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カードゲームは卒業したのにTCG学園に放り込まれたんだが ~イカサマ王と呼ばれた俺はカードゲームなんかしたくない~  作者: ゼ二平


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第35話 過去との邂逅

 ちょっとした昔話だ。

 昔といっても、だいたい1年ほど前。8月ごろに行われた俺の2回目の全国大会の日のことだ。

 準決勝を勝ち抜き、決勝へ駒を進めることになった俺は、ステージ裏の控え室で対戦開始の時間まで待つことになった。

 この待ち時間は本当に落ち着かない。

 他に誰もいない狭い控え室の中をうろうろしたり、椅子に座ったり立ったり。

 傍から見たら不審者としか思えない行動を繰り返し、最後にはちょっと疲れてはぁ、とため息をついて椅子に座る。


 「スリーブ、換えようかな……」


 机の上に置いてある自分のデッキを手に取りそう呟いた。

 この日のために、新しくカードを守るためのスリーブを付け替えたのだが、激しい戦いでいくつも傷や汚れがついてある。

 鞄から予備のスリーブを出し、今着けているスリーブと入れ替えようとしたのだが、慌ててカードを取り落としてしまった。

 手が震える。情けない。なんて有様だ。俺は去年の『王者チャンピオン』だというのに。

 仲間達も会場で俺を応援してくれている。

 自分をここまで強くしてくれた師匠……”王様”のためにも、もっとしっかりしないと。


 「優ちゃん、大丈夫?」


 その時、突然幼なじみの声がして慌てて振り返った。


 「……奏星。どうして?」


 部屋の入り口に、奏星が立っていたのだ。

 驚いた。カードゲームが嫌いな奏星は、普段からショップなんかには来ないし、むしろ俺をそういう場所には行かないように言ってくる。

 この大会が開かれる巨大展示場も、そういう場所にあたるだろう。

 彼女はちょっと肩をすくめてバツが悪そうに苦笑した。


 「優ちゃんの大事な試合なんでしょ? 仕方ないから応援しに来たんだよー」


 「そっか……ありがとう」


 正直言って、嬉しかった。

 カードゲームが嫌いなはずの少女が、わざわざカードゲーム好きしかいない空間にまでわざわざ足を運んで俺を応援しに来てくれた。

 心細かった気持ちや、不安がすっとどこかに消え去っていくようだった。


 「でもここ、選手以外立ち入り禁止なんだけど……」


 「いいのいいの! あ、ねぇこれ、入れればいいの?」


 机の上に広げてあったスリーブとカードを取ってそう言う。手伝ってくれるらしい。


 「……ああ、お願い」


 部屋の端に置いてあった椅子を持ってきてそこに座らせて、二人で古いスリーブを取り外して新しいスリーブに付け替え始めた。

 しばらく黙々と作業をしていたが、ふいに奏星が口を開いた。


 「優ちゃんは、カードゲーム、ずっと続けるの?」


 「……たぶんそうじゃないかな」


 やめるなんて考えたことがない。

 まぁ今年は高校受験のための勉強もしないといけないのだけど、そんなに難しい学校に行くつもりはない。


 「大人になっても?」


 「どうだろう……続けてるんじゃないかなぁ」


 王様だってそうだけど、カードゲームをする大人はたくさんいる。

 この会場にだってそうだ。

 彼らは年は離れているがご飯を奢ってもらったりして可愛がって貰っている。

 俺からしたらまさに大きいお友達だ。その瞳の輝き、カードゲームにかける思いは俺と変わらない。いや、それ以上かもしれない。

 俺は、彼らのようになりたかった。


 「そっかー」


 なんだかとても残念そうに聞こえた。

 その時、ガチャッと扉が開いた。


 「ユーマ選手。そろそろ決勝のお時間です……ってあ、ちょっと勝手に入ってこられたら困りますよ!」


 大会スタッフが入ってきて、奏星を見つけて顔をしかめる。


 「ごめんなさい! ちょっと彼に忘れ物を届けててー!」


 ぺろっと舌を出しながらひょいっと逃げる。


 「じゃあ、またね優ちゃん」


 「うん……また」


 さて、時間だ。

 立ち上がり、デッキを取って決戦の舞台に向かう。

 ステージの上に立つ。

 会場に埋め尽くされた、人、人、人。

 それだけではない。ネット中継もされていて、何万人、何十万人の人が俺たちの戦いを見守っている。でも、俺はこの空気を既に知っている。去年経験し、その恐怖に打ち勝った。だから、今年もきっと大丈夫だ。


 「……よろしくお願いします」


 「――よろしく」


 対戦相手は、カイザーというプレイヤーネーム。

 小柄で、ミュージカルで見るような西洋風のマスクをつけているせいで、顔がほとんど見えない。

 ちょっと不気味な雰囲気を持つ男だな、と思った。

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