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初めての酒はマズかった

 残酷にも、作戦決行の日は来てしまった。


 今日にもグラシアス・ヒル・コーポレーションの特大スキャンダルが暴露される。それが何かは知らない。考えたくもない。


 俺たちはただ、匿名SNSのプラットフォームであるマジックミラーで出てきた情報を拡散するだけだ。「これが本当なのであれば」という文言を付けておけば誹謗中傷とまではいかないはずだ。「真偽を確かめよう」ぐらいに書いておけば、後は他の奴がボロカスなコメント付きでさらなる拡散をしてくれる。


 ああ、俺は最低な奴だ。自分が炎上で嫌な思いをしているというのに、無辜の友人をその捧げものにしようとしているんだからな。これが告解であれば、神父だって「神様はお赦しになられる」とは言わないだろう。


 作戦決行前にひどく動揺している。これがシャドウのように無関係でいけ好かないネット有名人であったらどれだけ楽だったか。次の相手は直接的ではないにしても、自分の好きな相手に弓を引くことになる。それも、ずいぶんと卑怯な手を使って。


 やる気がない。やる気なんて湧いてくるはずがない。相手の規模が大きすぎて勝てる気がしないのと、勝てたところで岡さんを地獄へと堕とすこととなる。


 だが、今度逆らえば煉獄のスケキヨにガチで潰される可能性が高い。進むも地獄、退くも地獄。この言葉はまさにこんな状況のためにある。


 泣きたい気持ちしかないが、泣いている場合でもない。どうすれば誰も痛みがなくこの地獄が終わるのかを考える。


 グラシアス・ヒル・コーポレーションは色々な業界に手を出している。腹が立つことに、ことごとくの事業でエキスパートを雇って成功を収めている。金を持っている奴のところに金がいく分かりやすい構図だ。


 今回のスキャンダルは何なんだろう? 俺の知識をフル回転させると、某有名企業がわりと最近に問題となった粉飾決算だろうか? あとは証券関係で法に触れる何かをやらかしたとか?


 いずれにしても、世界に名前を轟かせる企業が一つのスキャンダルで沈むかと言われると、それは難しいのではないかと思う。願望込みで。


 煉獄のスケキヨがどんなネタを掴んでいるのかは知らないが、さすがに会社全体が終わるレベルのネタをそんな奴が持っているとは考えがたい。というか、俺が考えたくない。


 そうなると今回の攻撃で企業としてのダメージは受けるだろうが、岡莉奈の一族がこの世界から消え去ることはない。ない、はずだ。そうであってくれ。


 たかだか思考をこねくり回しただけだが、冷静に考えたら少しだけ落ち着きを取り戻した。


 そうだ。俺たちがやっているのはたかだか便所の落書き。誰か一人がそのダメージに耐えられないことはあっても、企業全体とくれば話は別だ。そうだ、せいぜい給料が下がるぐらいに違いない。責任者の首は飛ぶだろうが、そんなの知ったことか!


 変なテンションになりながらパソコンに向かう。もうヤケだ。酒でも呑んでやれば怖くない。冷蔵庫から親のビールを拝借して口に含む。マズい。誰だ、こんなものを旨いと言っている奴は。嘘じゃねえか!


 だんだん腹が立ってきた。グラシアス・ヒル・コーポレーションよ、覚悟しろ。お前がどんな悪事をしたかは知らない。だが、それが明るみに出たらすぐに叩きまくってやる。


 俺は「死ね」なんて幼稚な言葉は使わない。理路整然とお前らのやっている悪事を断罪してやる。そう、俺は新時代の断罪者。ネットに住む自宅陪審員だ。自宅警備員だって成立するんだ。自宅陪審員がいたっていいじゃないか。


 アルコールが回ってくる。酒なんて呑むんじゃなかった。最悪や。あと全部飲むのか。いや、中途半端に残したら俺がビールを呑んだって親にバレるよな……。もっと考えて行動すれば良かった。


 まあいい。過ぎたことは仕方がない。それよりも目の前のことに集中するべきだ。


 自分の顔をパンパンとはたいていたその時、煉獄のスケキヨからメールが届いた。

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