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BuzzばんでっどバイDEAD  作者: ゆず先輩
11/24

第2片 強制シャットダウン―日常―


一陣の風が頬を撫でる。

瞼には太陽の光の温かさが伝わってきた。



【観測者】の能力【LOAD】を使って、千尋の死を無かったことにする。



夜に起きた事件だった為、能力が無事発動したのだとわかる。


今度は絶対にあんなことにはさせない。

俺が絶対に守る。



強い決意と共に俺は目を開けた。

そこには空が広がっており、俺は今学校の屋上にいることがわかった。



「本当に戻れた……。」



辺りを見渡すと、フェンスの向こうに女の子が1人立っているのが見える。

そうか。そこからなんだな。



「キョーコ!!戻ったぞ!!」



大声で叫ぶ。

この前の声にならない叫びではない。

強い意志を持った決意の叫びだ。



「ふっ……。うるさいぞ。」



キョーコは俺の方を振り向き、少し笑った。

その表情は何かを懐かしんでいるようにも見えた。


「千尋を確認してくる!」

「お、おい!ちょっと待て!」


俺は戻れた喜びから、キョーコの声も無視して部室へと駆け出した。



ガラガラッ



「どうしたのひろくん?そんなに慌てて?」



千尋だ。

部室には野々宮も瀬凪先輩も、そして千尋もいる。


いつもの代わり映えのない日常が底には広がっていた。



「千尋!!」



ガシッ



「え!?」


俺は思わず千尋を強く抱きしめた。

もう2度とこぼさぬように。


「ちょ、ちょっとひろくん!?どうしたの?」

「ごめん……!守れなくて、本当にごめん…」


周りのみんなが困惑している。


「な、何やってるんですか先輩!」


野々宮が俺と千尋を引きはがす。


「ひゅー。とべっち、大胆だねー。」


千尋の真っ赤になった顔を見て、俺はふと我に返る。

やべ……、やっちまった。



「い、いや!これはその――」

「セクハラですよ!セクハラ!!」



野々宮が千尋に抱きつき、俺から距離をとる。

小さなハムスターが精一杯俺に向けて威嚇している。



「そうだ!メェメェちゃんってTwippoやってるよな?」

「はぁ?やってますけど。」

「よし……。」



俺は自分のスマホを取り出し、メェメェちゃんのアカウントにメッセージを送ろうとする。



「な、なにしてるんですか?」

「殺されないうちに配信を辞めるように伝えるんだ。」

「先輩が信者に殺されますよ!?」



スマホを光の速さで取り上げられてしまう。

こいつもやしっ子の癖にこんなに早く動けるのか。



「なにするんだよ!」

「それはこっちの台詞です!!!」

「ここにいたか。」



野々宮との死闘を繰り広げていると、いつの間にか後ろにキョーコの姿があった。


そうだ。瀬凪先輩ならキョーコのことを知っている。

これから起きることをそこから説明できるかもしれない。



「瀬凪先輩、キョーコですよ。」



俺はキョーコの肩を掴んで瀬凪先輩の前に移動させる。

キョーコは脱力しきった顔でされるがままになっている。



「キョーコ?何それ?」

「え?キョーコですよ!一緒に戦ってたじゃないですか!」

「えー……っと、アニメの話?ちょっと分からないな。」



瀬凪先輩は、目の前のキョーコに目すら合わせない。


ん?どういうことだ?


「先輩、頭でも打ったんですか?」

「ひろくん、病院付き合おうか?」

「行った方がいいんじゃない?」


三人から通院をオススメされてしまう。

何がどうなってるんだ!?


「ちょっと来い。」


この状況を見かねたキョーコは俺を部室の外へと呼び出した。



ガラガラッ



「おい、馬鹿エヴァン。」

「はい。」



パコーンッ



キョーコは俺の頭を強くぶった。


「痛っ!何すんだよ!」

「それはこっちの台詞だ。説明も受けずに飛び出しよって。」

「だって、またあの狼の化け物が数日後に出てくるんだよ!?

 すぐに対策を練らないといけないじゃないか!」

「あいつはもう出てこない。」

「へ?」


あの化け物が出てこない?どういうことだ?


