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41.風そよぐ地下道は

 祠に戻ると、ジンが若い守護騎士と話しながら待っている。

 思ってるより早く、再配置の指示と、不在時の対応やらが済んだんだろうな。


 浮足立ってしまう若さが出てしまってはいたが、俺に色々言われてもへこまずに、補佐としてしっかりと働きを務めてきたようで安心だ。


「よ!待たせたな」

「いえいえ!みなさん、ゆっくりできましたか?」

「お腹いっぱい元気いっぱいです〜っ」

「いくらでも歩ける自信あるぜっ」


 ダンジョンとは違う、地下を進む。そのワクワクで目を輝かせてるソノラとサラ。


「それはそれは……では、5日間寝ずに参りましょうか?」

「ひぇ……」

「せ、せめて2日は寝させて……」

「なははっ!冗談言って怖がらせるなよジン〜!」


 不敵に笑ってソノラとサラを脅かすジン。ふたりの反応がいいのを、面白がってるみたいだ。


「え?本気ですが?」


 嘘か本当か分からない言い方と表情をする。ジンのうさんくささを忘れていた。怪しげなオーラを発したジンに威嚇しながら、ソノラとサラはフランメの後ろに隠れた。


「ブルル……っ!」

元素神馬(エレメゴッズホース)さんにそんな顔をされては、ゆっくり行くしかありませんね〜」

「そんなバカげた行程、俺もゴメンだよ。中には休息所くらいあるだろ?ふつーーーに行くぞ〜」


 ジンを先頭に、祠の中の階段を降りていく。その後ろを俺。その後ろに、ソノラとサラを守りながらフランメが続く。


 階段はなかなかに深くまで続いていた。祠の出入り口から差し込んでいた外の光がなくなり、地下道内に一定間隔で備え付けられているランタンの光だけになった。


 階段を降りきり、整備された真っすぐな道を進む。閉鎖された場所のはずなのに、時折そよそよと風の流れが感じられる。

 この風の流れがないと、息をすることができないのだと思うと、少し怖さも感じる。


 ゾクッとするその感覚は、地下道内の気温のせいもありそうだ。


「思った以上に、冷えてるんだな」

「地上の熱が届かない深さに造ってありますから、快適に移動ができますよ」


 長期保存できるように、各所の村でも地下に穴を掘って貯蔵庫にしている所は多い。地下道も同じ原理で造ったんだろうな。


「お師様っお師様っ」

「ん?どったのソノラ?」


 なぜかコソコソ声で俺に話しかけてくるソノラ。


「ランタンの横にある緑色のはなんですか?ピカッと光ったり消えたり……不思議です」

「おお?祠の入り口の鉱石と繋がってる、空調用の風の石だな」

「自然に風を送ってるってこと?」

「なわきゃないさ〜……ま、わからないのは仕方ないか」


 サラも疑問に思っていたらしい。数十m進むごとにランタンにぶら下がっている風の石。先頭を行くジンがそこにすれ違うと、ホタルの様に柔らかい光を発して、緩やかな風を生み出している。


「予備動作もなにもないが、ジンが元素を練って送り込んでるんだ」

「「ええっ?!」」


 驚きの声を上げ、疑いながらジンを見つめるふたり。次の風の石を通過する時、更に目を凝らしてジンを見ていた。


「ふふっ」

「「!!」」


 チラッと振り向き、笑顔を見せたジン。

 目が合った途端、ソノラとサラはフランメの後ろに戻ってしまった。そして、なにやらふたりでコソコソと話をしている。聞き取れたのは「わ、わからなかった」という悔しそうな声。


「くくっ!腕を上げたな、ジン」

「ここまで悔しがられるなら、もっと精度を上げなければいけませんね〜」

「そんなに嫌われたいのかお前……」

「いえいえそんな!かわいらしくて、つい構いたくなってしまうだけですよ」


 その笑顔が怪しいんだが。

 背中に刺さる視線を、嬉しそうに受けて進むジン。

 楽しそうで羨ましい。変わり映えのない道に少しずつ気が滅入ってきている俺。


「退屈そうな顔をなさらないでくださいよ」

「そうはいっても……いや、ここで愚痴るのは風の守護騎士達に失礼になるな……」

「ふふ……そういう気遣いが出来るレイルさんに、サローノ様は惹かれたのですねぇ」


 まーたぶり返してくれる。


「随分と俺とサローノの関係を口にするな?ジン?」

「そ、そうですか?」

「う〜ん?まさかお前……サローノの事好きなのか?」


 仕返しのつもりで、冗談で言ったつもりだった。

 だがどうだ?ジンの耳がみるみる赤く染まっていく。


「そっ、そんそんなわけ!!たしかに?!守護騎士として?!お慕いしてはいますがそんな邪な気持ちで私は努力してきたわけではないです?!」

「お、おい……冗談、冗談だからおちつ――」

「たとえ?!本当にそうだったとして?!この機会にレイルさんをわざと煽って焦らせて?!マヌケにヘマするところをサローノ様にお見せして諦めさせてやろうなんて思ってませんよっ?!」

「おお……」


 これはひどい。

 図星を突かれて、心の声が口から全部出たな?


「はっ!いえ!ホントそんなことないですから!!」

「ほんとに性格悪かったな……」

「嫉妬深い男はモテないです」

「……あ!休息所がみえてきましたぁ!休みましょ〜〜!」


 ……逃げやがった。

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