19.親と子の
なんでかるんるんでソノラに腕を回すサラ。
「治癒法覚えたら最強ってことだろ?おっさん助けながら戦えるようになるんだ!!」
「た、たしかにそうかもですっ」
「治癒法なら俺が教えてやれるしな!」
サラ……確かに、そうかもしれないな。前向きに考えて、前向きにソノラの将来を考える方が大事。
「サラトガ」
「うん?」
「俺が、教える、だと?」
「そう!俺、ソノラと相性が良いみたいでさ、それって水の元素の相性も良いってことだろ?だから――」
前向きすぎるのも、考えものか?
クロンの顔がみるみる……恐ろしい怪物の様に変わっていく。
「このバカ息子があっ!!!!」
ビリビリと神殿が揺れる。
「お前は自分の立場をわかっているのか!我が子とはいえ、末弟子であり、見習い以下だ!誰かに指導をするどころか、教えを乞う身だろう!」
「そう、だけど……でも……でも俺――」
「攻撃法も使えないというのに、ここにいられるだけありがたいと思え!」
クロン、それは……
「それはダメだ、クロン」
「あ……いや、サラトガ……違う……」
「っ……ううん、いい……俺が、悪いもんな…………ごめん」
「サラちゃんさん!」
顔を伏せたまま、どこかに走り去ってしまったサラ。
サラの申し出は、確かに簡単に了承できる事じゃない。それがソノラを元気付けるために言ってくれたことだったとしてもだ。
それでも、口出しせずにはいられなかった。
「父親のお前が一番サラのことを理解しているのはわかる。けど、今のは言っちゃダメだろ」
「キュルルッ!!」
「グボッ?!」
ほらみろ、ディーネも怒ってる。
水責めにされているクロンがバタバタしだしたところでその体を離し、とどめにびしゃっと尻尾を浴びせディーネは台座の泉に戻っていった。
「ゲホゲホ……し、死ぬかと……」
「お仕置きはディーネがしてくれたから俺から特にしようとは思わないが……」
これだけは言わせてほしい。
「さっさとサラのところに行って、ちゃんと話をしてこい」
「……すまん」
一直線に、サラを追うクロン。迷いなく走るのは、サラがどこにいるか分かってるからなんだろう。
「ふう」
「お師様は、いかないのです?」
「今は親子の大事な話し合いの時間、邪魔しちゃ良くない」
サラから聞いていたとはいえ、状況の詳細はクロンの方が知っているし、あんな発言をしてしまったのなら、クロンがサラと向き合わなきゃならない。
「それに、俺はソノラとお話したいしな」
「は、はい……な、なんでしょうかっ」
「そんな緊張するなって」
キュッと小さくなってる。
「身体に変なところはないな?」
「はいっ」
「俺と一緒に行くこと、これもかわりはない?」
「はい!まだまだこれからです!」
いずれ選ぶ、それはソノラの中でも、まだまだ先のこと。体の違和感がなくなった今は、やれること、やりたいことができる事に喜びを感じているんだ。
「フランメ……」
「ヒンッ!」
信じて前へ……そうだな。
自分の職務に一生懸命になりすぎて、今まで過ごしてきた。自分の為にと。
だから、元老院から言われたからと、どこか他人事だった跡継ぎ探し。
目の前のソノラを育て守る事……師として強くあり、目標にならねばならない……が……。
「今さらなんだが……上手くやれるか自信がない……」
「え、えぇ?今さらすぎですよ……」
「まぁ、ははほんとうになぁ……ダンジョンでの事……俺の師としての経験のなさが浮き彫りになったなと……」
「弱気ですね……う〜ん」
実戦経験でしか動けなかった……それを身をもって理解した。俺がしてきたのは、指導ではなく、命令ばかりだったから。
「お師様、それなら一緒に考えて学んでいくのはどうですか?」
「学ぶ……?」
「僕が知らない事はもちろん、お師様も知らないこと、たくさんあるなら、一緒に!」
ニコッと笑うソノラ……元素使いとして学ぶべき事を俺から学び、俺は弟子であるソノラから、師とはなにかを教えてもらう……?
「他の……師と呼ばれる方と同じ様になんて思わなくていいと思うんです……お師様はお師様らしく、僕に色々教えてください」
「……」
「最初から上手くやれてるなら、わざわざおじさんになってから元老院さんにケツ叩かれたりしてません!」
言い方こそアレだが、確かにそうかもしれないと、ソノラの言葉が刺さった。
「うまくもなにも……初っ端からダンジョン連れ歩いて……始まりから普通じゃなかったもんな」
「そのとおりです!僕は僕のお師様に、お師様らしく、教えてもらって強くなる……なれたらいいと思ってます……それって、特別な感じ、しませんか?」
「ソノラ……そうだな、うん……よぉし!」
他所は他所、うちはうち……俺はソノラに、ソノラは俺に……そんな師弟関係も、あったっていいよな。




