神祖奇譚
某日、とある領域にて――
白く、白く、全てが白に塗り潰されていく。目の前に広がるのは、見慣れた筈の領域。然し其の景色は純粋な白一色で、家具も壁も床も、輪郭さえもが曖昧な光の奔流に溶け込んでいた。此処はフォルティアの領域。そして、此れはフォルティアの幻想。
「……また、夢かぇ」
そう呟き乍ら、フォルティアは自身の掌を見つめる。そこには、まるで宇宙を閉じ込めたかの様な群青色と銀色の光が宿る。これが妾の力。そして、妾の存在の根源。
「――白きデウス・エクス・マキナ」
誰かが、妾の名を呼んだ気がした。然しその声は遠く、霞がかっていた。目が覚めると、其処は何時もの領域だ。白一色に塗り潰された領域ではなく、落ち着いた色合いで統一された、フォルティアのお気に入りの空間である。
然し違和感があった。枕元に見覚えのない花束が、ポツンと置かれていたのだ。純白の薔薇、群青色の竜胆、そして銀色の光を放つ不思議な花だ。
「なんじゃ、これは……?」
フォルティアは首を傾げ乍ら、花束に手を伸ばす。触れてみると、ひんやりとした感触が掌に伝わる。どうやら、只の花ではない様だ。
其の証拠に、花束からは微かに魔力が発せられていた。然し其の魔力はあまりにも不可解だ。純粋な白、全てを侵食し塗り潰す、フォルティアの幻想とは全く異なる、穏やかで柔らかな「白」の魔力。それは、まるで妾の幻想を否定するかの様な、同時に深く共鳴するような、矛盾した性質を帯びていた。
「……面白い。妾の知らない力かぇ?」
フォルティアは好奇心に火がつき、早速花束を調べる事にした。先ずは、全知全能を発動する。
妾の瞳が深淵の宇宙のような輝きを放ち、花束に秘められた情報が、無限の情報流となって妾の脳裏に流れ込む。この花は特定の物質から、構成されている訳ではなく、特定の次元に属している訳でもない……これは、概念其の物だ。
「……成る程、これは【無垢なる白き心臓】かぇ」
情報が全て読み取れた瞬間、フォルティアは感嘆の声を漏らす。この花束は、只の花ではない。これは或る世界を救う為に、一人の少女が自身の心臓を花束へと変え、未来の希望として託した代物。
少女の心臓は、純粋な希望の結晶だ。そして其の希望を託されたのは、世界の観測者であり創造者でもあるフォルティアだった。
「随分と無茶な事をしおって……。」
少女の行為に、妾は胸が高鳴るのを感じた。無謀で純粋な希望。それは、フォルティアの好きなものの一つだ。然し問題が一つある。少女が心臓を花束に変えた代償として、彼女の命は消え去ってしまった。此の儘では、彼女の世界は希望を失い、軈て緩やかに滅びてしまう。
「よし。それならば、妾が手出しをしてやろうではないか。」
フォルティアは花束を手に取り、立ち上がる。面白そうな事には、深く関わるのが彼女の性分だ。この花束が、妾の元に届いたのも何かの縁だろう。
「……あの娘っこの思いが詰まった花束を、只の飾り物にしておくのは、どうにも妾の性分に合わんのぅ。」
彼女は微笑むと、世界渡航を発動した。純白の円形ゲートが自室に開き、その内部には無数の世界の風景が万華鏡の様に映し出される。フォルティアは花束の情報を元に、少女がいた世界へとゲートを開く。
到着した世界は、灰色に染まっていた。空は鉛色に淀み、大地は罅割れ、生命の気配は薄い。此処は少女が心臓を捧げた世界……彼女が残した最後の希望が此の花束だ。
「さて……此処を、どう面白くしてやろうかぇ。」
フォルティアは取り敢えず、花束を掲げてみる事にした。途端に花束から、純粋な希望の光が溢れ出し世界を浄化していく。灰色の空に青い光が差し込み、罅割れた大地から緑の芽が顔を出す。
少女の残した希望は、世界の再生を促す力を持っていた。然し此の儘では不完全だ。少女が居ない儘では、世界は希望を失い再び滅びの道を辿ってしまう。だからこそ、フォルティアが介入するのだ。
