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──命の価値より金が上!?──そんな不思議な世界だけど、死にたくないので死ぬ気で頑張る  作者: 成田楽


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8話──子ども

 目を覚ますと、窓の外がまだ暗いことに気付く。昨日と同じような状態にデジャヴを感じつつも、アスモは上体を起こしてグッと身体を伸ばした。


「……何時だ?」


 フォラスを探して寝室を出ると、再び机の上に書き置きが残されていた。


「また出かけてるのか。こんな遅くから……」


 一体、フォラスはなにを生業にしているのだろうか。外は真っ暗。今日は月明かりすらほとんど無く、視界が頼りにならない。明るい室内から外を見ているということもあり、アスモがいくら目を凝らしても、窓からは他の家の明かりしか観察できなかった。


「まぁ、俺が勘繰ることでもないか」


 既にフォラスへの信頼度は、アスモの中で頂点にある。だから気になりはするが、考え込むほどのことでもない。


「眠気もゼロだし、どうしよう」


 置手紙にも、特に指示はない。とにかく暇な時間が続く。


「……?」


 アスモの表情が僅かに歪む。昨日の長時間長距離走の時のような、痛みや苦しみによるものではない。


 不思議な感覚。なにかおかしいはずなのに、そのなにかを掴めない。


「一体、どうなってるんだ?」


 不明。脳内にはなにかが突っかかっているような霞が留まる。濃い霧が、一点の光を隠している。胸の前に伸ばした腕も、床に面する足も、指先から足先まで妙なものはない。


「……なんかこの感じ、昨日もあったような……ま、重要なことなら後で自然と思い出すか」


 顎下の首を人差し指で軽く掻き、雲った表情を晴れさせる。


 リビングに置いてある時計は0時10分を示す。四日目だ。


 万全な身体では睡眠で時間を潰すこともできない。先ほどアスモが外を見た時は灯りが付いている家が見えたが、まさか訪れて自身の暇を解消しようと考えるほどアスモは無作法者じゃないし、なりたいとも思わない。


「走るかなー」


 時間はあまり無駄にしたくない。フォラスとの散歩で、アスモの人間としての考えが確立しつつあった。己を知らないからこそ、染まりやすくなっていた。アスモが気にしていようがいなかろうが、隣に色を置かれれば自然と混ざっていく。


 アスモはフォラスの家から出る。そして昨日よりは控えめに、しかし己のためになるような、そんな走りで村の外周を踏みしめた。




「お兄さーん!」


「はぁはぁはぁ……え? どうした……の?」


 息を荒げるアスモの元に、ブリュームを先頭に村の子どもたちが駆け寄ってくる。アスモは足を止め、酸素を補給しながら優しい声色で聞き返した。


「遊ぼうぜアスモ!」


 呼吸を整えながら額の汗を拭うアスモの元に辿り着いた子どもたちは、純粋な瞳で遊戯の誘いをする。ウィングの誘いに、アスモは一拍置いてから口を開く。


「ちょ、ちょっと待って……今は……」


 すらすらと言葉を紡ぐことすらできないのに、元気いっぱいな子どもたちの相手をするなんて到底難しい。だが、子どもたちが気にしていない。疲労=眠りであり、子どもの目には今のアスモはまだまだ動ける状態に映っているのだろう。


「あそぼーよー!」


「す……少しだけ待って、くれ、る?」


 ウィングに続いてブリュームもぴょんぴょんと跳ねて誘ってくる。ピニオンとエイルロンも、期待の眼差しを向けられ、遂にアスモは折れる。


「ちょっとだけ、待っててくれたら、沢山遊んであげるから……ね?」


「うん! わかったよ!」


「しょうがないなぁ~。ちょっとだけだぜー」


 子どもたちにもわかりやすいように、待つ代わりに遊べるという対価を示し、ピニオンとウィングに続き、他二人からも休憩の許しを得ることに成功する。


 ちらりと顔をあげれば、子どもたちの親が一か所に集まって、微笑ましそうにこちらを見ていた。若干のプレッシャーを感じつつも、この村でお世話になっている分の恩返しはしようと肺を動かした。


 時は明け方だった。




「つぎはつぎはー!」


「まってよ、今度はおれがきめたい!」


「はいはい、順番にね?」


 子供たちの体力は無尽蔵なんだと錯覚できるほどに、五人は体を動かし続けていた。あまり体を動かさなくていい遊びも時々挟まれるが、大体は体を動かす必要のある遊ぶばかりだ。


 男三人、女一人という性別の人数差により、男児が求めるような遊びに傾いているのだろう。ただ、そんな環境で育ったからか、ブリュームは他三人の遊びに嫌がることなく付き合い、笑顔を見せていた。ピニオン、ウィング、エイルロンの三人も時折、ブリュームを気遣うような態度を見せていて、アスモから見てもとても良好な関係性だった。


 そんな子供たち四人との遊びに筋肉痛を悟っていたアスモだが、意外と付いていけている。深夜から明け方までに蓄積した疲労は残るが、いくら元気な子どもたちでも、アスモと比べると肉体の成長に差がある。なので、手加減して子どもたちに合わせることで、子どもたちを楽しませつつもアスモは一歩先を進み続けることができていた。


「ウィングはさっき決めたでしょ! だからつぎはわたし!」


「ちぇ、しょうがねぇな。いいよ。ブリュームが決めて」


「やったー!」


「順番的には、ウィングの前はピニオン、その前はエイルロンだったし、二人も次はブリュームで良いかな?」


「はい、ぼくはそれでいいです」


「うん。だいじょーぶ!」


 ウィングとブリュームの話し合いの結果をピニオンとエイルロンにも問い、賛同を得られたところで改めてブリュームの目を見る。


「ブリュームはなにしたいのかな?」

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