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10.ダンジョンの

 サラは、つい最近クロンに弟子入りした超のつく新人らしい。だからこそ、他の守護騎士に同行することは叶わず、神殿を、眠っているクロンを……元素神(エレメゴッズ)と共に見守る役目を担わされたんだそうだ。


 ご大層な言い方をされたみたいだが、実際は自動警備してる水球を見て回るだけ。


 ダンジョンの攻略に向かえば、今日明日で戻ってくるなんてことはなかなか無い。が、サラが焦り苛立つのは……出発してから、2週間も経っていたからだった。


「場所や規模にもよるがさすがにかかり過ぎか?いや、目的の物が手に入らずダンジョンのはしごでもしてると考えるのが普通か……」

「でも、サラちゃんさんひとりだけ残しているのなら、知らせのひとつくらいよこしてもよさそうですよね?」

「……新入りにわざわざそこまでする必要ないって思われてるんだ、きっと……バカにしやがって」


 ムスッとした声で道の小石を蹴飛ばし、鼻息荒くドカドカと足音を立てて前を歩くサラ。


「そんなこと言っちゃダメだよサラちゃん。ダンジョンの攻略はそう簡単じゃないし、望む物が確実に手にはいるわけでもない。クロンの代わりに指揮をとるってのもなかなかの重圧を感じてると思うし、そこに焦りもあるなら……今のサラちゃんと同じだよ?不安を抱えて戦うのは精神的にもキツイからさ」

「…………わかった」


 うん、よしよし、ちゃんとわかってくれたみたいで良かった。素直じゃなさそうに見えて、ちゃんと話は聞ける子なんだな。


「ついた、ここ」


 サラに案内され、着いたのは元素神殿(エレメテンプルム)からさほど距離はないところに出来ていた『深層洞穴型(しんそうどうけつがた)』のダンジョンだった。故郷の村近くに出来きていたのと、同じくらいの規模に見える。


「小さいからいい報酬は無いだろうって……でも俺、言ったんだ、ここは質が違うって」


 俺に気付かれず隣にいれたのは、俺の気が抜けてたわけじゃないようだ。サラは、気配を消したり、気配を読み取るのが抜きん出てるみたいだ。


「パッと見た目じゃ分からないもんだが……よく見抜けたな、偉いぞサラちゃん」

「身のこなしも軽やかですし、僕も憧れちゃいますっ」

「偉くない、すごくないよ……それしか出来ないだけだし……」


 サラが新人とはいえ、少しも意見を聞かない守護騎士を抱えてるのは問題だなぁ……クロンの目が覚めたらちゃあんと言わなきゃだわ。


「ブルッフィン!!」

「ああ……ほら、今回はさすがに持ってるから安心しろフランメ」

「なんですか?それ」


 前回ダンジョンを潜る時に忘れた帰還用のアイテム【帰笛(きてき)】。フランメは俺の手にそれがあることを確認し、フンッと息を大きく吐いてダンジョンの入り口から一歩下がり、動きを止め待機する体勢に……納得してくれたか。


「よし、行くぞ」


 ソノラとサラは緊張しながら頷き、後ろを付いて歩く。初々しさが可愛らしいな。


 なんて……のほほんとしてられなさそうだ。


 緩やかな坂を下っていくにつれ、息苦しくなっていくような……少しずつ、水の中に深く潜っていくような感覚たいうのだろうか?けれど、ここに水は無い。


「湿度……?それで重いのか……?ふたりとも、平気か?」

「え……?なにがですかお師様?」

「別に普通だけど」


 どうやら俺の体にだけ、異変があるらしい。


 純粋かつ、上質な水のダンジョン……呼吸ができなくなるまではいかないと思うが……ちょっと厄介か?


「おっさん、ソノラ、なんか来る」


 足を止め、ソノラは短剣を、サラは腰の鞭に手をかけている。そのふたりを俺は後ろで偉そうに腕を組んで観察することにする。


「任せろって言って、なにしてんだおっさん」

「いやぁ、ここに入った時からちょこっと調子が悪くてなぁ……それに、前に出て構えたって事は、自分でどうにか出来るレベルって判断したんだろ?なら俺は見てても問題ない」

「……ふん」

「ふふふ、頑張りましょうサラちゃんさん!」


 ソノラも調子が良さそうだが、水の元素に当てられ続ければ割合がかわるだけだろう。水に満たされながらも火の元素を練り使う事でうまくバランスをとらせるようにしなきゃいけないし。


 それに、サラも感じやすいだけじゃないはずだ。


「ソノラ、お前攻撃法使えるんだよな?」

「はい……火の元素のになりますけど、大丈夫ですか?」

「上等!俺が捕まえるから焼いてほしい!」

「はい!」


 やっと俺にも気配がわかった。すごい速さで迫ってきてるようだ。重すぎる空気が波打ち、波紋が触れて、分からせてくれた。


「よ……っ!ソノラ!!」


 姿をしっかり見せる前に、サラが動いた。薄暗い洞穴の先に向かって鞭を伸ばし、大きな魚を釣り上げる。


「いきまっす!『炎宿す熱き紅球(バノックバーン)』」


 おお!お昼寝する前に読ませておいてよかった基礎攻撃法!上手に使えてる!さすが初手に上位攻撃法を使いこなしていただけある、操作も威力もコントロール出来てる。


「あと2匹!」

「はい!」


 これなら大きく元素を消費する事もないし、バランス戻りやすいだろうし……うんうん……ほう?なんだか、やけに息が合ってる?


「最後だ!」


 いや、違う。サラがソノラにうまく合わせてくれてるんだ。会って間もないってのに、敏感なのは気配にだけじゃない無いってことだな。

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