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DNAジャパニーズ  作者: violet
2/22

沙羅という名の少女

「パパは私達を逃がそうとして殺されたの。

私は鷹司沙羅、10歳、パパとママは新婚旅行で攫われたと教えられました。

弟は純血じゃない。

ママが私を庇って。ずっとママが守ってくれたの。」

私を庇ってとは、なんてことだ、話を聞くとその時の沙羅は5歳だ。

そんな子供さえ性の対象とされる。

「支社長、すぐに日本に連絡してくれ。鷹司、日本の名家だ。」

我々が遺体を支社に運び込んだ頃に鷹司家と二条家の当主がワープで到着した。


「美鈴!!」

二条家当主が女性の遺体に取りすがり泣いた。

「もう何度も諦めた、生きてはいまいと。

生きていて欲しかった。」

娘です、と二条家当主が私に向き直った。

「例え遺体でも取り返してくださり、ありがとうございます。

娘を引き取らせていただいてよろしいでしょうか。

私は二条聡、この娘の父親です。」

何度か顔を拝見することはあったが、お互い名乗るのは初めてである。

「はい、私は月輪倫太郎と申します。」

「ケックステクノロジーの社長自ら、ありがとうございます。」

鷹司家の総領息子と二条家の長女の結婚であったらしい、誘拐は公表せず隠密裏に捜査されていた、それだけの力のある家なのだ。

「その子が?」

鷹司家の当主が沙羅に問いかけた。

沙羅は私を窺う、ちゃんと教育がされている、名家の母親が育てるとこうなるのか。

「答えて大丈夫だよ、沙羅ちゃん。」


「鷹司沙羅10歳です。

父は鷹司宏尚、母は鷹司美鈴。

父からは当主のみに伝わる歌を伝授されています。」

え、と鷹司当主が驚きに目を見開いた。

「その歌を確認していいか?」

沙羅は鷹司当主の耳元に顔を寄せると、他には聞こえないように囁いた。

当主からは涙があふれ出て沙羅を抱きしめた。

「間違いない、宏尚の娘だ、孫に間違いない。」

沙羅はDNAも確認され、間違いなく両家の孫娘であった。

そのまま二条家に引き取られることになった。

二条家は一人娘で、生まれるであろう孫の1人が後を継ぐことになっていたらしい。

鷹司家も譲らなかったが二男が後を継いでいるということで折れた形となった。

だが二男の子供も男ばかりということで、孫娘への執着が大きい。

「遊びに行ってもいいですか。」

その場を収めたのは沙羅だ。

「待っているよ。」

行方不明、それは希望と絶望を持つ言葉。

息子と娘の絶望は孫という希望になった。



一ヶ月後、沙羅が日本本社を訪ねてきた。

焼けた肌は白くなりかけている。

美しい令嬢になるのは間違いないだろう。

「祖父から是非お礼をさせて欲しいと言われて参りました。

鷹司の家でも、父のお葬式を出し、お祖母様に泣かれました。」

鷹司、二条は日本の名家だけでなく、巨大商社と巨大金融会社の総領家である。

もう一度現地に入り、遺品などを捜索した、それには保安部も立ち会った。

その遺品で葬式をだしたのか、と想像する。

よかったこの子を助けることができて。

あの時親の身体の下で助かった子供が数名いた、現在も保護中で親の身元を確認中の子もいる。

「でね、私まだ10歳なんですが、倫太郎さんは25歳でしょ。

すぐに婚約いたしましょう。」

「え?」

「倫太郎さんに悪い虫が付く前に手を打たないと盗られますもの。」

ふふふ、と笑う沙羅。

「どういうこと?」

「お祖父様達は説き伏せてあります。ケックステクノロジーなら問題ありません。

倫太郎さんは二条金融グループの総帥も兼ねてもらいます。」

10歳の子供に迫られている。

「倫太郎さんは私を助けてくれたヒーローです!」

ちがーーーう、仕事だ!仕事で助けたんだ!


「倫太郎さんは二条金融グループを私はケックステクノロジーをいただきます。」

「どういうことだ、それは。」

頭が冷静になってくる。

「この1ケ月、ゆっくり考えたのです。

何故、両親は誘拐されたのか。何故父は殺されたのか。

母は一人娘だから婿を取る予定でした。でも私を妊娠した為に祖父が折れました。

相手は鷹司、不足はありません。

両親の新婚旅行には護衛が付いてました、そういう人間を金銭目的以外で攫うメリットは低い。

純血日本人でいいなら、もっと簡単に攫えるのがいますでしょう。」

沙羅の言うとおりである、鷹司、二条の護衛だ、かなりの腕のものを揃えているだろう。


沙羅の頬を涙が落ちる、震える唇がやっと言葉をつむぐ。

「母です、時々やって来るミスターと呼ばれるチャイニーズ。

私を盾に取れば母が身を差し出すのがわかっていたのでしょう。

弟の父親の男。

母だけがライと呼んでました。

あの管理の中で、母だけは別待遇で、弟にはパパと呼ばせていました。」

10歳でよく考えた、つらい状況であったろう。

南米のあの場所からさほど遠くない村でたくさんの男達の殺害された遺体が見つかったと報告がきている。

きっと沙羅の母親だけは、殺してはいけなかったんだ。

あの現場で弟だけが連れ攫われたのが理解できる、ミスターと交渉する為だ。


「弟を取り戻す為にもケックステクノロジーの保安部が欲しいんです、結婚しましょう。」

「私には二条金融グループは荷が重すぎるよ。」

「残念です、私諦めませんから。無くなるはずの命があるのですから、何でもできます。何でもね。

倫太郎さん大好きですもの。」

といいながら服のボタンを外しだす。

「やめろ、秘書を呼ぶぞ。」

「どうぞ、この状況で不利なのは倫太郎さんです。」

上半身裸で抱きついてきて、唇を合わせてきた。

「うーん、初めてだと上手くできているかわからないわ。」

「初めて!?」

「はい、母が守ってれてましたから、ファーストキスです。倫太郎さんとできて嬉しい。」

おいおい、真っ赤になって言うなよ。

ちゃんと女に見えるじゃないか。

裸の上半身を抱きしめてキスを教える。

少し膨らみ始めた白い胸元を弄ぶ。

「降参だ、ただしこれ以上は大人になってからだ。服を着て。」

されるがままになっていた沙羅は真っ赤で息も絶え絶えのようだ。

光源氏になった気分だ、これはこれでいいかも。

服を着せた沙羅を膝に抱き、

「他の男にこんな事してはいけないよ。

ちゃんと教育を受けて正規の手続きで我が社に入りなさい。

婚約は早急にしよう、両家に挨拶に行くよ。」

まさか10歳につかまる自分とは思ってなかった。






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