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38.寝坊の結果は

「ふご……っ!」


 夢なんて見ることもないくらいの爆睡をかましてしまった。

 久しぶりの快適な環境下での睡眠だもんな。きっとソノラもサラもまだぐっすりだろう。


「……慌てることもないか?」


 のんびり洗顔し、着替える。ふと、窓の外をみた。太陽は見上げるくらいの高さにある。


「いや、流石にまずいな」


 万全に、体調を整えた。そう思えばいいのだが、風の代表守護騎士様の顔がチラつき、俺は焦った。

 早足で廊下に出て、ソノラとサラの部屋のドアを叩いた。


「起きてるか〜?お〜い?開けるぞ?」


 返事も物音もしない。相当ぐっすりなのだろうか?見た目は女の子みたいなふたりだが、性別はちゃんと男の子。遠慮なくドアを開く。


「いない」


 起こすと言った俺が、寝坊をしたのが悪い、な。とっくに起きて、元気に村を見て周ってるかんじか?

 起こしてくれなかったのはちょっと寂しかったが、ふたりを探すため、宿を出る。


 俺の故郷の村より、住人は少ないように見えた。

 今が異常事態なのもあるとは思うが、派遣された守護騎士の方が多いみたいだ。お揃いの騎士服、数人で集まり、報告をし合って、駆け足で移動している。


 規則正しい行動をする姿は、なんとも言えない不安感を煽らせる。


「……なんだ?村に着いた時とは様子が違う?」


 そうだよ。こんなに、守護騎士が集まるわけがない。


 目の前で走り抜けていった守護騎士の後を追う。村の中心部から少し離れた所に向かっているようだ。


「人だかり?」


 村の中でも、大きめの家屋に着いた。追っていた守護騎士は、入り口から中を覗くほかの守護騎士の仲間入りをする。


 俺も、そーっと近づく。話し声が聞こえるくらいの距離で、聞き耳を立てる。


「女の子?」

「男の子だってよ?なんか、火の守護騎士の弟子とか」

「弟子がなんでこんな所に?」

「なんだっけな?『お師様は事切れました!』とか騒いで――」

「あ〜!だから死んだその守護騎士の代わりに今回の事態の助っ人になりにきたわけか?」

「らしいけど……なんか揉めてるらしい――」


 まったく!ソノラはまた俺を亡き者にしようとしてるのか!


 やっと俺も慣れて、理解してきた。ソノラは本気で言ってるんじゃない。反射で話をすると、抜け方が物騒になるってだけなんだ。だが、こんな状況の時に、そんな言い方で伝えたら……まぁ騒にゃなるか。


「あ〜すまん、道を開けてくれ」


 早急に止めるべく、集まっている守護騎士に声をかける。


「ど、どちらさまですか?!」

「そのな?事切れたって言う火の守護騎士だよ」

「えぇ?!な、ん?!幽霊?!」

「んなわけあるか!あの子は慌てるとちょっと発言が危ういだけなんだよ……」


 ざわつく守護騎士たち。意外と素直に、道を開けてくれた。

 たぶん、その理由は俺が幽霊で怖いからだと思う。そんな顔してた。


「――から!僕が!」

「まってまってソノラ……っ!それじゃちゃんと伝わらないって!」


 中に入ると、ソノラの熱心な声と、それを止めるサラの声が聞こえてきた。聞いてる風の守護騎士もかわいそうなので、即登場する事にした。


「そうだぞ、ソノラ。慌てないでしっかり話さなきゃダメだ」

「お師様!!」

「お、おっさん〜!!」


 バシッとソノラとサラの肩に手を置いて、気づかせ止めた。

 突然現れた俺に、部屋の中にいる全員の視線が集まる。

 その中のひとり。知ってる顔を見つけた。


「あれ?」

「お、お……おぉ……お」


 挨拶しようと近づく。が、なんだか様子がおかしいな?


「お?」

「おばけ〜〜〜!!!」


 まさか信じてたとは思わなかった。

 そんなに勢いよく逃げなくてもいいだろうに。


「ジン……俺のタフさ知ってるだろ?そんな簡単に死なん」

「レ、レイルさん……?ほん、ほんもの?」

「ほんもの」


 熱心に見つめた後、ゆっくり恐る恐る近づいて、俺をつつく。


「さ、さわれる……生きてる……」

「変なところは触るなよ?」

「さ、さわりませんよけがらわしい!!」

「そんな言い方されると傷つくんだが……まぁ、なんだ?弟子が騒がせてすまなかったな」


 ソノラとサラを手招きし、頭を下げさせる。


「お師様は寝てただけです……変な言い方になってごめんなさい」

「俺もちゃんと説明できなくて、ごめんなさい」

「あわてん坊だが、かわいい弟子なんだ。許してやってくれ……元はといえば俺が寝過ごしたのが悪いからな、すまん、こんな時に」


 揃って謝罪をした。おかげで、困惑していた守護騎士達も間違いだった事に気付いてくれて、集まっていた守護騎士達も持ち場に戻っていった。


 静かになったところで、あらためて自己紹介をして話に入る。


「俺はいいとして……この子はソノラ、俺の1番弟子で……その子はサラ、水の代表守護騎士のクロンの息子で色々あって一緒に旅をしてるんだ」

「はじめましてこどもたち。私の名はジン・フィズ。風の補佐守護騎士をしている者です」


 礼をする仕草も美しい、よく躾けられてるのがわかる。


 ヒスイ色の綺麗な長髪をゆるく結ぶ、泣きぼくろがセクシーな美女……ではなく、青年のジン。

 3年前くらいから守護騎士として、風の元素神殿(エレメテンプルム)に従事している子だ。


 出会った頃は18歳くらいだったか?補佐なんて、デカくなったもんだ。

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