「さて……創造するとしよう。」
フォルティアの手から、純白の光の奔流が放たれ、花束に触れた。すると、花束は光の中に溶け込み、真っ白なキャンバスと化した。
そして其のキャンバスに、フォルティアは新たな絵を……少女の記憶や心臓、そして少女の希望を描いていく。それらを全て再構築し、世界に新たな少女を創造する。
「ふふふ……妾に、不可能はないからの。」
フォルティアはにやりと笑い、最後の仕上げをする。純白の輝きを放つ鎖が、創造された少女の魂を捕縛する。これは少女をフォルティアの子孫として、新たな生を与える為の儀式。
彼女の魂をフォルティアの支配下に置き、妾の持つ力の一部を彼女に継承させる。これにより少女は新たな生を得て、この世界に希望をもたらす存在となる。そしてフォルティアは少女の瞳に、自身の意志を宿した光を灯した。
「お主は、この世界の希望じゃ……さぁ、目覚めよ。」
フォルティアはそう囁くと、創造された少女が、徐ろに目を開けた。彼女の瞳は、純粋な希望の光を宿していた。少女は新たな生を得た後も、以前の記憶を持つ。然し悲しい記憶は薄れ、代わりに希望に満ちた未来を描く力が増幅されていた。
「よくやった、我が子よ。」
フォルティアは優しく微笑み乍ら、少女の頭を撫でた。少女は、満面の笑みで妾を見上げ、深々と頭を下げた。
「神祖様、貴女の御陰で世界は救われました。本当に、有難う御座います」
「構わんよ。お主の希望が、妾を動かしたからのぅ」
フォルティアはそう言うと、少女に一つの花束を差し出した。花束全体から温かく柔らかな光が放たれている。少女が花束を受け取ると、その光は一層強くなり、彼女の心臓の鼓動と共鳴した。花束は少女の、新たな心臓となったのだ。少女の瞳から一筋の涙が溢れ落ちる。
「有難う、神祖様っ……。」
「フフフ……安心せい……そなたの希望は、妾が永遠に守ってやろう。」
フォルティアは少女を抱きしめ、そして……この世界を去っていった。この世界は少女の希望と、フォルティアの幻想により、再び色を取り戻した。そして、少女は新たな世界の創造主として、永遠にこの世界を見守っていく。
フォルティアは、また新しい面白そうな事を探しに次の世界へと旅立つ。フォルティアが去った後、少女は花束を胸に抱きしめ、再生した世界を見渡していた。
「神祖様……。」
少女は再度、彼女の名を口にする。その声には感謝と、そしてほんの少しの寂しさが含まれていた。彼女が新たな世界の創造主として、此れから何を為すべきか検討もつかない。
フォルティアは、その答えを少女自身の心に委ねた。彼女が残したものは、ただ世界を再生させる力だけではない。どんな困難にも立ち向かう勇気、そして何よりも世界を愛する心だった。
「……ただ立ち尽くしては駄目ね……よし!頑張るぞー!」
少女は小さな村から旅を始める。人々は突然の奇蹟に、少々戸惑い乍らも、新たな生命の息吹に歓喜していた。少女は、彼らの話を聞き、その手助けをし乍ら世界を歩いていく。フォルティアは遥か彼方から見守っていた。
「ハハハ、あの子は妾が思っていた以上に、面白そうな事をしてくれるわい。」
フォルティアは、次元の狭間から少女の活躍を眺めていた。彼女の行動一つ一つが、新たな物語のページを紡いでいく。それが面白くて、フォルティアは次の世界へと旅立つ事を躊躇してしまう。然新たな物語の種を探し、それを自らの手で育てる事が、白龍族の神祖であるフォルティアの役割だ。
ある日、嘗てフォルティアが救った、あの少女の世界を訪れた。世界は美しい花々が咲き乱れ、人々は平和に暮らしていた。少女は、世界の創造主として、人々から愛されていた。
「神祖様……お帰りなさい!」
少女は満面の笑みで二人を迎え、フォルティアは優しく彼女の頭を撫でる。
「ハハハ、そなたも随分と立派になったものじゃのぅ。」
