにゃー。」
普段の野々宮からは想像もできない、にゃー具合。
いつも俺を煽ってくる小生意気な後輩だと思っていたが、野々宮にもこんな一面があるんだな。
「楽しそうだったな。」
「はい!……って先輩のストレス発散だったのにすみません……。」
猫の襲来が落ち着いた頃、俺たちはカフェスペースに移動して休憩していた。
「全然大丈夫だよ。それに普段見れない野々宮も見れたしな。」
「にゃっ!?動画とか撮ってないですよね!?」
猫耳をつけた野々宮はまさに猫そのものだ。
「ははは、撮ってないよ。普段からここに来るのか?」
「そうですね。週に1回くらいは来ます。」
それはヘビーユーザーだな……。
「でもこんだけ来ても、もふらせてくれない猫もいるんですよ!」
そう言って野々宮は部屋の隅を指差す。
そこには小部屋のようなものがあり、猫だけが自由に行き来できる穴が空いている。
「あそこから中々出てこないんですよ。ツヨシ。」
「ツヨシ?」
指差す方を見ると、もはや猫とは言えない丸々と太りほぼ球体となっている猫がいた。
あれは、猫なのか……?
ドラ○もんの類じゃないか?
また、その小部屋にはカップル専用と貼り紙が付いていた。
「あっ……。」
野々宮もカップル専用の貼り紙を思い出し、気まずそうにしている。
なるほど。
いつも1人で来ているから、あそこには入れないのか。
野々宮が提案してくれたから精神科ルートを免れたんだ。
少しくらい恩返ししてもバチは当たらないだろう。
「店員さん、あそこの部屋に入りたいんですけど。」
「え!?」
「はい。カップル専用ルームですね。ご案内致します。」
エプロンをつけた店員さんは、カップル専用ルームへと向かっていく。
「ほら、行くぞ。」
「せ、先輩!?」
野々宮の手を取り、店員さんの後を歩く。
「ここに連れてきてくれたから、そのお礼。」
店員さんに聞こえないように、こそっとつぶやいた。
「そ、そ、そういう事ですか。なら甘んじて受けましょう!」
こうして2人でカップル専用ルームに入室することができた。
ドンッ
ツヨシ……、なんて圧迫感だ……。
小部屋はそこまで広くない。
人が3人くつろげるかくらいの大きさなのだか、ツヨシが人間1.5人分くらいある。
おのずと2人はくっつくしかない。
「ね~~。」
ツヨシは太りすぎてもはや「にゃー」と鳴けないようだ。
そんな猫いるか?
「ツヨシ~~。かわいいにゃ~~。」
野々宮は果敢にツヨシにモフりにかかる。
ツヨシは最初は抵抗したが、野々宮の猫力と抵抗による消費カロリーで途中からされるがままだ。
というか、こいつかわいいか?
そのまま野々宮は俺との密着などお構い無しに時間いっぱいまでツヨシをモフり続けた。
「全猫コンプリート!!」
野々宮は猫カフェの帰り道に子供のようにはしゃいでいる。
俺のストレス発散の名目だったが、これだけ野々宮が喜んでいるのなら良しとしよう。
「歩きスマホは事故の原因となる為、辞めましょう。」
道を歩いていると街頭放送が流れている。
「ここら辺はこんなの流れてるんだな。」
「最近、歩きスマホの事故が増えてますからね。それのせいですよ。」
「そうなのか。」
この世界片に今日飛んできたばっかりなので最近のホットな話題に疎いのは仕方ない。
「1週間前にもあったじゃないですか、ホーム転落事故。あれも歩きスマホだったみたいですよ。」
「へぇー。」
「ああいう事件があるとすぐにスマホ依存症がーとか言い出しますよね。」
ニュースサイトやSNSなどを確認すると結構な話題になっていた。
こういうのもチェックしとかないと、話が噛み合わないかもな。
「おぉ、本当にあるわ。」
野々宮と別れ、家に帰宅した俺はニュースサイトなどを読み漁った。
確かにながらスマホが原因で事故が多発している。
しかし奇妙な連続殺人などは上がっておらず、平和な世界片に飛んだんだなと実感できた。
色々読んで分かったことは、世界片によって事件やニュースが少し違うことだ。
世界を揺るがした過去の大事件などは変わっていないが、
小さな事件については少し内容が違ったりもした。
少し違うのであれば、もしかすると俺のチャンネルもこの世界片だったら……!!
「そんなに甘くないかーー!」
俺はスマホをベットに放り投げて、ふて寝を決め込んだ。




