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33.目覚めの

 目が覚めると、俺はベッドにいた。

 おかしいな?クロンと楽しく話していたはずなんだが。


「ソノラは……」


 横で寝ていたらしい跡があるけど、いない。

 外からは鳥の鳴き声……たぶん、まだ朝。そんなに深酒なんかしてない……というか出来ないからな。


「酒臭かったか……?」


 ぱっと起き上がり、顔を洗おうと洗面所に向かおうとしたのだが……。


「あっだまいでぇぇ……」


 グワンと揺らぐ視界。強烈な頭痛。うそだろ?あんな小さなグラス一杯の酒。飲んだくらいで、二日酔いだと?


「あ!お師様!どうしたんですか?!」

「あ……いや……いたたた……」

「や、やっぱりお薬選んだほうが良かったかもです……」

「そんなんじゃないから大丈夫……とりあえず水を……」


 部屋に戻ってきたソノラが、頭を抱えてしゃがみ込んでる俺を見つけて慌てて駆け寄ってきてくれた。


「水……水ですか……」

「ソノラ……?」


 むむっと眉間にシワを寄せているが、口はむにむにと動いている。なぜか分かる。ソノラがなにをしようとしているのかが。


「お師様」

「はい……」

「弟子の修練の成果を、浴びてみてください」

「あ、あまり聞き慣れない言い方だな……で、できるの?」

「先ほどクロンさん直々に教えてもらってきましたので!」


 言い切るやいなや、両手胸の前に持ってきて、元素を練り始める。練り上げ方はさすがだ。

 コポコポと小さな水の粒が現れ、くるくると円を描いて回り始めた。


「【苦痛を祓う雫(パライ・ソーニ)】……そいっ!!」

「びゃっ?!」


 パシャっと頭から、その水をかぶる俺。


「つ、つめてぇ……」

「え、あれ?こ、これでいいはずなんですけど……」


 びしょ濡れの俺をみて、ソノラは戸惑っている。

 間違ってしまったかも知れない不安でいっぱいのようだ。


「大丈夫だ。快復法は、それであっているぞ」

「クロンさん!」

「上出来だソノラ……レイル、体調はどうだ?」

「お、おお?ほんとだ、頭もスッキリしてる」


 様子を見に来たクロン。ソノラを安心させる。初めて使った【快復法】は、成功したと。


「まあ、細かい指導をするならば……かけるのではなく、飲ませるものではあるがな?」

「ひえ……ご、ごめんなさいお師様……」

「いやいや……目が覚めてちょうどよかった!ありがとうソノラ!」


 洗う手間が省けてよかったってことにする。なんにせよ、弟子の成長をその身で受けれたわけだからな。だが……、


「クロン?もしかして……」

「ん?ああ、そうだぞ?調子に乗って一気に飲み干すからだ」

「分かった上で、教えたわけか〜……」

「サラトガの出発の日。この晴れの日に、ひとり具合悪い顔をされてはたまらんからな?」


 思い出話に花を咲かせ、気分が良くなった俺は……水を飲むようにグラスに残った酒をぐいっといった途端、ぶっ倒れたって。

 ほとんど明け方近くだったこともあり、寝室に運ばれた時にソノラは目を覚ました。そこで、せっかくなら教えて欲しいと、クロンに頼んだんだって。


「数時間でモノにした……なかなかの逸材だぞ、ソノラは」

「そりゃあ……俺の弟子だからな?」

「いい歳して倒れた奴が、なに偉そうに言ってんだっ……ての」

「あたっ!」


 クロンに小突かれ、反省する。

 心配かけるな、と言った俺が……心配をかけてしまったのだから。


 うん、俺は酒を飲まないほうが良さそうだ。


「しっかり頼みますよ〜お師様〜」

「はい!気を付けます!」

「ぷっ!なんですか急に背筋伸ばしちゃって〜!」

「ぐはっ!」


 今日は朝から小突かれまくりだ。遠慮のないソノラの腹パンが一番効いた。


 濡れた髪と顔、服も着替えて台座の間に移動する。

 そこには、旅支度を終え、ディーネに寄り添うサラが待っていた。


「おはよう、サラ」

「おはようおっさん!ソノラ!」

「こら、サラトガ。せめてレイルさんにしなさい」

「いや気にするな?サラになら全然呼ばれたいぞ!」

「ちょっと複雑だけど……おっさんで言い慣れちゃったからおっさんでいくよ」


 サラと同じように、サラからはおっさんと呼ばれる事が普通になっただけなんだけど……そんな渋い顔されるとは。


「ゆっくり食事をしてから……と、思っていたのだが、そうもいかないようでな」

「なんだ?次から次へとってやつか?」

「まぁ、そうだな」


 言いにくそうな、もうコリゴリだと言わんばかりの表情で、ため息をつくクロン。


「ディーネ達、元素神馬(エレメゴッズホース)間での意思疎通での伝言だ」


 ただならぬ雰囲気に、俺も、ソノラも、サラも……ゴクリと息をのみ、クロンの言葉を待つ。


「風が、凪いだ」


 血の気が引いたのは、俺だけ。

 ソノラとサラは首を傾げている。聞き慣れない『凪いだ』って言葉に、ピンと来ていないのだろう。


「嘘なわけないもんな?はぁ〜、参ったな〜?どうにか穏やかに観光できな――」

「ついでに言うとだな?」


 俺の声を遮り、今度はニヤッと不敵な笑いをするクロン。嫌な予感しかしない。


「ちょうど火の元素の代表守護騎士がその地に参り、手助けをする……と、返答済みだそうだ」

「はあ〜〜〜?!」


 俺、言ってなかったか?

 俺、休暇中なんだけど?

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