「神祖様の御陰です!それに、私にはもう孤独ではありません。私はこの世界の人々を愛し、人々も私を愛してくれます」
少女はそう言うと、フォルティアに一つの花束を差し出す。其れは嘗てフォルティアが少女に渡した花束だ。
「この花束は、私の希望の象徴です。そして貴女の優しさの象徴でもあります」
フォルティアは、花束を受け取り微笑む。彼女の瞳は深淵の宇宙の様な輝きを放ち、少女の感謝と希望が彼女の心に温かく響いた。
「ハハハハハハハ!」
フォルティアは高らかに笑い、再び新たな旅へと向かう。彼女の命は、此れからも続いていく。そして彼女が紡ぐ物語は、この宇宙に永遠に刻まれるのだ。
フォルティアは、次の世界への扉を開く。彼女の周りには、サピエンティア、テンパランティア、ジャスティティア、フィデム、スペス、カリタスといった、大切な友人達が集まっていた。
「相変わらず、気紛れな事だね、フォルティア」
「フフフ、面白い事を見つけたら、妾はどこへでも飛んでいくさ」
サピエンティアが微笑む。フォルティアは応える。テンパランティアとジャスティティアが呆れた様に溜息をつく。
「本当に、フォルティア様には敵いませんね。」
フィデムは静かにフォルティアを見つめ、スペスとカリタスは柔らかな光を彼女に送った。
「さて、お主ら……次は何処へ行くかぇ?」
「どんな世界でも、貴女と一緒なら楽しいわ、フォルティア」
「その通りだ。さぁ行こう!」
フォルティアは、友人達と共に新たな世界へと足を踏み入れた。彼女の背後には、少女が守り育んだ美しい世界が、満開の花々で輝いていた。フォルティアが救った無数の世界からの、感謝と希望の証だ。其れは彼女のを温かく満たし、彼女の無限の旅を祝福するかの様だ。
「さて……次は、どんな物語が待っているかのぅ。」
彼女の楽しげな呟きは、無限の宇宙へと響き渡り、新たな伝説の始まりを告げていた。フォルティアの物語は、此れからも永遠に続いていくのだった。
某日、とある領域にて――
白と銀――そして群青の光が織りなす空間。無限に広がる宇宙を内包したかの様な荘厳な領域の中心で、フォルティアは退屈そうに指を弄んでいた。
「ふむ、最近は面白き事が起きぬのう……」
その呟きは星々の瞬きにも似て、遠く広がる銀河に木霊する。彼女の視線の先には、無数の多元世界が万華鏡の様に映し出される。その中に、一際不穏な輝きを放つ一つの世界があった。
「おや、これは……。」
フォルティアの瞳が、深淵の宇宙の様な輝きを放つ。それは、彼女の幻想の力である【全知全能】が発動した証だ。無限の情報が流れ込み、彼女は瞬時にその世界の状況を把握する。
とある辺境の村。其処では、怪しい集団が【呪いの儀式】を執り行おうとしていた。其れは世界其の物の法則を歪め、特定の存在を消滅させるという恐ろしいものだ。その対象とは、彼女の一族の末裔であり、白龍の血を引く若き少女だ。
「ほう……妾の子に手を出すとは、随分と無鉄砲な者達もいたものだのう。」
フォルティアの唇に、不敵な笑みが浮かぶ。彼女にとって、一族の敵は絶対に許せない存在だ。然し直ちに介入するのは、あまりにも性に合わない。彼女はあくまで【面白き事象】を求める。
「さて、どうしてくれようか」
彼女の背後に、無限の宇宙の縮図が幻影として現れる。それは、彼女の【白】の幻想が最大限に活発化している事を示していた。フォルティアは、この事象をより面白く、よりドラマチックにする為、自身の能力に制限をかけることにした。
「ふむ、直接手を下すのは面白くない……ここは少しばかり、あの子らに手伝わせてやるか。」
彼女はそう呟くと、純白の光を放つ円形のゲートを開き、その世界へと渡航する。彼女の持つ『世界渡航』は、次元の壁を易々と超え、彼女を瞬時に目的地へと運んだ。
