26.唐突の
元素神馬は、代表守護騎士と特別に繋がってる存在だ。その声を直接聞けるようになれたのなら……それは、元素神との繋がりの強さの証明だ。
クロンはディーネと会話ができる。常に。
俺は残念な事に、フランメの気まぐれが働かないと会話はできない。普段話してるように見えるのは、付き合いが長いからフィーリングでわかるってだけだ。
わがままなお姫様なんだ。
そのフランメの声が聞こえたんだ。いつぶりかに聞くが、フランメの声を聞き違えることはない。
『……来ちゃった』
ただその一言。
俺はすぐに察した。だからクロンに、ああ伝えたんだ。
「――……し様あぁぁぁぁ!!」
声が近づく。かわいいかわいい、元気いっぱいなった、予想外な行動力の塊の、我が弟子。
バッゴォォン!!
「はっ……な……なんてことだ」
「あははぁ……俺も同意見」
塔の8階にまで上って来ていた俺とクロン。正直に真っ当に上ってきたのがバカらしくなる登場をしてくれた。
「お師様!!」
フランメの背から飛び降り、俺に駆け寄るソノラ。
「ソノラ……も、だけど!フランメ!」
「ヒッ?!」
プルプルっと体を震わせ、体に乗ってしまった瓦礫を振り落としているフランメを先に。
「かわいく言えば俺が絆されるとおもったか?」
「……ヒィ……ン」
「お師様……僕が無理やりお願いしたからなので……フランメは悪くなくて」
「ふたりともわるい!いや、もうひとりいるな?」
「サラトガ?!」
フランメの後ろから、髪をぐしゃぐしゃにしたサラが顔を出した。
「ごめんなさい……俺、止めたんだけど……尻尾掴んで止めてたんだけど……飛んじゃっておりれなくなって……うう」
どうやらサラは被害者なだけか?クロンに目配せし、ボロボロのサラのことを任せ、俺はソノラとフランメの相手をする。
「フランメ……ソノラが可愛いのはわかる。俺も頼まれたら断れないかもしれん。だがな?お前がそれをしてしまうと、多方面に示しがつかない。なんのために俺やクロンが、ソノラとサラの将来を見据え、立場が悪くならないように動いてると思ってるんだ?そこは厳しく、お前も俺と同じ師として諭さなきゃダメだよ」
「ヒン……ヒィン……」
「分かればいい。もう入っちまったからどうしょうもないから……それよりケガは?壁をぶち破るとか痛くなかったか?」
フランメの体を触る。汚れちゃいたがケガはなさそうだ。目を閉じてちゃんと考えて反省してるみたいだな……お次は――。
「ソノラ」
「は、はい……」
ぎゅっと自分の服を掴んで、俺の言葉を待ってる。
「自信を持つのは大事だが、無謀なことはしちゃダメ。フランメにも言ったが、今回どうして俺とクロンだけで来たかをよく考えなさい」
「ごめんなさい……お師様とクロンさん居なくなってて、不安になっちゃって……サラちゃんさんは大丈夫だって言ってくれたのですけど……でも……ぐすん」
「ソノラ……」
ポロっと涙を流すソノラ。その姿は良くない。怒るって決めた俺の心をかき乱してくれるな。
「レイル……俺たちの書類仕事が増えるだけだ、甘んじて受け入れるしかあるまいよ」
「でもなあ……こんなの毎回やられたらたまらんぞ?心配で俺の心が持たない」
「立て続けてダンジョンに来てしまっているが、こんな事は稀だ。もし次があるのなら、申請も通っているだろうから問題はないさ」
クロンの奴め……サラに非がないからってニコニコして言いやがって。簡単に許せと言ってるようなものじゃないか。神殿で散々怒り狂ってたのはなんだったんだ。
「ソノラ」
「はい……」
「水の代表守護騎士が言っているからもう怒ったりはしない。だが、それがいつもまかり通るものだとおもわないよーに!まだまともな修練もしてないんだからな!」
「わかりました……お師様、心配させちゃってごめんなさい」
「うぅん……もういいから泣かないの」
涙を拭いながら笑ったソノラ。なんだか流されてしまったみたいになったが……次が無いように教育をしっかりせねば。
「クロンよ……弟子の問題を軽めに済ませたのは理由があるだろ」
「まあ……な」
そう言って見つめたのは、フランメが開けた壁の穴だ。
最初に言った通り、階層をすっ飛ばしての進入は不可能なはずだ。なのに、フランメは簡単にぶっ壊して入ってきた。
「考えなければならないことが多すぎる……気付いているか?穴が空いた後、元素の流れが変わった」
「俺もわかるよ……なんかぐるぐるって渦巻いてるっていうか……普通のダンジョンで感じられるものじゃ無くなってる」
「僕たち……かなりマズイことしちゃったですか?」
「ヒ、ヒィン……ブルルルゥン」
「いや、まぁ……そう、だな、これは」
ザアッっと水がすり抜けるような風が吹いてくる。
外からの風では無い、不自然に上層から流れ落ちてくる分厚い……風だ。
「こんなところに、風なんか吹くか?クロン」
「正直に言おう……あり得ない、と」
晴れた日の草原で肌に受ける風なら、大歓迎だったんだがな。




