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40.補佐たるものは

 協力するもなにも、風の元素神殿(エレメテンプルム)に向かえない。それじゃ帰ろう、ってわけにもいかない。

 こんな序盤でつまずくとは思って無かった俺は、腕を組んで唸るだけ。


「あの……ひとつ聞いてもいいですか?」


 そんな中、小さく手を挙げたのはサラ。ジンに質問がある様だ。


「そんな危ない地上を、ジンさん達は歩いてきたわけではないんですよね?なら……どこから?」


 目からウロコ。アホみたいに口が開いて固まる俺。ソノラも手を叩き、サラに続いて声を上げた。


「確かにです!神殿はここからまだまだ先なんですよね?まだ凪の初期段階で移動したとしても、そんなに危険だとおっしゃるところを歩いてくるはずないです!ね!お師様!」

「お、おう……確かにそうだな?」


 ジンを見つめる俺たちの視線。

 その視線にジンは、観念した顔ではなく、待ってました!と言わんばかりに鼻の穴を膨らまして言った。


「お教えしましょう!お見せしましょう!さっ!こちらへ!」


 いそいそと、俺たちを家屋から連れ出したジン。村の北側の端に案内された。


「これは……?」


 そこにあったのは、3mほどの高さがある祠。入り口は開放されており、すぐ先に地下へ向かう階段が見える。自慢げに祠に手を添え、ジンは言った。


「ジャジャ〜ン!!この祠は!中心都市と繋がっている大地下道の入り口になっているのです!」

「「お、おお〜〜!!」」


 なるほどな。地下であれば、地表の温度の上昇の影響を受けない。ここを通れば、安全に移動ができるわけだ。


「ちょうど私も報告を届けるために移動を考えていましたので……一緒に向かいませんか?」

「断る理由はない……と言うか、断れないだろ、ジン?この入り口の鉱石……風の元素使いが居なきゃ作動しない空調だろ」


 ジトッと俺はジンを睨んだ。苦笑いしながらジンは答える。


「さすがレイルさん……そうです。数十kmも長く続く『地下』の道です。風を流し、空気を入れなければ窒息します」

「あっさり怖いこと言うんだこの人……」

「性格悪そうです……」


 隠してた訳じゃないだろう。だが、ジンに会う前に、ソノラとサラがここを見つけて飛び込んでたら外交悪化間違いなしだったぞ?


「まぁまぁ……今はどこかしらで守護騎士が移動してますから、常に風が流れてますので安心して下さい?」

「なーにニコニコ笑ってんだ?元素を持たない村の子供が間違って入ったら危ないだろーが。見張りは常につけておけ」


 補佐が、聞いて呆れる。村の環境を一定にするという命令を重視し過ぎだ。本来守るべきものを守る。そのためにもしなければならない、小さくも大事な仕事を疎かにしている。


「ですが……」

「なにか起きてからじゃ遅い。お前は責任を取れるのか?取るのはサローノだろ」

「……はい」

「ジン、補佐になってどれくらい経つ?」

「まだ、ひと月ほどです……」


 ジンにとって、初めてと言っていい大仕事になるんだろう。目の前のことだけに、一生懸命になり過ぎた。張り切り過ぎた。そんなところか。


「民を守るためのサローノの命令を、民の命を奪うものにしようとするな……ずっとサローノを見てきたお前ならわかるだろ?細かいところにも、気を配れよ?」

「ってぁ……すみません……」


 ジンにデコピンをして、お説教は終わりだ。


「それじゃあそれぞれ荷物をまとめて再集合でいいな?」

「承知しました。お昼もまだのようでしたら済ませて来てください。私は……配置を見直して指示を出してからなので、少し時間がかかりますから」


 一旦ジンと分かれ、宿に戻る。


「おっさん……やっぱ代表守護騎士なんだね」

「え?」


 朝食兼昼食を摂りながら、サラに感心される俺。


「地下道の細工?にすぐ気付いたのもだけどさ、ジンさんへのお叱り……かっこよかったぜ?」

「お師様意外と仕事人間みたいなんです。僕もびっくりすることばかりですよ〜」

「そんなに褒めてくれるなら、お前たちにもしてやろうかぁ〜?」


 ニッと怪しく笑ってやると、ソノラとサラはすごく嫌そうな顔をする。


「見てる分にはってことだよおっさん……俺は、いつもの方が好き」

「僕も、いつものお師様が大好きですっ」


 突然の告白。柔らかい笑顔を向けてくれるソノラとサラ。

 俺は嬉しすぎて泣きそうになる。


 だが!


「でも勝手に話をしに行ったのはゆるしませーん」

「うっ」

「ふぇ」


 ここはさすがに、ハモらないみたいだ。


 買い物くらいなら構わないが、なにか気になることがあれば一度俺に相談すること。ダンジョンでなくても、無茶な行動はしないよう言いつけた。


「腹も膨れたな?じゃ、それぞれ荷物をまとめておいで」

「「は〜い!」」


 暑い中を進まずに済むことが分かったことで、いつも通りの元気が戻ってきているみたいで良かった。


 部屋の荷物を持ち出し、俺は馬屋のフランメの元へ行く。


「――って事で、地下を行く事になった。フランメ……お前も暑い思いをしなくて済むよ」

「ヒンヒンヒ〜ン」


 撫でてやると、嬉しそうに鳴いてくれた。こういう時こそ、喋ってほしいところだけどな。


「お師様〜!フランメ〜!」

「準備できたぜ〜!」


 気が重いのは変わらないが……神殿に向かって、いざ風の大地下道へ!

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