異世界の片隅、寂れた廃墟となった古城の一室。フォルティアは、その空間を『創造具現』によって、外界から隔離された特別な場所へと再構築した。まるで真っ白なキャンバスに絵を描くかの様に、彼女の意思一つで現実が塗り替える。
「さて、まずは情報収集じゃ。」
彼女は其の場に誰もいない事を確認すると、自身の仲間であるサピエンティア達を瞬時に呼び出した。純白の光の奔流の中から、其々の神祖が姿を現す。
「フォルティア、どうしたんだい?」
「急に呼び出すなんて珍しいじゃないか」
サピエンティアとテンパランティアが、不思議そうに首を傾げる。
「ふふふ、実はの面白き事象が起こっておるのだ。」
フォルティアは、にやりと笑いながら事の顛末を語る。彼女の言葉を聞いた五柱の龍神は、其々の表情でその事象を受け止める。
「フォルティアの子に手を出すなんて、許せない!すぐに叩き潰してやる!」
ジャスティティアが、怒りに燃える炎の様な瞳で叫ぶ。彼女は、情熱的だが、規律を重んじる性格故、この様な不義を許せない。
「待ちなさい、ジャスティティア。此処はフォルティアの意図を汲むべきでしょう」
スペスが、冷静にジャスティティアを制する。彼女は、宇宙の真理を知る【知識】の幻想を持つ為、フォルティアの真意を理解していた。
「そうですわ、ジャスティティア様。フォルティア様の面白き事象とやらに、付き合って差し上げましょう」
カリタスが、優雅な仕草で微笑む。彼女はスペスと共に、世界の真理を照らす【知識】の幻想を持つ。
「フォルティア……もし、貴女の子に何かあったら、私がこの手で……。」
フィデムはフォルティアに、特別な感情を抱く為、心配そうな眼差しを向ける。彼女の言葉には、言葉にできない深い想いが込められていた。
「ハハハハ、案ずるなフィデム。妾が失敗するわけなかろう」
フォルティアは、自信満々に笑い飛ばす。彼女の言葉に、フィデムは安堵の息を漏らした。五柱の龍神は、フォルティアの命を受けて、其々の幻想を駆使し、怪しい集団の「呪いの儀式」を阻止する為の準備を進める。
怪しい集団が【呪いの儀式】を執り行おうとする廃墟の城。その地下深く、儀式の祭壇には不気味な文様が描かれ、異様な空気が満ちていた。然し其の場には集団の者達だけではない。フォルティアと、彼女が呼び寄せた五柱の龍神達が、儀式の成功を阻止すべく静かに動き始めていた。
サピエンティアとテンパランティアは、祭壇を取り囲む様に広がる呪文の配列を凝視していた。彼女の瞳は深淵の水を映した様に澄み切っており、そこに浮かび上がる文字や記号の一つ一つを解析していく。彼女の幻想は、抽象的な概念の根源を見抜く。
「ふむ……この呪文は水脈の流れを歪め、力の流れを不完全にしているね。」
「なら……やる事は一つだな、やるぞサピエンティア。」
「ふふふ、分かってるよ。」
彼女は空間に水の粒子を漂わせ、呪文に微細な干渉を加える。此れにより、呪文の構造は更に不安定な物へと変わる。テンパランティアは、サピエンティアの水の粒子を助ける為に、木と植物の粒子で水の流れを誘導させる。
ジャスティティアは、祭壇を覆う強固な結界を前に、その拳を固く握りしめれ。彼女の体からは、マグマの様に熱く燃え上がる力が溢れ出す。彼女の幻想は規律を重んじる意志其の物であり、不義なる結界を打ち破る為の情熱を力に変える。
「不純な結界等、この俺の炎で焼き尽くしてくれる!」
彼女は雄叫びを上げると、拳から放たれる紅蓮の炎を、結界の最も脆弱な一点へと集中させた。御陰で結界は呆気なく破壊される。
フィデムは、儀式の準備をする集団の動きに目を向ける。彼は土の幻想を使い、地面から生み出した生物達を、集団の視界の端に現れさせる。其の影は彼女の美の幻想により、見る者を惑わせる程に精巧で美しいものだ。
「さぁ、貴方達の注意を少しの間、此方に頂きましょうか」
