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13.余裕の先の

【登場人物】


レイル・スプリッター ……主人公(おじ様)

フランメ       ……愛馬♀

ソノラ        ……男の娘

クロンダイク     ……水の代表守護騎士

サラ(?)      ……サラちゃんさん

 穴からそっと覗き込む。


 階下の作りは、半魚人の巣と同じで、飛び降りないと行けないみたいだ。しかし、なんだねぇ……?


「こんなに綺麗なのに、これが障りだってんだから不思議なもんだな」

「あの水の玉……神殿にあったのと似てますけど……」

「小さな海みたいだ」


 ソノラとサラの言う通り。

 水球の中心に強く光るなにかがあり、まるで太陽が照らす海を模しているかのよう……水球の中を動く魚影の様なものが更にその印象を強くさせる。


「僕は海を見たことが無いのですけど、あんなに綺麗なんですか?」

「そうだなぁ……もっともっと広くて大きくて、魚も鳥も動物もみーんなキラキラ輝いてる!」


 それを聞いたソノラもキラキラ目を輝かす。

 こんな偽物じゃなくて、本物を見せてやるためにも…………ん?


「…………っ!」

「大丈夫」

「……」


 サラが震えてる。俺の服まで掴んで……そっか、そうだよな。


「よし、見守りおじさんは終わりだ」

「自覚あったのかよ……」


 そう言うなって。これから守護騎士として本気を出す。カッコつけるとかじゃない、仕事を完璧に、やり遂げる。


「援護なんかしようと思うなよ〜?自分の身だけ、守るよーに!」


 ふたりの頷きを確認。体をかる~くほぐして勢いよく飛び降りる。


「おぉっと……さっきよりちょっと高さがあったな」


 体勢を立て直して、真っ直ぐに水球を見る。

 コポコポと水が湧き出る心地よい音がする。普段聞く分には癒される音色なんだろーが、なんせコイツは『障り』だ。


 水が息をしてるみたいに、大きな空気の泡が水球内で発生したかと思えば、魚影が集まり巨大化。水球を割って飛び出してきやがった。


「なっ……デカすぎだろ?!」


 ノコギリ状の角を持った見慣れない大きな魚。図鑑に載ってる古代魚に近いか?いやいやそれより、だ!ボス部屋半分埋める大きさは……さすがに反則だろ!


「お師様〜〜大丈夫ですか〜〜?」

「お、お〜〜!気付かれないように隠れてろよ〜!」

「は〜い」


 意外と呑気な声だったが……安心はしたな。


 よし。


「余裕こいて下手こくよりは……最初から全力で、だな」


 俺の腰から下げてるの棒はオシャレとかでもなんでもない。れっきとした……俺専用の武器だ。

 そういえばしばらく使って無かったな?武器よりも、俺の身体が錆びついてなきゃいいが。


 ベルトとつなげていた鎖も一緒に引っ張りゃ……綺麗な赤い刀身がお目見えだ。


「【焔式(えんしき)インフィニティグレイブ九刧(きゅうごう)】……開」


 こう見えて俺は、長柄の武器が得意でな。パット見て……コイツしかない!と手に取った相棒だ。


「な、なんですかあれ……」

「代表守護騎士に支給される特別な武器じゃないか?使用者に合わせて色んな種類から選べて、好きなのがもらえるんだって聞いてるよ」

「口上しなきゃダメなんですか?恥ずかしくないんですかね?」

「え…………それは……しらない」


 頭の上が騒がしいが気にしない気にしない……目の前の敵に集中だ。


 火の元素の匂いでも感じとったのか、目の色変えて突っ込んで来てくれる。


「っとぉ?!」


 避けずに焔式で受けたのが間違いだった。重たすぎる。踏ん張っても簡単に押されてるのがわかる。

 地面に俺が押された跡がわかりやすく刻まれてやがる。


「簡単に押しつぶさせると……思うなっ!」


 焔式の赤い刀身が熱を帯び始める。

 角に神経があるか分からないが、接触面から焼かれ煙が上がる。普通に燃やすと言うより、芯から焦がすというか……ようは炭にしてやるってことだ。


「せーのっ!」

「!!」


 バキンッと勢いよく弾け折れたのは古代魚の角。やっぱり痛そうにはして無かったが、ビビってるなら上等だ。


「わっ?!」

「っ!!ソノラ!」


 くるくると回りながら天井に向かって角の先飛んでいき、狙ったかのようにソノラとサラのが待機している穴の上に突き刺さった。


「悪い!!大丈夫か!!」

「なにやってんだよおっさん!!」


 直撃は避けれてるみたいだが、穴が崩れていくのが見えた。


「えっ?!」

「降りるっ!」


 ソノラを抱いたサラが穴から飛び出し、ボス部屋に着地……直後、穴は塞がれてしまった。


「良い判断だ!」

「だ!じゃねーぞおっさん!」

「怖かったです……」


 いや、まさかそっちに飛んでくとは思わないじゃないか……良い判断なのは本当だ。分断されたら、ボスを倒しても脱出が困難に……本当に申し訳ない。


「怪我してないか?」

「僕は大丈夫です」

「俺も問題な……っ?!」

「サラ!!」


 角が折れた事で怯んでいた古代魚は、ぐるっと部屋を回り、新しい獲物にターゲットを変えた。サラのフードを角に引っ掛け攫う。


 デカいくせに速いっ……追いつかないっ!


「サラ!なんでも良い!攻撃法を使え!!」

「っ!あ……え……」


 なぜ戸惑う?!体のどこでもいい!当てさえすれば……っ!


「うっ!!」

「サラぁっ!!」

「サラちゃんさん!!この……くらえ!【炎宿す熱き光球(バノックバーン)】!!」


 良くやったソノラ!目を狙ってくれたか!今のうちにサラを……っ!


「サラ!」

「ご、めん……おっさん」

「サラ……あんなに動けるのに、どうして攻撃法を使わなかった?いや、そうじゃないか……元は俺が……」

「ちがう、悪いのは……俺だから……っ」


 古代魚はのたうってる。ソノラが警戒していてくれるが、長い時間任せるのは危険すぎる。でも……今はサラが……くそ!守護騎士同士で来てるわけじゃ無いのに俺は……!


「ご、め……おっさん……俺……」


 叩きつけられた背中は相当な痛みなはず……それでも、無理して俺に伝えようとしていることはなんなんだ?


「使えないんだ……攻撃法……だけ……」


 俺を頼ってなお、時折見せていた不安はそれか、サラ。

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