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23.雑務の

 随分とゆっくり深く寝入ってしまったせいで、目が覚めたのは昼前。

 料理上手だということがわかったサラの手作りの朝食を楽しみにしていたが、食べ損ねてしまった。


「じゃあふたりとも、フランメの言うことを聞いて、危ないことはしないように」

「わかりましたお師様!」

「……本当に、いいの?」


 外で運動……という名の自習……という名のこっそり鍛錬の相方をサラとフランメにお願いしたが……不安そうなサラ。


「攻撃法や治癒法を使わなきゃ大丈夫だろ、自分の中の元素を知り練り上げることは、基礎中の基礎だしな」

「そっか……うん!」

「あと簡単な手合わせくらいは許可する……けど、気張りすぎるな?」

「わかってる!おっさんは気張って終わらせろよ!」

「う……わかってるさ……」


 そうなんだよな……この書類仕事ってのが、今回のはかなり手こずりそうだ。


「クロン」

「来たか、レイル」


 台座でディーネと対話しているクロンに声をかけた。


「出払っている守護騎士達に通達を頼んでいた……今日の夕刻……明日にはどこかしらで探し回っている数名は戻ってくるだろう」

「そりゃいい、静かすぎるってのも落ち着かないが……あの水の玉は俺を……」

「ははは!そのようだな?まぁたしかに異物ではあるしな」

「笑っていうことか……」


 真面目に話が通じ、冗談まで言うクロン。昨日のあの姿を知ってしまって少しむずむずするが……神殿に人が戻るというのは、朗報だな。


「さて……どれから手を付けるか」


 昨日の夜のうちに準備をしてくれたらしい。


「簡単なのからいこう!他元素ダンジョン探索補助の事後申請!」

「どこが簡単だ?同行者の欄、素直に書くのか?」

「……う〜〜ん」


 早速筆が止まる。

 そのまんま書けば、俺だけじゃなくソノラとサラにお咎めがあるだろう。そこまで重たい罰があるわけじゃないだろうが……駆け出し始め、希望を持ち始めたふたりのためになることじゃあない。


「じゃ、単独ってことにするわな」

「まぁ……無難なところか……だらだらと旅をしている途中立ち寄ったここで倒れた俺を見つけ、助けるためにダンジョンの報酬目的で攻略を遂行した」

「だらだら……は書かないぞ〜」

「……こんな隠蔽、今日限りだからな」


 そう。これは、不正行為。

 他元素のダンジョンの攻略は、難易度が高く危険が伴うことがほとんどだ。だから、正式な師弟、守護騎士見習いであっても同行は許されない。


 サラを守るためとはいえ、クロンも本当は不本意だろう。

 その分、直接のお叱りはしたわけだけどな。


「……ま、こんなところか?怒られるのは俺だけでいいしな」

「その役目しっかり果たしてもらおう」

「はいはい……で次が……あ〜……全部記録すんのかぁ……」

「さすがに俺も手伝う、やるぞ」


 俺がここに滞在する期間だとかどうでもいいような書類も記入し終え、最後に残った大物に手を付け始める。


 細かい遺物の判断や名称なんかは、元老院がやるのだが……装飾品、薬、武具と、大まかに分けて梱包してという作業はダンジョン攻略をした守護騎士側が行う。


「どうしてこんなに多いのかねぇ……」

「質も関係してるとは思うが……きっとサラトガの気持ちを汲んだ元素神(エレメゴッズ)様のお慈悲だろうなぁ」

「……オンオフできてないぞクロン」

「ゔぅんっ……で、直報酬はどうする」

「あの薬だけじゃなくていいのか?」


 今回の様な緊急事態は、多くないがあり得ること。

 そのため、その場で使用、所持する事を限定して許されている。まぁ基本的にすぐ使えるもんなんて出ないことが多いから、忘れがちになるんだがな。


「これだけ数もある、薬自体は俺に使ってしまっているし、もう一個ぐらいは問題ないだろ」

「ならサラに選ばせるか?もう大分まとまったし、詰め込むのは明日でもいいだろ」

「そうか……ありがとう」


 区切りがついて、一息ついたところで窓の外を見る。広い中庭で、フランメに見守られながらソノラとサラはなにやら話をしながら笑ってるのが見えた。


「……腹が好かないか?」

「そういや朝も昼も……ソノラは!」

「大丈夫だろう、サラトガに軽食を持つように言ってある、良きところで済ましただろう」

「じゃあ俺も……」


 嬉しい事に、サラがサンドイッチを作ってくれてあるという。


「これも最後の晩餐かあ?」

「ぐほっ……忘れてくれ」


 咳き込むくらいには、恥ずかしい姿を見せてしまったという自覚はあったらしい。


 腹も満たされ、クロンの手助けもあり、時間がかかるだろう作業は日が落ちる前には済ますことができた。


「ふう……一旦これでよし、だな」

「ああ。明日サラトガにひとつ選んでもらってから、最終確認をして完了だ」


 夜になる前に、中庭のソノラとサラを迎えに部屋を出る。


 台座の間を通り抜けようとした時、入り口から慌てて入ってくる水の守護騎士の姿が目に入る。


「おお!早かったな……世話をかけてすまなかった」

「そんなこと!ぜんぜんおもってません!それより!」

「それより?」


 クロンの労いの言葉を跳ね除けるほど……慌てて伝えたいことがあるようだ。

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