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BuzzばんでっどバイDEAD  作者: ゆず先輩
10/24

第1片 Stuffs Stone⑨―激闘―


「ち、千尋!!」

「ひ……ひろ……く……ん……。」



千尋は爪のような物に胸を貫かれ、持ち上げられていた。

千尋の後ろには、巨大な狼の化け物が立っていた。



「ガァァァァァァアアアアア!!!」



化け物は雄叫びと共に腕を振るい、千尋を地面へと叩きつける。



「千尋ォォ!!」



俺はすぐに千尋へと駆け寄る。



「ち、千尋!しっかりしろ!千尋ォ!!」



俺が強く何度も声をかけるが返事がない。

千尋の目は生気を失い、ただ一点を見つめている。



なんで……、どうしてこんなことに……?



俺は動かない千尋を強く抱きしめた。

しかし前回のように震えるでもなく、ただただ冷たくなっていくのを感じた。



「ガァァァァァァアアア!!」



化け物はすぐ側で俺たちを見下ろしている。

俺には千尋を俺から引き剥がそうとしているように感じた。


化け物は大きな爪が付いている腕を大きく振りかぶった。


ダメだ……。

千尋だけは絶対に渡さない……!!


ギュッとより一層強く千尋を抱きしめる。



「俯くな!!前を向け!」

「!?」



バキィィィィィィン!



女の子の声がして顔を上げると、目の前に幾何学模様の透明な壁が出現した。

透明な壁は化け物の爪を俺の顔寸前で止めていた。



「な、なんだ!?」




ググググッ



透明な壁は爪を弾き、化け物を吹き飛ばす。



「とべっち、大丈夫?」

「その声は……、瀬凪先輩!!」



瀬凪先輩は俺と化け物の前に立ちはだかる。

なんで瀬凪先輩がこんなところに?



「【観測者】が居ながらなんて失態だ。」



俺の後ろから先程の声の主が歩いてくる。

公園で出会った謎の少女 キョーコ だ。



「キョ、キョーコ!?」

「なんだ覚えてたのか。なら話は早い。お前も準備しろ、来るぞ。」

「え?」



ガァァァァァァア



化け物は俺たち目掛けて突進してくる。



「うぁぁぁあ!」

「大丈夫だよ!」



バキィィィィン!!!



瀬凪先輩は手を前に出し、再度透明な壁を出現させる。

化け物の爪はその壁に阻まれてこちらに届かない。



「す、すごい……!」

「防御だけじゃないよ!!」



瀬凪先輩は腕を振り、壁ごと化け物を吹き飛ばす。

そして、すかさず化け物との距離を詰め、右拳の前に小さな壁を出現させる。



「くらえぇぇぇ!!」



そのままバランスを崩している化け物に出現させた壁を叩きつける。



ダァァァァン!



その衝撃で化け物はまたしても吹き飛ぶ。

すごすぎる。なんで瀬凪先輩がこんな力を?



「あれが【討伐者】の能力だ。」



キョーコは俺の心を読んだかのようにそう答えた。


「瀬凪は右手に着けたロッカーグローブを媒介に【討伐者】の能力を使っている。」


瀬凪先輩を見ると確かに右手に指ぬきのグローブをしている。

あのグローブにそんな力があるのか?



「何を驚いている。お前もアーティファクトを持ってるじゃないか。」

「アーティファクト?」

「はぁ……、世話のやける奴だ。」



キョーコは不機嫌そうに指を鳴らすと、俺の胸ポケットに入っていたマスクが光だした。



「うぉ!?」

「こんな奴が【観測者】とはな……。早く付けろ、奴も本気を出してくるぞ。」



俺は胸ポケットから光り輝いているマスクを取り出した。



「きゃぁぁぁ!」

「!?」



突如瀬凪先輩の悲鳴が聞こえる。

前を見ると、先程まで押していた戦況が一変していた。


瀬凪先輩は地面に倒れ、化け物はそれを見下ろしている。


このままじゃ瀬凪先輩もやられてしまう。

これ以上、人が傷つくところを見たくない。



「装着しろ!」

「お、おう!」



俺は手に持ったマスクを顔に押し当てる。


すると、マスクの光がより一層輝きだす。

その光は俺の身体を覆いつくし、今までに感じたことのない感覚を覚える。

力が無限に湧き上がり、なんでも出来るのではないかという無敵感。


す、すごい……!

