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飛空艇にて、空賊と踊れ!  作者: 石動なつめ


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青色の飛空艇


 空に放り出された後のことは、あまり良く覚えていない。

 ただ同じく放り出された兄達が、金色の飛空艇からワイヤーを命綱に飛び降りた空賊たちに助けられているのだけは分かった。


 ――――ああ、良かった。


 他の人が、特に(かぞく)が無事なら良かった。

 安堵しながら落下していく自分の体を、ヴェントが庇うように力強く抱きしめていた感覚だけは記憶に残っている。


 そうしてどれくらい時間が経ったのか。気が付いた時には私は、とある飛空艇の中にいた。

 どこの飛空艇かって?

 それはもちろん、私を掴んでいた空賊の船だ。


 落下した私達は、どうやらマリーノ・ファミリーの飛空艇によって救助されたようだ。『ようだ』と言うのは、どうも私は途中で気絶していたらしく、その時のことを知らないからである。

 太ももは痛いし、高い場所から落下したしで、私の図太い神経でも耐えきれなかったらしい。意外と繊細なんだな……なんて言ったら、たぶん兄に「辞書、貸そうか?」などと言われそうだが。

 さて、そんなマリーノ・ファミリーの飛空艇だが。


「もー、だから強引な真似はやめろって言ったじゃない! ほら、この子、顔を覆って泣いてるわよ!」


 先ほどからガタイの良いお兄さんが、私の頭を撫でてそんな事を言っている。

 彼というべきか彼女というべきか少し悩ましいが、このお兄さんはルビーノと言って、マリーノ・ファミリーの船医なのだそう。

 飛空艇に救助されて早々に、私の怪我を見たルビーノが手当てをしてくれたのだ。おかげで感じていた痛みが半分くらいになっている。


 まぁ、それでね。

 それで泣くとか、顔を覆うとか。私が何でそんあ話になっているかと言うと。


「あ゛ーーーー! 格好つけた分、今の状況がかなり恥ずかしいッ!」


 という話である。

 別に泣いているわけではない。格好つけて太ももを撃ち抜いたが、ほぼ無駄だった状態に、冷静になった今かなり恥ずかしくなってきたのだ。

 唸っていると様子を見ていたヴェントは苦笑する。


「元気そうですよ?」

「…………あんた、ちょっとくらい怯えてくれない?」


 ルビーノが半眼になって私を見る。そんなことを言われても今更だし、怖がる要素があまりないので仕方がない。

 助けてくれたし、手当てだってしてくれたのだ。今更怖がれと言われても困る。

 まぁ演技でも良いという話なら、手当てのお礼にやってみるのもやぶさかではないのだが。


「さて、改めて。ヴェント・マリーノです。先ほどは、手荒な真似をして申し訳ありませんでした」

「ああ、いえ。手荒な真似の半分は自分ですので。むしろ助けていただいてありがとうございます。フォルテ・フロストです」


 そんな事を考えていると、ヴェントから改めて自己紹介を受けた。とりあえず返すのが礼儀だろう。


「足、どうです?」

「手当てをしていただけたので問題なく。というか飛空艇から落ちたのに、自分で撃ち抜いた怪我だけで済んだのは奇跡みたいなものです。船医さんも操縦手さんも腕の良い方ですね」

「あら、嬉しいこと言ってくれるじゃない!」


 私がそう言うと、ルビーノは頬に手を当てて笑う。

 その隣で膝の上にタブレットを置いた少女もにこっと微笑んだ。歳はうちの妹と同じ十二歳くらいだろうか。私が見ているとヴェントが、


「この子はフェルマータと言います。彼女がうちの操縦手なんですよ」


 と紹介してくれた。まだ小さいのに、これは驚いた。

 私が目を丸くしていると、フェルマータはにこにこ笑ったまま、膝の上に置いたタブレットを持ち上げた。

 少ししてタブレットがピッと光り、


『今は離れていますけれど、自動操縦中なので、ご安心を』


 と文字が表示された。おや、と私が思っているとヴェントが、


「この子は話せないんです。昔、喉をちょっとね」


 と教えてくれた。なるほど、だからタブレットで。

 しかしこの僅かな時間で彼女はパッと文字を打ち終えている。声が出なくても、会話がスムーズにこなせていることが正直すごいと思った。


「文字を打つのとても早いですね! 私、メールの文字を打つの時間かかるから、ささっと打てるのすごいなぁ」


 思った事を私が言うと、フェルマータは目を瞬いた。それからすぐに持っていたタブレットで顔を隠してしまう。

 あ、あれ。何か傷つけることを言ってしまったのだろうか。

 焦って他の二人の顔とフェルマータを交互に見ながらあたふたしていると、ルビーノがくつくつ笑って、


「褒められると思わなかったから、恥ずかしかったのよね、フェルマータ」


 と教えてくれた。

 えっと思ってフェルマータを見れば、彼女はタブレットから少し顔を覗かせてこくりと頷いている。何となく顔が赤くなっている気がした。

 良かった、傷つけてしまったわけではないらしい。リリと雰囲気が少し似ているからか、余計にどきっとした。

 安心したとたん、ほっと息が出る。

 そうしているとヴェントがくすくす笑う声が聞こえた。


「自分で足を撃ち抜いた時には、これはとんでもないお嬢さんだなと思いましたけれど、やっぱり変わっていますね」

「よく言われますよ」

「そうですか。きっと周りは大変でしょうね」


 その辺りは否定できない。

 私がぐぬぬ、と唸っていると、ヴェントは手を膝の上で組んで、少し真面目な顔になる。


「それではそろそろ、今後についてお話させていただいても?」


 確かに、それは必要だろう。何というか色々な事態が混ざってややこしくなってしまったから。

 私が了承の意味を込めて頷くとヴェントは、


「では、事態の説明から。うちのロメオとあなたのお兄さん、それから一緒にいた二人が、オーロ・ファミリーの飛空艇で連れ去られました」


 と言った。


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