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18.その祝福の

 大きく、水の流れる音が響く。


 台座を守るよう湛えている泉から姿を現したのは、水の元素神馬(エレメゴッズホース)


「ディーネ?どうした?」

「キュルルル……」


 空間を水が流れていく様に、透き通ったガラスの様な身体を持つ元素神馬(エレメゴッズホース)のディーネは、フランメの元へ。


 同じ役目を持つ者同士、仲睦まじく、挨拶を交わしている。


「ヒィンヒン」

「キュルキュルル」


 フランメは地上に生息する馬と見た目はほぼ変わらないが、ディーネは特殊だ。水と同じ流体である事で、今は馬の形を模してはいるが、生き物であるなら、自在にその形を変えられる。


「にしても、やけに挨拶が長いな?」

「積もる話でもあるのだろうか?」


 いつもより長く、お互いの鼻を突き合っている……姿を見せたタイミングもそうだが……なにか様子がおかしい。


「フランメ……?」


 俺の声は無視される。だが、今回は……フランメの目から強い意志を感じ、それ以上、なにもできなかった。


「レイル……」

「あぁ……任せる方がいいだろうな」


 クロンも、ディーネからなにかを感じたらしい。


 サラと楽しそうに会話しているソノラの元に、フランメとディーネが近づく。


「サラ、少しこっちに」

「あ……うん」

「ソノラ、ふたりの声を、聞いてくれ」

「……はい」


 ぺろりと、ソノラの頬をフランメが舐める……安心させようとしてるのかな。


「ん……え……大丈夫……怖くない」


 本当に、声が聞こえているかのように、ソノラはフランメとディーネの顔を撫でている。


「キュルルルル!」


 ディーネが声を上げ、フランメと同時にソノラの目にキスをした。


「なっ!」

「ま、まぶし……」

「ソノラ……っ!」


 カッと眩い光がソノラを包む……目を開けられない。


 なぜか、不安がよぎる。


 元素神(エレメゴッズ)は、もちろん信仰すべき偉大な存在だ。だが、神と言うものは時に無慈悲でもある。


 例え、俺たちがソノラを受け入れていたとしても、正しく生まれてこなかったと判断してしまえば……ダメだ、そんな事思っちゃいけない……なのに……!


「……あ」

「ソノラ!!」


 光が消え、ソノラはその場に膝を付く。


「よかった……」

「お師様……痛いです……」

「ヒィンッ!」

「あたっ!わ、ごめんって……違う、フランメ……ごめんって」


 きつく抱きしめてしまった。

 そんな俺の様子に、フランメは怒っている。理由は……信じきれてやれなかったからだ。


「大丈夫ですよ、お師様……フランメも、ディーネさんも……僕の元素を、体を……守ってくれたんです」


 それは、わかってる……ソノラがあたたかいままここにいることが証拠なのだから。


「レイル……落ち着け。ディーネも言っている」

「あ、ああ……ごめんなソノラ、びっくりさせた」

「ううん、大丈夫です、お師様」


 笑ってくれた……。


「おっさん?どうしたんだよ?」

「いや、ははは……はじめてみたからびっくりしちゃってなぁ!」

「レイル……」

「過保護すぎるのもダメだと思うぜ?」


 気を取り直して、だ。


「ソノラ、なにが起きたか教えてくれるか?」

「はい……僕の中の元素を、ちゃんと混ぜてくれたみたいです」

「混ぜ、た?」


 そうか。

 反発し合っていたふたつの元素……どちらかが強く、どちらかが弱くなることも無くなれば、負担が消え、正常な状態として正しくなる。


「はぁ〜……解決……したってことかあ」

「ふむふむ……なんにせよ早々に済んでよかったか?」

「……ちょっと簡単すぎない?なにかあるだろ、ソノラ」


 ホッとしてはいたが、ちょっとだけ困った顔でサラの質問に答えるソノラ。


「はい……その……元素神(エレメゴッズ)様直々の力ではなくて、一時的な対処なので……いずれ、選ぶようにって」

「選ぶって……どっちかの元素使いになるかをってことか?」

「たぶん、そう……だと、思います」


 今までもきっと、元素をふたつ持つ人間が生まれたこともあったのだろう。ただ、俺たちもそうだったが、対処法を知らなかった。


 たまたま……その人物が持つ両元素の、元素神(エレメゴッズ)に一番近い存在の元素神馬(エレメゴッズホース)が揃ったことで、その答えが出たってわけか。


「しかし……選べというのは……少々酷、か?」


 フランメとディーネに、優しくすり寄られ、ソノラは嬉しそうにしている。


 体の中で悪さをして、自分の身に痛みを伴わせていたのは事実だが、それを除けば……両元素から、愛されている、ということ。


 元素を抜きにして、人の世の繋がりで考え答えを出すのなら……それは、両親どちらかの愛を、選ぶっていうこと。


「お師様」

「ん、なんだ、ソノラ」

「今日明日で、僕の体が元に戻ってしまうわけじゃないです。時間はあります。考える時間は、あります……それも、もしかしたら僕を苦しめるものかもしれません」


 ギュッと手を握って、目を見て、ソノラは言った。


「どちらを選んでも、フランメもディーネさんも僕を嫌いにはならないって言ってくれました……だから、お師様も……そんな顔をしないでください」


 そんな風に心配されるほど、俺は険しい表情をしてたのか……ソノラは、ちゃんと決意を固めようといるのに。


「ね、父さん!おっさんもさ、ソノラが元気になったって事でとりあえず喜んどけばいいんじゃない?」


 今度はサラにも励まされる。

 そうだな、時間はあるんだし、今は喜ぶってのが正解なんだよな。


「それにさ、水の元素も使えるってなら――」

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