14.その報酬の
「すまん……なにも知らなかった俺が悪い」
ぐったりとしながら、サラは笑った。
「それは、俺も……――おっさん、ソノラ、守って」
「……サラも、守らせてくれよ?」
「ん……っ」
サラに付きっきりとはいかない。
まだ……まだまともな修行なんてしていない。そんな子を、俺はダンジョンに連れてきている。
もっと、その自覚を持つべきだった。
師になるってのは、かっこいいところを見せるとか、余裕を見せてやることじゃないだろ。
「お師様っ!」
「ありがとうな、ソノラ……速攻で終わらせる」
守るってのは、どういうことか……本当に修行が必要なのは、俺じゃないか。
「焔式……」
くるりとひと回し……体内の元素と、焔式の持つ元素を繋ぎ合わせる。
「あとは俺の体力……だっ!」
優雅に泳いでくれてるな?だが、もう……回遊は終わりだ。
「綺麗に炙られろ!」
元素の共有をした焔式の斬れ味と、熱量は3倍以上の威力を誇る。
「あんなに簡単に……すごいです……」
「おっさんだけど……守護騎士だもんな……」
角に硬さを集中させていたのだろう。本体側は普通の魚とほぼ変わらなかったな。
ぶつ切りにされ、鱗を撒き散らしながら、泳げなくなった古代魚は地に落ちビクビクと痙攣している。
「ソノラ!サラ!浄化したらすぐに出る!近くにいろ!」
「は、はい!サラちゃんさん、肩を」
「うん……ありがとう……」
サラ……動けそうでよかった。
「よし、サクッと終わらす……我元素神に血と魂を捧げし従者なり――『聖炎』にて、蝕む穢れを討ち祓わん――……【神を癒し清める光】」
あそこまで弱らせたからな、問題なく『浄化法』が効いてくれてる。あとは……脱出だ。
「おいで」
「わっ……」
「ちょ……こんなにくっつかなくてもいいだろ!」
それはそうなんだけど……な。
「ふたりとも、怖い思いをさせて……悪かった」
「お師様……」
「っ……」
「帰ろう」
ギュッとふたりを背中から抱きしめながら【帰笛】を鳴らした。ピィーーっと甲高い音が鳴ると同時に、炎が俺たちを包む。
「あ、これは怖くないぞ?目を瞑って、次に開けたら……」
「んんっ!」
フワッと体が一瞬浮き上がるような感覚の後は、すぐに地上の爽やかな風と開放感を感じる事ができるようになる。
「フランメ〜!!」
「ヒヒヒン!!」
無事帰還した姿を見て、嬉しそうにフランメが駆け寄ってくる。ソノラも、フランメを見たことで地上に戻れたことを実感しているようだ。
サラは……自力で立ち上がりこそ出来なさそうだが、すぐに後ろを向き、光を放ち消え始めるダンジョンの入口をじっと見つめている。
「さぁ……どうだ」
大事なのは、その報酬。
必ず望む物が与えられる訳では無い、だから水の守護騎士達は、未だに帰って来ていない。
クロンを目覚めさせる気付け薬が出るかどうかは……賭けだ。
「うお……こりゃすげえな……」
「ま、眩しいです」
「薬……薬は……!」
ポケットから紙切れを取り出し、報酬の山に這って近づくサラ……自分の身よりも、クロンの方が大事なんだな……。
チラッと覗き見た。サラが描いただろう薬の絵……多分ボトルなんだろうけど、特別感のあるカタチではない……同じようなのがゴロゴロある。せめて色付きなら良かったんだがな……。
「サラ。報酬は一旦すべて神殿の預かりになる、持ち帰って、落ち着いて探そう?」
「……わかった」
「あ!僕これ知ってます!不思議な袋!持ち帰り用に付けてくれたんですかね?」
「……たまたまだと思うが、ありがたく使わせてもらうとするかね」
一緒に探してくれていたソノラが良いものを見つけてくれた。見た目の小ささとは裏腹な、なんでも入る収納袋。これは一般流通させている珍しい遺物のひとつで、特に商人達の間で物流を円滑にさせるために利用してるもの。
「いっぱい入りますね!面白いです!」
「ほんと不思議だよな〜……よしよし、全部入るとは優秀な袋だ」
「おっさん、急ごう?」
「わかった……フランメ、3人だが行けるか?」
「ヒッヒン!」
任せろと言わんばかりの鼻息で頼もしい。
神殿からほど近いとはいえ、サラもまだふらついているからな。ひとっ飛びで戻ることにする。
「しっかりつかまってるんだぞ」
前にソノラを抱き、サラは後ろに乗せたが、念の為俺の体と紐で結び縛り、大空へ。
「な、サラ……話してくれるか?」
「……」
「あっ!いや!無理にとは!」
あれだけ上手に『治癒法』を使えるのに、『攻撃法』が一切使えない訳がない。サラは使えないとだけ言ったが、なにか理由があって、使わないんだと思う。職業柄なんだろうな、つい、不躾に聞いてしまった。
「無理じゃ……ない……し……おっさんに迷惑かけたし……言う」
「迷惑なんて思っちゃないよ、サラ……もし、特別な理由があって困ってるなら、助けられることが出来たらいいな〜って思ってるというか……」
風を切る音で、なんとなくしか聞き取れなかったが、サラが笑ったような気がした。
「やっぱ変なおっさん……あのね――」
神殿までの移動時間はわずかだったけど、サラは話してくれた。




