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──命の価値より金が上!?──そんな不思議な世界だけど、死にたくないので死ぬ気で頑張る  作者: 成田楽


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6話──アスモ

 三日目は真夜中から始まり、散歩して、フォラスの家に帰る。


 外はまだ月明かり頼りな時間帯、昨日アスモが仕分けをした武器等のまとめをしていた。フォラスはアスモには持てなかった物を軽々と拾い上げ、該当する場所へと移動。それからそれぞれの全てを覆える大きさの布を被せ、一時的で簡易的な保護。


 アスモは若干自信を失うものの、出会いのインパクトを思い出せば今更ではあることだ。フォラスは強い。アスモは弱い。それだけ。


「くぁーー!つかれたぁ……!」


「良いじゃないか。よくやってくれたよ」


「それは良かったです」


 フォラスの褒め言葉を素直に受け取り、アスモは再び息を深く吐いた。


「ちなみに聞きたいんですけど、なんでこんなに沢山武器とか持ってるんですか?」


 まさか裏では巨悪の長なのでは? と、自分でもありえないとわかる想像をしつつ聞いた。


 実際、一般人がここまで大量に武器を持っているのはおかしいだろう。アスモの常識が欠けているとはいえ、フォラス以外の村の人たちは武器を抱えている素振りは無かった。村の子どものウィングは剣を腰に携えていたが、あれは単なるチャンバラ用の物だろう。まさか子どもに本当に斬れる武器を持たせるほど、この村の大人たちも、フォラスも馬鹿じゃない。


「ケルビムに来るまでは仕事ばかりの日常を送っていてね。そのおかげで金はたんまりとあったから、気になったものはとりあえず買う。そんなことをしてたらいつの間にかこの量になってしまったのさ」


 納得できる理由だ。フォラスであればどんな仕事でも完璧にこなせるだろうと、まだ交流が浅いアスモでも迷いなく頷ける。


「武器集めは趣味ってことですか?」


「そうだね。趣味か否かと聞かれれば、趣味ではあるかな。小さくても強力な武器。デカいのに使い物にならない、置物にしかなれない武器。想像できない真価を秘めている武器。……わくわくするだろう?」


 武器を眺めながら、すらすらとそれらへの想いを言葉にしていくフォラスの表情は、温かいものだった。その顔が、どうして嘘だと決めつけられるか。


「なるほど……。でも、こういうのってかなり高いんじゃないですか? もしかしてフォラスさん、めちゃくちゃ凄い人だったりします?」


「そうでもないさ。私くらい、私以上の人間はごまんといる。才があるか、努力ができれば誰だって金持ちになれるさ」


「それは……夢がありますね」


 アスモに才があるかはわからない。しかし努力はアスモ次第。フォラスがどちら側の人間かは現時点ではわからないが、言葉を素直に信じるのならアスモでもフォラスのような人間になれるということだ。


 子どもたちの身体能力はアスモの想像を超えなかった。関わった大人たちがフォラス並みの力を発揮しているところも見なかった。力を出す必要が無かったからというだけという可能性はあるものの、効率的に生きるのであれば日常で発揮していないとおかしい。可能性は薄いだろう。だからこの村の中ではフォラスが一番の強者であり、特別な存在なんだとアスモは考えている。


 フォラスの身体能力がこの世界における当たり前ではない。そうなのだとしたら、道のりは険しく、困難を極めるだろう。


 しかし、夢がある。フォラスの言う通りだ。


 夢は自由だ。老若男女問わず、誰もが自由に思える光景であり、存在である、未来。言うだけなら無料だ。


「俺もフォラスさんみたいになりたいですね~……」


「ならそうだな……。もし、村を出る時は北東に行くといい。まだ行っていなければの話だけどね」


「北東ですか?」


「あぁそうさ。西に行くより断然良い。そこまで遠くない場所にここより圧倒的に大きな町があるんだが、知ってたかい?」


「いえ、初耳です。大きな町……ですか」


「世界を知る、旅をするにはまず町だろう。情報量もここより何百倍もあるだろうし、縁にも恵まれやすいだろうさ」


「確かにいいですね。そうさせてもらいます。ちなみにそれは徒歩でどれくらいかかるかわかりますか?」


「そうだね……」


 フォラスは少しの間視線を伏せて思案した末に答えた。


「外が暗い時間帯にケルビムを出れば、夕方には到着するかな」


「それってフォラスさん並みの身体能力が無い人でもいけます?」


「最低限のスタミナさえあればかな。……あるかい?」


 最低限。大人の男における最低限と、赤子における最低限が違うように、アスモとフォラスの最低ラインは違うだろう。だから、曖昧な返事になる回答をするよりは、ハッキリと言えるような回答をした。


「自信は無いです!」


「なるほど。自信が無いことに対する自信があるという事だけはわかったよ」


 やれやれとため息を吐きつつも、呆れた様子では無いフォラス。


「なら今日から君がケルビムを出るまでの数日間、私が鍛えてあげようか?」


「え」


「嫌かい?」


「……いえ! 是非お願いします!!」


 アスモにとってフォラスのその提案は願ってもないことだった。


 フォラスのような強者。アスモ視点での強者ではあるが、そんな人に教えを貰えるなんて、ありがたいという話では済まないくらいにはありがたい。とにかくありがたい。


「そうかい。なら心構えしておくように」


「なんかその言い方怖いんですけど……」


「なに、ただ地獄を見させるつもりでいるだけさ」


「じ、地獄、を……」


「冗談さ。とりあえず昼過ぎから始めるから、今は休んで、心構えを作っておくといい」


「わかり、ました」


 少しばかりの恐怖を覚えつつも、その後は少しの間ゆっくりしていて良いとフォラスに言われ、アスモは大人しく椅子に座って待機。やることも無く、眠れず、暇な時間を潰すことになったアスモは目を瞑って自身の記憶を探っていた。


 探っても探っても、出てくるのは新たに生まれた遺跡と思われる場所からの記憶と、フォラスと出会ってからの記憶。そしてアスモという名前のみだ。


(言語はわかるし、文字も読める。最低限の知識も残ってる。完全は記憶喪失では無い……はずだ。一部だけ完全に欠如してる。いや、アスモだけ残ってる)


「……アスモ」


 本当に記憶喪失なのかと疑う。なにかきっかけがあれば取り戻せたりするのではないかと考えたり、自ら忘れたいと願った過去があるのかと、アスモ自身のことなのに、まるで他人事のように探った。お前はなんなんだと。


「……」


(アスモ。俺の名前、氏名、名称、名義。俺はなんだんだ? なんで記憶が無いんだ? なんで……)


「なん……で……──


 そうしている内にアスモは、いつの間にか意識を手放していた。

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