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17.あたたかい思いの

「母親に似て可愛らしい面立ちをしているのは確かだが……だとしても……鈍すぎるぞレイル……」


 確かに、自分を「俺」と言っていたけれど……体付きも華奢だし、ぱっと見じゃ男の子だとは思わない。


「サラ……ほんと?」

「……なんで一緒にいたのにわからないだよおっさん……ソノラはわかってたのに」

「え?!一緒に驚いてたじゃないか!」

「僕が驚いたのは、クロン様の息子さんだってことですよ?」


 俺の目はどうなっちまってるんだ。


「まあ……そんなんだから今まで浮いた話のひとつもなかったんだもんなあ」

「な、なんだと!い、言い返せない……っ!」


 痛いところを突かれた。

 もちろん、守護騎士の職務一筋で今まで生きてきたってのも理由にあるだろうけども!


「うん?」


 うなだれる俺を笑いながら、隣にいるソノラをじっと見つめるクロン。


「その子も可愛らしいが、男の子だな?」

「はい!おじ様の一番弟子のソノラです!」

「で、弟子……だと?!」

「なんだその大げさなリアクションはっ!」


 後ろにのけぞる程驚く事はないだろうと……そんなに俺が弟子を作ったことがおかしいのか?


「お前……いくらモテないからって……かわいい男の子を弟子にして慰めるのは……さすがにおすすめできんぞ……」

「お師様?!そ、そうだったんですか?!」

「マジかよ……」

「ち、ちがぁ〜〜〜う!!」


 そんなわきゃないだろう!

 そこまできたら変態どころか犯罪者!


「ちゃんと理由がある!ソノラも乗っからないの!」

「えへへ、ごめんなさいお師様〜」


 いい加減俺を面白がっていじるのはやめにしてもらうぞ!


「元老院からいい加減跡継ぎ探せって言われたんだよ。だからって無理やりソノラを弟子にしたわけじゃない、ソノラは自分の意思で決めた……よね?」

「なに疑ってるんですか……はい、僕は僕の意思でお師様についていくことを、選びました」

「ほう……うん、いい目をしている」


 自信に満ちた発言と眼差しのソノラを見て納得してくれた。どうだ、不純な動機など一切感じさせないだろう?


 そんな真っ直ぐなソノラだから、俺も弟子にしたいと思ったし、助けたいと思ったんだ。


「師弟の関係は信じてもらえたみたいで良かったが……それよりも、大事な要件があるんだ」

「ふむ、まぁ……なにもないのに他元素の神殿に来ることは早々ない……で、その要件ってのはなんだレイル」


 ソノラに目配せをして、俺の前に出させる。そして、クロンによく見るように、感じるように伝えた。


 ソノラの両肩に手を添え、クロンが気付くのを、待つ。


「……水」

「あ……っ」


 ソノラの目隠し布をそっとめくるクロン。


「そう怯えるなくていい、怖いことではないよ……目を開けてごらん」

「はい……」


 誰かにその目を見せるのは、ソノラにとってとても怖いことなのだろう。触れられた時、ギュッと強く瞑っていた。

 クロンの優しいその声は、一瞬でソノラの緊張をほぐしたようだ……そこはやっぱり、子を持つ親が見せる事ができる独特の優しさと温かさなんだろうな。


 ゆっくりと……ソノラは目を開く。


「……綺麗な瞳の流れだ」

「ほんとだ……俺とはやっぱり違うんだな」

「……しかし、なぜ常に流れができている?」


 人の体の中にある水の影響もあるらしく、水の元素を持って生まれた人間は、目に特徴が出る。って事だけは理解していた。


 ただそれが、『元素を練る時にのみ』と言うことは、知らなかった。


「レイル……研修さぼったツケがでたな」

「……すまん」

「まぁ、なに……真っ先にここにきたのは正解だったな」


 ソノラの目隠し布を戻し、頭を撫で、腕を組み唸るクロン。


「ソノラが使えるのは火の元素の力だけで、水の元素は今まで使ったことはない。マ――……俺の師にも診てもらってはいたみたいだが、やはりバランスが崩れると良くないみたいでさ」

「なるほどな」


 俺もクロンと同じように、腕を組み唸る。


「あの……」


 ソノラが不安そうに声をかけてきた。


「僕が……ハーフなこと……おかしいと……気持ち悪いと……思われないのですか?」


 思ってもみなかった質問……それはクロンも同じだったのだろう。おっさんふたり、キョトンとしてしまう。


「おかしなことなんてない、だろ?クロン」

「レイルの言う通り。誰も君がこうして生まれてきたことを疎んだりはしていない、むしろよく生きていてくれたと思っている」


 笑顔で応えたら、今度はソノラがキョトンとしている。


「俺自身の気持ちももちろんそう思っちゃいないし、俺はお前のお師様だぞ〜?心配こそすれ、気持ち悪いなんて思うわけない……むしろ可愛くて仕方ないくらいだぞ?」


 ポロポロと涙を流し始めるソノラ。


「わ?!どうしたソノラ!大丈夫か?どこか痛いか?」

「こらレイル、そんなにゆするな!びっくりしてるだろ!」

「なにしてんだよふたりして……ソノラ、大丈夫?」


 サラに呆れられてしまった。ソノラを慰めるサラの姿は、優しい姉……違った、お兄ちゃんの様。


「えへ……うれしくて、泣いちゃいました」


 ポトッと神殿の床に、笑顔になったソノラの涙がひと粒落ち、不自然な波紋が起きた。

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