「【観測者】の能力は過去にタイムリープできるというものじゃない。

 あくまで【LOAD】。セーブポイントに戻るだけだ。」


セーブポイントに戻る能力?

それってつまり、タイムリープをするってことじゃないのか?



「お前のセーブポイントは、能力が目覚めたあの屋上だろう。

 だからそれ以上に戻ることはできない。」



キョーコは話を続ける。



「36年前、世界は無数に分岐した。

 私たちがいるこの世界はその欠片の1つに過ぎない。

【観測者】は、その欠片と欠片を移動することができる。」


世界が分岐した……?

欠片と欠片を移動できる……?


ここだけを聞くと到底信じることができない話だが、

俺は目の前で暴れる化け物を見ている。

信じるしかない。


それに、こういう話は配信でよく取り扱っていたから得意だ。



「世界が分岐したってことは、俺が生まれなかった欠片もあるんじゃないか?」

「なんだ、呑み込みが早いじゃないか。」



初めてキョーコに褒められた気がする。

悪くないな。


「もちろんそういった世界も存在する。でもその欠片にはセーブポイントが

 存在しないから飛ぶことはできない。」



なるほど。

つまり俺は【観測者】の能力をつかって、違う世界の欠片に飛んだわけだ。

セーブポイントがたまたまあの屋上だったから時間が戻ったんだ。



「じゃあ、ここは狼の化け物が存在しない世界片なのか?」

「それは違う。」


あれ?あの狼の化け物は出てこないって言ってなかったか?



「この世界にもあいつは存在している。でもおそらく襲ってこない。」

「なんで?」

「【観測者】の能力を使った際に、あの魔獣の魔素を利用した。

 この世界のあいつにもそれは感じ取れたはずだ。」

「つまり……?」

「魔力には記憶を保持する習性がある。それを魔獣はこの世界で感じたんだ。

 自分が無様に殺される姿がフラッシュバックされて、今頃ビビってるはずだぞ。」



キョーコはクククと笑った。

その後も話を続けようとしたが、俺の後ろを見て態度を変える。



「今日のところはここまでだな。」

「え?なんで?もっと聞きたいことが山ほどあるよ。」

「ん。」



顎を使って後ろを見ろとジェスチャーする。

後ろを振り向くと部室の扉が少しだけ空いており、

そこから3人の目がこちらを怪しげに監視していた。


「わっ!?」

「私もやることがある。明日屋上に来い。」

あ、そうだ。私は能力者にしか見えないからなー。」



キョーコは手を適当に振って去っていく。



「えー……っと、どこから見てました……?」

「「「全部見てました!」」」



3人は勢いよく扉を開けて、俺を部室内に引っ張り込む。



「ひろくん本当に大丈夫?」

「虚空に話しかけてましたよ、今。」

「これは本格的に病院に行かないとね。」



3人が代わる代わる俺を責め立てる。


瀬凪先輩はキョーコのことが見えていなかった。

おそらく瀬凪先輩が【討伐者】じゃない世界片に移動したのだろう。


でもこのままじゃ本当に精神科に連れて行かれそうなので言い訳をしておかなければ。



「いやー、最近ストレスが溜まってたからそのせいかもなー。」


我ながら苦しい言い訳だが、彼女らの中の虚空に話していた俺という事実は

変えようがないので仕方ない。


幽霊と話していた、だとか他にも言い様はあったのだが結局は精神科コースからは逃れられない。


ならいっそ嘘の原因を提示することで、

その解消によって現状回復ができると示した方が得策だろう。



「ストレスですか……。」



野々宮が引っかかってくれた!



「それなら、いい発散場所を知ってますよ。」

「本当か?ぜひ教えてくれ!もうストレスが溜まって死にそうなんだ。」

「ちょっと入り組んでるんで、私と一緒に行きましょう。」

「おう!」



なんとかこの場を収めることができた。

今後はキョーコと話す時に気をつけさえすれば大丈夫だろう。



「ひろくんをお願いね。」

「任せてください!それじゃ先輩行きますよ。」



キョーコの話が本当ならば、もうあの狼の魔獣は出てこない。

もう誰も死ぬことはないんだ。



あとはただこの平和な日常を過ごしていくだけだ。


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