これがアーティファクトの力なのか!?


俺を包んでいた光はマスクに収縮され、光が消えるといつの間にか俺は白衣を身にまとっていた。



「え!?なんで?」

「化け物から目を離すな!」



俺は慌ててキョーコに言われたように化け物を凝視する。

そこには腕を振り落とし、今にも瀬凪先輩を攻撃しようとしている化け物の姿があった。



「あぶない!!」



ビクッ!



俺が叫び声を上げると、化け物の動きが止まった。


正確にいうと完全に動きが止まったわけではない。

化け物の身体は小刻みに震えている。



な、なんだ……?

もしかして俺にびびっているのか?



「瀬凪!今だ!」

「了解!」



瀬凪先輩は右手を強く握りしめる。

すると拳の前に赤色の小さな魔法陣が出現した。



「くらえ!音速の終楽章アッチェレランド!!」



全力で拳を化け物に食らわせる。

拳が化け物に触れた瞬間、魔法陣は展開され化け物の身体を貫通するように赤色閃光が煌めいた。



ドガーーンッ!



「ガァァァァァァア!!」



化け物は攻撃を受けて、その光とともに消滅していった。



「勝った……のか……?」

「あぁ。そうだ。」

「とべっち助けてくれてありがとー!」



瀬凪先輩の攻撃に圧倒されていると、いつの間にか先輩が抱きついていた。



「うぉっ!?いつの間に!?」

「助かったよー。……ってちーちゃん……?」



戦いに集中していたのか、千尋の姿を1度も見ていなかったようだ。

千尋は俺の腕の中で冷たくなってもう動かない。



「うそ……だよね……?」



瀬凪先輩は先程のテンションとは打って変わって狼狽える。



「今日のターゲットに目星をつけていたが、お前変な動画上げただろ?」

「え?」

「あれでターゲットが変わって、駆けつけるのに時間が掛かってしまった。

 動画に写ってたんだよ、お前たちの学校の制服が。」

「!?」



確かに部室で撮った動画は、制服に白衣を着て撮影していた。

それで学校が特定され、ターゲットが俺たちの高校の学生に変更になったのか?


俺達の学校に八木という苗字はおそらく千尋だけ。

それじゃあ千尋を殺ろされたのは……、俺のせい……?



「そ、そんな……、それじゃあ……!!」

「あぁ、この子が殺されたのはお前のせいだ。」

「ちょっと言い過ぎ!」

「うわぁぁぁあああああああ!!」



叫んだってどうにもならない。

もう千尋は帰ってこない。


それでも叫ばずにはいられなかった。

声が出なくなっても声にならない叫びが口から止まらない。


叫ぶのを辞めてしまったら俺の中に溢れ出した感情が身体を内側から破壊しそうだ。

でも永遠に叫び続けることはできない。


息がもたなくって俺は叫ぶのを止めてしまう。


その時、マスクが煌々と輝き出した。



「!?」

「やはりな。奴が消滅して魔素がここら一体に充満している。今のお前でも能力が使えそうだ。」

「能力……?」

「その想いを忘れるな。想いは【観測者】の動力源だ。」



身体に力が湧いてくる。

マスク越しの視界に【LOAD】の文字が浮かび上がる。



【LOAD】……?

ゲームなんかでよく聞くあれなのか…?



もしそうであれば……、千尋を助けられるのか…?



「飛べ、エヴァン。奴を倒すために。」

「うぉぉぉおおおおお!!【LOAD】!!!」



ドクンッ!



呪文を唱えた途端、心臓が大きく跳ね上がるのを感じた。


視界の全てが俺を置いて加速し始める。

俺はそれを確認し、強く目を瞑った。



「向こうに着いたら、私に声をかけろ。」



加速する世界の中、キョーコの声が微かに聞こえた。



こんな結末絶対に有り得ない。

二度と同じような過ちは繰り返さない。



そう決意し、俺はより強く瞼を閉じた。


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