34.新たな旅立ちの
ダンジョンの浄化をしながら、今ここにいるのは、本当にたまたまで、どうしようもなかったからだ。困っている、可愛い子たちがいたからだ。
せっかくサラも連れて、楽しい旅が始まると思ってたのに……進んで仕事をしようとなんか思ってないのに!
「勝手に返事するなよなぁ……」
「文句はフランメに言うといいぞ?」
「う……できん……借りがデカイ……」
ガクッとうなだれてしまった。
そんな俺を見ながら、クロンはため息交じりで話しを続ける。
「今自由動ける代表はお前くらいだし、別に構わんだろ?」
「自由の意味合いが違うだろ〜?かまうって〜……」
「あきらめろ……どのみち、風の領域にいけば巻き込まれる」
反論できない。次に向かう先は風の領域と決めていた。そこにたまたま事件が起きた。いや、たまたまじゃない、か。
塔での出来事が、関連しているとしか思えないからな。
「繋がってるってわけね……」
「それも分かってフランメは、お前が動きやすいよう事前に前向きな返答をしたんだろう」
フランメの優しさ、ってことにしろってか。そうかも知れないけど……今回はひとりじゃないんだ。
「ふたりは、仕事しながらなんか、嫌だよな……?」
「いいえ!お師様、大丈夫!みんなで力を合わせて、謎を解きましょう!」
「俺が見たものを伝えれば手っ取り早いんじゃない?それならさくっと済ましてから、ゆっくり見て回ればいいと思うけどな?」
なんだなんだ?なんでそんなやる気になってるんだ?
「な?あきらめろ」
「散々泣き喚いてサラを止めてたくせになんてそんなに得意げなんだっ!」
「ふっ……これがあるから、俺は無敵なのだ」
サラと半分こにしたイヤリングを自慢げに、得意げに、ムフフと笑って見せつけるクロン。
俺の、負けか。
「わーったよ、やりゃ良いんだろ〜……はあぁ~」
「しっかり頼むぞ?レイル師匠?」
「くっ!行くぞソノラ!サラ!」
「わっ、まっ、待ってくださいお師様〜!」
ドカドカっと足音をわざと立てて怒りをアピールしながら、俺は台座の間から出た。
追いかけてきたソノラを引っ張り、ササッと入り口の壁に隠れて、まだ残っているサラとクロンを覗き見する。
「行ってきます、父さん」
「……ああ」
「も〜……笑顔で見送ってくれるんじゃないの?」
クロンは、あまり多くを語らなかった。ぎゅっと抱き合い、サラの耳元でなにか言っているようだ。さすがに、内容までは聞こえなかったな。
「いってきま〜す!」
「しっかり務めるんだぞ!行ってこい!サラトガ!」
手を振りながら、サラは後ろ歩きでクロンを見つめたままこちらに近づいてくる。クロンは、そんなサラを、じっと見つめていた。
「覗き見するなんて、お師様ってば〜」
「一緒に静かに見てたくせに、俺だけを悪者にするんじゃな〜い」
「えへへ」
バレないように、入り口から少し離れてサラを待つ。
「おっさん!よろしくな!」
「こちらこそ、だ」
「サラちゃんさん!よろしくです〜!」
新たな旅立ち。笑顔で行くのが、一番だな。と……その身だけで行こうとしてしまった。
「フランメ迎えに行かなきゃだ」
「まさか忘れてたですか?」
「また口聞いてもらえなくなりそうだな〜?」
「忘れてない!フランメは元々おしゃべりじゃないの!」
わいわい話ながら馬屋へ。
「ヒンッ!ブルルゥ……」
「色々根回し……ありがとうなフランメ」
「ヒヒンッ!」
「今日から4人旅になる、また、よろしくな?」
俺、フランメ、ソノラ、サラ……並んで歩き始める。
流石のフランメも、重量オーバー。ぱっと飛んできゃ速いが、飛んで行こう!なんて提案しようもんなら、置いてかれるのはたぶん俺だろう。
「サ〜ラ?振り返りすぎじゃないか?」
「んっ……そんなことないもん」
「だいぶ遠くに……小さくなってきましたね、神殿」
舗装された道。苦労することなく進んでしまうがゆえ、どんどんと神殿から遠ざかっていくのがよく分かる。サラは特に、名残惜しいだろうな。
しんみり気分はもったいない、楽しい旅にする為に空気を変えるか。
「サラは、この旅で特にこれをやる!って思ってることはあるか?」
「ん〜……ソノラのサポートは許されたから、先ずはそれかな?」
「今朝、クロンさんから治癒系統のやり方を教わりましたから、後は練度を上げるだけだそうで……サラちゃんさんからの助言という形であれば大丈夫と言ってもらえましたっ!」
一からの指導は禁止だが、その後は元素使い同士、精度を高め合うという意味であれば問題無い?
サラが最初に言っていたことを、代表守護騎士直々の許可のがあるから何しても大丈夫、と。
書類の不正にゃ心を痛めていたくせに……クロンの奴め。
「まあそれも、クロンのいいところ、か?」
「父さんがなに?」
「なんでもないなんでもない!ひとりごと!」
ありがたいことだけど……ソノラに師匠がもうひとりもできるのは、少し妬けるなあ。
「あとはそうだなあ……おっさん、ちょっと耳貸して」
「ん?おう?」
「あ〜!内緒ズルいです!」
膨れて怒るソノラに構わず、サラはゴニョゴニョと俺の耳元でどえらい事を言ってくれた。
「――ってことで」
「サラお前……自分の事じゃないじゃないか」
「いい〜の!俺が感じてるあったかいもんを、ソノラも知ってほしいからさ」
なんて、照れて笑うサラ。
クロンよ……お前の息子、いい子に育ち過ぎやしないか?




