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目覚

 鈍い頭痛が再び裕樹を襲う。そっか、これは酒ではなくあのバニラの匂いのせいだ。裕樹は自分の思考回路を再構築しながら、現状を確認した。周辺は真っ暗で何もなく、床が冷たかった。部屋の四辺は鋼板で固められ、大きな箱という感じだろうか。

 とりあえず、叩いてみる。何の反応もない。大声を出してみたが、密封された箱なので、とても声が外に届くとは思えなかった。

ぱっーと、何の前触れもなく、部屋に明かりがついた。真っ白の蛍光で、長時間暗闇のなかにいた裕樹にはかなり眩しかった。どこかとなくドアが開き、しばらくして、革靴の軽快な着地音とともに、上下を黒いスーツで固められた男性が現れた。片手に500mlボトルの飲料水を持っている。

 その男は裕樹に近づき、ボトルを差し出した。実に冷えたミネラルウォーターである。裕樹は一口飲んでから、ボトルを額に当てた。少し頭痛が軽減されたように思うほど、心地よかった。

 黒ずくめ男の顔はこれまた黒い仮面で覆われているため、容姿と表情を見ることが出来なかった。裕樹は身を起こしながら、じっくり男を眺め、相手の出方を待った。

「大変失礼なことをしたと思っております」

「私たちは決して怪しい者ではありません」、

「このような行動をとったのも、やもえない理由があってのこと」、「心よりお詫び申し上げます」。

「このような事態にあなた様を巻き込んだのは本当に私たちの不手際であります」

「しかし、こうなった以上、ぜひあなた様に納得のいく説明をさせて頂きたく、また、ご理解を賜りたいと思っております」

裕樹は静かに聞いていた。相手が自ら説明を申し出ている以上、こちからは下手に抵抗しないほうが得策でしょう。ましてや、これまでの体験や状況を考えれば、抵抗してどうにかなるものでもなさそうだ。

「わかりました。拝啓しましょう」、「とその前に吉田百合子さんの安否をまず教えてください」と裕樹は気持ちを整理した上で、重い口を開いた。

「わかりました。ご協力ありがとうございます」。

「それでは説明させていただきます」・・・


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