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カードゲームは卒業したのにTCG学園に放り込まれたんだが ~イカサマ王と呼ばれた俺はカードゲームなんかしたくない~  作者: ゼ二平


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第28話 勝手にするね

 俺の部屋の入口には現在阿修羅が立っている。


 「あっ……か、奏星……」


 親愛なる幼なじみは、今まで見た事のないほどのにこにこ笑顔だった。

 どれだけ機嫌よくてもここまで笑顔になった事は無いだろう。

 どうやら怒りのゲージが限界突破するとこうなるらしい。15年以上一緒に過ごしてきた幼なじみでも初めて知る事があるんだなぁ。


 「今日は掃除当番だったのに、お友達が代わって欲しいって言ってきて、不思議だなって思ったの。早く帰ってこれを止めないといけないってことだったのねー」


 奈津には意味が分からない言葉だろう。

 俺も、油断していた。まさか、奏星の”運”がこんな風に働くなんて。


 「女の子を一人暮らしの男の部屋に連れ込んで、二人っきりになるなんて。サイテー」


 それはツッコミ待ち? 普段から勝手に男の部屋に上がりこんで二人きりになっているのは誰だ。


 「あたしは自分から優ちゃんの部屋に入ってるから、連れこまれたわけじゃないよ。よってセーフ」


 考えていることなどお見通しとばかりに、先に言われてしまった

 「あたしは優ちゃんをそんな風に育てた覚えはないんだけどなぁ~」


 理不尽に責められる俺をかばうかのように、奈津が奏星に食ってかかる。


 「この人はあなたの子供じゃない」


 「ふーん?」


 奏星はゴミを見るような目で奈津を見てふん、と鼻を鳴らす。


 「優ちゃんはあたしの幼なじみみなんだからー。関係無い人は黙ってて?」


 「黙らない」


 恐い。正直、今この場にいない武束に助けを求めたい気分だ。

 ……まぁ、あの男はいたところで面白そうににやにや眺めているだけもかもしれないが。


 「あなたー、優ちゃんの何なの?」


 「彼は私の英雄ヒーロー。私は彼の仲間」


 「何? 英雄ヒーロー? あなたヒロイン面? ばっかじゃないのー? そういう子供みたいなのは、中学校までに卒業しておきなさいよ?」


 しばらく睨み合いが続いたが、ふいに奈津が立ち上がった。


 「帰る」


 「……あ、待って奈津」


 濡れた服をガッと鞄に積め、そのまま飛び出した奈津に慌てて立てかけてあった傘を渡す。


 「えっと、ごめん。奏星も普段はああじゃないんだけど……」


 「あの女は危険」


 危険? 奏星が?

 確かに今の彼女はどういうわけか繁殖期のカラスぐらい危険だけど、普段はそんな事は無い。


 「まるで子供のよう。何でも自分の思い通りになると思っている。思い通りにならなかった時に。あなたを傷つけるかもしれない」


 「……まさか」


 奏星が俺を傷つけるなんて、想像もできない。なんせ。


 「奏星は……俺の大事な幼なじみだから」


 俺が一人ぼっちになってしまった時でも、彼女はずっと一緒にいてくれた。

 何があっても、奏星は俺の味方だ。俺を傷つけるなんて考えられない。


 「本当に彼女が味方ならいいのだけれど」


 そんな意味深なことをいって彼女は帰っていった。

 部屋に戻ったら奏星はまだ不機嫌そうにしていた。


 「えっと、奏星……なんで奈津にあんな事言うの?」


 「だってあの女が、優ちゃんをたぶらかそうとするからー」


 「……たぶらかすなんて」


 せいぜいタオル一枚で風呂から出て来たぐらいだろう。

 まぁ、だいぶ動揺はさせられたけど。

 あとはそう、顔がくっつきそうになって……。 


 「優ちゃん、顔真っ赤ー」


 さっきのことを思い出してあたふたとする俺を、彼女はただただ不愉快そうに睨んでいた。


 「と、ともかく……喧嘩しないで仲良くしてよ。奈津は俺にとって大事な仲間なんだから」


 「仲間ねー……仲間、かー」


 突然、顔をじっと見つめてきた。


 「優ちゃんは、あたしに隠しごとなんかしてないよね?」


 「…………」


 その質問は……まずい。

 何も言えない。どう答えても、全てを見透かされてしまう。


 「そうなんだ。ふーん」


 だが、ここで沈黙するのは肯定と一緒だ。


 「奏星、俺……」


 どうにか言い訳をしようとしたのだが。

 奏星が手に持っていた物を見てぎょっとする。

 『白金の英雄―シルバーレオン』。奈津の大事なカードだ。

 しまった。さっき俺がケースから取り出してしまったばかりに、そのまま忘れていってしまったんだ。


 「これ、優ちゃんの?」


 「それは……奈津の大事な物だよ」


 「これ、紙遊びのカードだよね? 優ちゃん、卒業したはずだよね? ……まさかまた、優ちゃんもやってるんじゃないよね?」


 またしても、何も言えない。でも、それはやっぱり悪手で。


 「そっかー。優ちゃん、約束破るんだ」


 奏星はにっこりと微笑んだ。


 「じゃあ、あたしも勝手にするねー?」

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