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20.師と弟子の

「それなら!他と違うことをしまくろう!」

「お師様……それって……」


 一瞬不安そうな顔をしたソノラ。

 俺が親指をグッと立ててとある方向を指すと……ぱっと明るい顔になった。


 こんなに察しがいいのなら、既に師弟として申し分ない絆が出来てると思っていいのでは?


 良い方向と言えるかは……分からないが。


「……すまないな、レイル」

「かまわん、こっちもこっちでゆっくりでたしな?」

「はい!」


 クロンに連れられ、ふてくされた様子のサラも戻ってきた。


「なんだ……?ふたりして……やたら笑顔だな?」

「いや〜いい弟子を持ったなと!」

「こちらこそです!良い師が出来て嬉しいです!」

「……?」


 不審に思われているのがわかる……わかるが、決めたからには行動だ。


「サラ」

「……なに」


 不機嫌極まりないといった感じか。

 なんだかんだ言いくるめられた……父の思いも汲んだ……そんな感じだろう。


「クロン」

「なんだ?」


 すまん。


「かわいい子には旅をさせよ……なぁんて聞いたことないか?」

「レイル……?」

「僕……水の元素のことも知りたいのです〜」

「ソノラ……それって」


 クロンの顔は歪み、サラの顔には生気が戻っていく。


「俺とソノラは同意見、問題なく受け入れる!」

「なにを……お前……まさかサラトガを……」

「連れてっていいか?」

「おっさん……っ!」

「い、いいわけあるかぁーー!!!」


 泉まで揺れるか……凄まじい怒号。


「お前は!自由にするにもほどがある!!いくらなんでもそれは無理だ!」

「無理かどうかは、サラ次第!だと俺は思う」

「そもそも別の元素であるし!サラトガは私の弟子だと言っただろう!」

「師弟関係を解けなんて言ってないだろ?ただ旅をして、見識を広げるってだけ」


 正しいことを言っているのはもちろんクロンだ。俺はそれを曲げようとしている。


「旅……だと?そんな子供が旅に出るなどありえな――」

「じーっ」

「ぐっ……」


 じーっと言ってクロンを見つめるソノラ。サラより年下のソノラの視線の圧は、今のクロンにはかなり効くだろう。


「おっさん……そんな無理に……俺はいいから……」


 笑顔で泣きそうな顔をして、クロンを庇うサラ……無理してるのはサラの方だってわかる。


「サラ、本当のことを言っていいんだ。俺は、ソノラを励ましてくれてるだけじゃないって思ったぞ」

「それは……確かに俺は……ソノラと一緒に戦った時楽しかった」

「うん」

「おっさんに無理やり頼んで行ったダンジョンだったけど……また一緒に行けたらって……思った」


 苦い顔をしているクロン。


「おまえ……いくら友だとしても……」

「確かに俺は勝手なこと言ってるよ……でも、サラの事を思ってやってる事が、全部サラの為になってる訳じゃないんじゃないか?」

「そんな事は……サラトガ……俺は父として……」

「うん、わかってる」


 サラは深呼吸をしてから、クロンを見た。


「父さんが俺のこと大事に思ってるのはわかってる……だから、俺のわがままを聞いてくれる……だから……無理に攻撃法を使わなくて良いって言ってくれたし、ずっとそばに置いていてくれてる」

「サラトガ……」

「でも、さ……結構、苦しいんだ」


 不器用に笑いながら、自分の気持ちを伝えるサラ。


「嬉しい事だし、幸せなんだって思う……けど、俺の中にある怖くて逃げたいものを隠すことでもあるんだ」


 そっとクロンに抱きついて、


「俺、強くなりたい。父さんを守れるくらい……父さんが誇ってくれるくらい……おっさんとソノラと一緒に……それができそうな気がするんだ」

「……」


 そう、思いを告げた。


 言い出した俺が言うのは違うかもしれないが、簡単には納得しない、できっこない。ソノラにそんな事言われたら、俺だって困惑して、怒りをぶつけてしまうだろう。


「クロン……少しだけ、俺に預けてみないか」

「お前は確かに友で、優秀な守護騎士である事は認めている……だが……」

「殴ってくれてもいい。勢いで言ったわけじゃない、お前の大事な子供を預かる覚悟はある」

「……」


 このままの環境でいたら、サラは甘えることにもなるし、周りからの目や、言葉、態度……きっと温かいものでは無い……きっと、サラが消えてしまう。


 俺は、そう思ったんだ。


「父さん……」

「すまない、すこし、ひとりにしてほしい」


 クロンは静かに外へ向かって歩いていった。


「ちょっと無理やりすぎたでしょうか……」

「昨日の今日会ったばかりのサラを連れてこうとしてる……師としてでなく、父親としてのクロンに酷な事をしてるのは確かからな」

「その割に……おっさんは平然としているように見えるけど……」


 それはまぁ、それなりに付き合いが長い友人として分かる理由があるから。


「本当にダメなら、あいつはもっと強く止めてるし実際殴ってる……けど、本当はわかってんだよ、このままじゃだめだってこと」


 俺と同じ、考えはあるっていうこと。

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