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16.目覚めの

 キュポッと音をさせて、蓋が開いた。本当に薬なのだと、あらためて驚く。


 ガァガァと気持ちよさそうにいびきをかいているクロンの口に一滴……飲んだと言うより染み込んでいったように見える。


「…………ガフッ!」


 一瞬息が止まり、吹き返した。


「……夜寝てる時と同じなんだよな」

「この方もお師様と同じでおじさんですからね〜」

「えぇ?ソノラさん?」


 いびきに関しては反論できそうにないのが悲しい。


「ん……ぅぅん……」


 ゆっくりとクロンの瞼が開く。ぼーっとしたまま起き上がり、周りをキョロキョロ……誰が見ても寝ぼけてるとわかる。


「……サラ?」

「っ!」


 まだまだ眠そうな目をしているが、真っ先にサラを、視界にいれて名を呼んだクロン。


 嬉しくないわけないよな。


「わぁぁぁん!!」

「ちょ……サラ……苦しい……はははは」


 なんと微笑ましい光景だろう……ソノラと顔を見合わせ、こっちも笑顔になった。


「毒は抜けたみたいだが、酒の方は抜けてるか?クロン」

「レイル?なぜここに……毒……?」


 片付けられていない、自分の周りに転がっている空き瓶や壺を見て、情けない声を出すクロン。


「酒は飲んでも飲まれるなってどっかで聞いたことないか?」

「……知っている」


 上を見上げ、手で顔を覆い大きなため息を吐いている。


「まぁなんだ、なんにせよ、目が覚めたことは喜ばしいことだ、な?サラ、ソノラ」

「はい!」

「……うん」


 喜びを噛み締める、良いことだ。ずっと見ていたいくらいなのだが……色々とやらなければならないことがあるんだよな。


「クロン、寝起き早々悪いんだが……俺の相談事と、俺がこっちのダンジョンに入ったことと、うしろの報酬の処理と……諸々あるんだよねぇ……」

「なん、だと……?」


 少し怖い声で、視線を後ろに。山になってる報酬を見る。その後、あらためてじっくり……俺、ソノラ、サラの順番で全身をなめるように見るクロン。


「お前……なにしたんだ?」

「なにって……サラに同行してダンジョン攻略をし――」

「なに?サラと?」

「ピッ……!」


 なんとも言えない声を上げるサラ。

 先程とは違う名を呼ぶ声色に、ビクンッ!と体を震わせた。


「びゃっ!」

「サラ……どういうことか説明しなさい」

「説明って……おっさんの言った通りで……」

「あれだけダンジョンに入ってはいけないと!言ってあっただろうっ!」


 ガシッと頭を掴まれ、クロンに睨まれながら問い詰められているサラ。ふむ……ダンジョンに入るな、か。恐らく、サラの能力の問題で止められてたんだろうな。


「待て待て、今回は特例だろう?お前が悪いのもあるんじゃないか?俺たちが来るまでサラはしっかりここを守っていたんだぞ?そんなに怒ることは……」

「レイル!お前は事の重大さをわかってない!!」


 うお?!こんなに怒ってるクロン、珍しいぞ?


「大体お前はいつもいつも『代表』だからと高を括って好き放題やりすぎなんだ!まだまだ可愛い盛りの子供をダンジョンに連れ込むなんていい大人がすることではない!」

「つ、連れ込んだ?!そんな言い方ないだろ!俺は『同行』しただけ!」

「なぁにかあったらどうするつもりだっんだ!!よく見ればケガをしてるじゃないか!!守護騎士でもない上に、自分の身を守る術を使えないのだぞ!!」


 言い方こそ悪いが、クロンは明らかに正論で俺に怒りをぶつけている。わかっちゃいるが、俺は……どうしても感情が動いてしまう。


「だから俺が一緒に行動したんだろ!お前を助けたいって!あんなつらそうな顔されて頼まれたら断れるのか!」

「ああ断るね!そうじゃないとこの子は守れない!」

「そりゃ知らなかった俺だって悪いけどな!サラの気持ちを優先したことのなにが悪いんだよ!」


 こんな理由でおっさんふたりが言い争うとは思ってなかっただろうな……サラは困りながらクロンの腕を引っ張り止めてくれようとしている。


「俺が悪いから……おっさんを責めないで下さい」

「あぁ……そうだな」

「クロン!!」

「黙ってろレイル!」


 膝をついてしゃがみ、サラの顔を覗き込んでゆっくりと話し始めるクロン。


「そうだ、悪い……俺の失態だった……すまない、サラトガ……」

「父さん……ごめんなさい……でも、心配で、どうしても、いてもたってもいられなくて……目が覚めて良かったぁ……うぁぁぁん」


 クロンの声は優しさに溢れていた。だから、サラはまた泣いたんだな。


 ……


 …………ん?


「ちょ……まて、父さん?サラトガ……?」


 聞きなれないフレーズすぎて流してしまいそうだったが、重要なことなんじゃないか、これ。


「ん、ああ……この子はサラトガ……俺の息子だ」

「あれ……言わなかったっ……け?」

「初耳です、ね……お師様」

「お、おぉう……」


 クロンが妻子持ちなのも知ってたし、奥さんが亡くなっているのも知っていたんだが……まさかサラがなぁ〜……そりゃ、父親なら心配するよ。


「え、まって……息子?」


 息子?

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