彼女が創り出した幻影達が、幻想的な光を放ち乍ら舞い踊る。集団の者達は、その美しさに目を奪われ儀式の手を止めてしまう。スペスは光の幻想を使い、集団の注意がフィデムの幻影に向いている隙を見計らっていた。彼の知識の幻想は、未来の可能性を予測し、最適なタイミングを正確に知る事ができる。
「よし、今だ!」
彼の声は、フォルティアの脳裏へと直接響き、彼女の指示を待っている。カリタスは集団の者達の背後、影の中に潜んでいた。彼女の闇の幻想は、光の届かない場所で其の真価を発揮する。
彼女の知識の幻想は、人々の心の闇や欲望を読み取る力を持つ。彼女は集団の心の奥底に潜む恐怖や疑念を増幅させ、囁く様に心を惑わせる。
「お前達の儀式は失敗する……その先にあるのは破滅だけだ。」
彼女の囁きは、集団の者達の心を蝕み、彼らの顔に疑心暗鬼の表情を浮かび上がらせる。そして其の全てを統括するフォルティアは、祭壇の上空から静かに集団を見下ろす。彼女の瞳は深淵の、宇宙の様な輝きが放たれ、全てを把握している事を示している。
「さあ、最後の仕上げと行こうか。」
彼女はそう言うと、右手の指先から純白の光線を放った。その光線は、呪いの儀式という事象に触れると、白い文字と記号の羅列へと変化し、フォルティアの意の儘に編集されていく。彼女の『事象編纂』は、失敗の確率を限りなく高め、成功の可能性を完全に消し去った。
儀式は佳境に入っていた。怪しい集団は祭壇の前に立ち、不気味な呪文を唱え続ける。しかし、彼らの唱える呪文は、サピエンティアによって欠陥を見抜かれたものだった。
「ググ……何故だ!呪文がうまく機能しない!」
集団の一人が、焦った声で叫ぶ。その声を聞いた他の集団も、同様に混乱し始める。彼らの様子を見て、ジャスティティアは計画通りに動き出す。
「今だ、行くよ!」
彼女の放つ峻厳の炎が、祭壇を覆う結界を焼き尽くす。結界が破壊されたのを見て、フィデムが創り出した美しき幻影が集団の目を欺く。集団は其の幻影に惑わされ、儀式を中断せざるを得なくなった。
「我らは、偉大なる御方に仕える者!邪魔をする者は……」
集団の一人が、叫びながら反撃を試みる。然しカリタスが放つ闇の力が、彼らの心を惑わし戦意を喪失させる。
「我らは、汝らの行動を全て見抜いている。」
スペスが、光の幻想を放ち乍ら集団に告げる。彼の言葉は、彼らがこの儀式に失敗するという未来を示唆していた。
そして最後に、フォルティアが動く。彼女は怪しい集団の【呪いの儀式】という事象を、自身が最も面白く、そしてハッピーエンドとなる様に『事象編纂』で書き換えた。
「ハハハハ、後は妾に任せよ。」
フォルティアの全身から、宇宙を凝縮したかの様な群青色の光が溢れ出す。それは彼女の『森羅万象』が、発動した証だ。彼女は集団が作り出した【呪いの儀式】という、概念其の物を掌握し無力化する。
「お主らの儀式は、妾が受け取ってやろう」
彼女はそう告げると、其の場の空間を一度、純粋な「白」に塗り潰した。そして彼女が望む、在るべき形へと再構築する。其れは呪いの儀式が、祝福の儀式へと変わるという驚くべき光景だ。
怪しい集団は儀式の失敗に絶望し、意気消沈してその場から去っていく。彼らが去った後、儀式にかけられていた少女が目を覚ます。
「此処は……?」
少女が不思議そうに辺りを見回す。彼女の体は呪いではなく、祝福の力で満たされていた。其の光景を見て、フォルティアは満足そうに微笑む。
「良かった。無事だったんだね」
サピエンティアが、安堵の表情で少女に声をかける。他の四柱の龍神も、安堵の表情を浮かべていた。
「ハハハハ、これで一件落着じゃな。」
フォルティアは、そう言って笑うと、再び純白の円形ゲートを開き、自身の領域へと戻っていく。
「さて、次の面白き事象を探しに行くか。誰か、妾に面白い物語を持ってきてくれる者はいないかえ?」
その声は星々の瞬きと共に、無限に広がる宇宙に木霊する。彼女の探求は、此れからも続くのだった




