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飛空艇にて、空賊と踊れ!  作者: 石動なつめ


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17/22

彼らも彼らでそれなりに


 ロッソの部屋は格納庫より一つ上の階にあるらしい。

 ヴェントはこの飛空艇の内部の構造を熟知しているらしく、進んでいる途中で何度か空賊達と遭遇しかけたが、上手く隠れてやり過ごすことができた。

 何で知っているのかと聞いてみると、ヴェントは「まぁ昔色々と」という返答だった。


 そうして私達は無事にロッソの部屋まで辿り着くことが出来た。

 部屋の扉にはバイソンを模した金色の立派なドア飾りがついている。なかなか精巧な出来の飾りだ。

 少し感心しながら、私達はそっとドアに耳を当てて、中の様子を探る。

 

「ハッハッハ! やったなビアンコ! ヴェントの野郎に一泡吹かせてやったぜ!」

「まだ吹かせてないでしょ。つーかロッソ、あんまり調子に乗るなよ。今まで大体それで失敗してきただろ」

「乗ってねーよ。ッカーーーー! 酒が美味ぇ! おいビアンコ、お前も飲まねぇ?」

「バーカ。俺はこれから操縦の交代時間だよ。酒なんて飲んでいられるかっての」


 どうやらこちらもこちらで酒を飲んでいるらしい。

 声の様子を聞く限り、ロッソ以外にもう一人、ビアンコという空賊がいるようだ。

 上機嫌のロッソと比べると、ビアンコの方は冷静そうだ。


「ビアンコはロッソの右腕ですよ。腕の良い狙撃手です。ま、室内じゃ、ご自慢の狙撃銃は使い勝手が悪いでしょうけれど……ハンドガン辺りは持ってますかねぇ」


 小声でヴェントがそう教えてくれた。なるほど、と頭の中にメモをする。

 しかし腕の良い狙撃手と聞けば、これがもし平時であれば一度、腕を競ってみたいものだ。

 そんなことを考えながら中に入るタイミングを計っていると、そこで別の声も聞こえ始めた。


「お、おおお、お前達! 何が目的なんだ! 金か! 金ならいくらでもやる! だから頼む、私と娘を解放して、あわよくばどこか別の国に逃がしてくれ!」


 この声はウィルソン・バートだな。しかも空賊と取引して逃亡しようとしている。

 相変わらずだなぁなんて思いながら聞いていると、


「ハァ? 勘違いしてんじゃねーよ。俺はマリーノの連中にひと泡吹かせてやりたかっただけ。んで、あんたらは手違いで落っことしちまったから助けただけ。ついでに良い餌になりそうだから乗せてるだけ。なのに何で俺が、お前らにそんなことしてやらなきゃなんねーんだよ?」


 ロッソはバッサリと拒否した。

 おや、と私は意外に思った。ウィルソンの言葉には具体性はないが、大金を手に入れるには良い機会なのに食いつかないとは。

 そう考えていると、ビアンコと呼ばれた空賊が、


「まー、こいつにそういう類の取引は通用しないから諦めな。手錠つけてるところ見ると、あんたとそこのお嬢さん、シャヘルに取っ捕まってんだろ? そういう奴らの手助けして金が入ったところで、後々ろくなことがないんだわ」


 と笑って言った。ロッソも「そうそう。そういうろくでもねぇ金には手はつけねぇ」なんて言っている。

 彼らも彼らで矜持のようなものがあるようだ。


「実際に必要だったのはロメオだけだから、他はどっかで下ろしても良かったんだがなー。うちのボスがシャヘルの船に突撃なんてさせるから、下手なことできねぇんだよ。そこのお兄ちゃん、シャヘルのシルトムーロ制服着てるしよ」

「うるせーお前だって反対しなかったじゃねぇか」

「俺その時、マリーノの連中と撃ち合ってたんだけど?」


 空賊たちはそんな調子で言い合っている。

 ビアンコの口ぶりから、その場に兄やロメオがいることも確定のようだ。

 よし、と思いながらヴェントを見る。彼は軽く頷いて、


「そろそろ」


 と短く言った。そしてピカデリー宅配の制服のポケットから、閃光手榴弾(スタングレネード)を取り出した。

 以前に使われた、光だけのあれだ。

 そしてヴェントは私を見てドアノブを指さす。指示したら開けろ、ということらしい。

 了承の意味をこめて頷くと、私はドアノブに手を伸ばす。


「そう言やお前、ヴェントとイチャイチャしてた女と顔が似てるな。兄弟かよ?」

「別にイチャイチャはしてないし完全に初対面だよ。っていうかあんな大音量のスピーカーで見当違いなこと言われて完全に風評被害だよ、嫁入り前のうちの可愛い妹に何てことしてくれるの?」


 ヴェントの指示を待っていると兄の声も聞こえてきた。

 というかまだイチャイチャしてると思っていたんだ、あの空賊。


「え……初対面であの距離感……? それちょっとヤバくない……?」

「何でちょっと引いてるの、この空賊」

「すまんなお兄ちゃん、こいつ変なところで純粋(ピュア)なんだよ」

「縄が解けたらぶっ飛ばしてやりたい……」


 兄よ、私も同感だ。ドアを開けたら私もロッソの横っ面をぶっ飛ばしてやりたい。

 半眼になっているとヴェントが小さく笑い、そして。


――――いま。


 口を動かし、そう言った。

 そのタイミングで私は勢い良くドアを開ける。視線が一気にこちらへ集まるのが分かった。

 それに構わず私は、


「兄さん、閃光(ブリッツ)!」


 と兄に向かって叫ぶ。横目にロッソとビアンコらしき人物が、反射的に銃を抜くのが見えた。

 けれど、それよりも早く。


 ヴェントが閃光手榴弾(スタングレネード)を中に放り込んだ。


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