35.目指すのは
『ソノラの両親を見つけてあげたい。手がかりのひとつでもいいから……』
俺は、ソノラがその気になったら話を聞こうと思ってたから、ソノラの記憶にある両親の詳しい話は聞いていない。
たぶん、ふたりで修練をしてる時に、話したのだろう。歳も近いし、クロンとサラの親子関係を見ていたこともあって、ソノラは気を許して自分の生い立ちを語った。
元々、他者を治癒し、癒すことが主の水の元素使いたち。特にサラは、癒す力に長けているし、幼い頃のつらい思い出もその心にある。
だからこそ、人一倍……誰かの為に何かをしたい、してあげたいって気持ちが強く芽生え、育っているんだな。
「余計なお世話かも、だけどさ……」
「そんなことない……ありがとうな、サラ」
「なんですかなんですかあ〜!!教えて下さい〜!」
「へへっ!内緒だよ〜!」
追いかけっこしながら、楽しそうに先を走るふたり。
「とりあえず、楽しそうなら、いいか」
「ヒヒン〜ッ」
「わかってるって……まずは俺の仕事から、な?」
「プルッヒンッ!」
ソノラの件、もしかしたら過去の守護騎士の中にいたかも知れない可能性がある。俺ならそれとなく話を聞けそうではあるから、仕事の合間にでも聞けるだろう。
「……風の代表も、代わってない?俺の休暇中に、代わってたとかはない?」
「フルル」
「そうだよなあ……」
そんな都合良くはいかないか。
「あれ?お師様……顔色悪いですよ?」
いつの間にか、ふたりに追いついていたらしい。俺の顔をのぞき込んで、ソノラは心配してくれている。
「あ、そっか」
「サラちゃんさん?」
「最後に父さんから聞いてたの忘れてたよ、おっさん……風の代表守護騎士様と、あんまり仲良くないんだって」
「最後の会話が、それ……?」
そりゃ……あんだけ振り返る。親子の別れ際の会話がそれじゃ、名残惜しいどころじゃないだろう。
「安心しろよおっさん!俺とソノラで全力サポートするから!な!」
「世界を守ってくれているのに、仲が悪いのは良くないです!取り持ちます!」
「あ、いや、そこまでしなくても……一応仕事に関しては問題なく――……って、聞いてる?」
ハイタッチまでして、やる気満々なソノラとサラ。俺の声は届いていない。フランメまで、あきらめて見守りなさいよ?みたいな顔してる。
確かにな?素直で可愛い子供たちの声なんてのは、心に刺さり、物事の通りやすさはあると思う。
「相手が相手なんだよ……」
一般人相手なら、の話なんだなこれが。
「あれれ?さっきより落ち込んでませんか?お師様?」
「いや、な?お前たちがなにかすることで、お前たちになにか危害が加わらないか心配なんだよ」
「なんだよそれ……風の代表守護騎士様ってそんなに怖いの?」
俺は、まず風の領域がどんな所か?ってところから説明に入る。
世界全体から見て、火と水は割と自由なスタイルで元素使いや、守護騎士達が生活している。
だが、風の領域は違う。
「出勤時間も正しく管理され、出勤時は必ず騎士の正装。それに加え、5人ひと組の隊として働かされる。隊ごとに携わる部署?が定められてて、月毎にどこに就くか変わる」
昼勤務は朝8時から17時まで。夜勤務は2交替で17時から0時、0時から8時まで……と、きっちり分けられている。
「緊急事態には、ばーっ!と総員されて出動するらしいけど……」
「や、休みはあるのですか?」
「5日に1回?とかだったはず……」
「時間で管理されてるとか……窮屈そう……」
俺達にも制服……というか、騎士の正装はある。基本的に式典等の催し物、特別なイベントがある時以外は自由だ。時間に関しても、きっちりとした決まりはない。
だからといって、ぷらぷらしてるわけじゃないけどな。
「なんでしょう……この言いようのない不安は」
「本当に人間が生活できるのか?それ」
「言いたいことはわかるが……ちゃんと成り立ってるんだよ」
そんな驚いた顔しなくても……とは思ったが、仕方ないか。
なんせ俺も、出向いた時の守護騎士達の動きには開いた口が塞がらなかったからな。
変な村長に捕まっていたが、田舎町でそれなりに自由に過ごしていたソノラ。水のよう自由に流れ、活発に、心優しく育てられたサラ。
窮屈で、苦しいなんて、思ったことはないだろう。
「なるほどです……規律正しい生活を守り、束ねる事ができる超真面目な代表守護騎士様となれば……お師様とは全く合わないですね〜」
「厳しそうだもんな〜……おっさんがただ歩いてるだけで怒鳴られそうだもん」
「さすがにそこまではないよ?」
それだとただ嫌われわれてるだけになるよ、サラ。まあ、言う通りと言えば、言う通りなんだ。
規則に厳しく、規律に重んじ……自分達がしていることが全て善であり、正しいと信じて行動している。
「ほんと、頑固でな……やりにくいんだ」
時に優しく頬を撫で、時に激しくその体を進ませまいと向かってくる。そんな気まぐれな風の様に、豊かな心を持っている。
けれど、駆け巡り流れる風の様に、簡単にその激情を止めることは叶わない。
良く言えば、本当の意味で、風に……風の元素神に心から愛されている、とも言える。
そんな、美魔女なんだ。




